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Cloudflare「Markdown for Agents」発表 ― AIエージェントにHTMLをMarkdownへ自動変換、トークン最大80%削減

Cloudflareは2026年2月12日、新機能「Markdown for Agents」をベータ版として発表した。AIエージェントやクローラーがWebページをリクエストする際、HTTPのAcceptヘッダーにtext/markdownを指定すると、Cloudflareのネットワークがオリジンから取得したHTMLをリアルタイムでMarkdownに変換して配信する仕組みである。

コンテンツネゴシエーションの標準的な仕組みを利用しており、変換されたレスポンスには推定トークン数を示すx-markdown-tokensヘッダーが付与される。また、コンテンツの利用許諾を示すContent Signalsヘッダーもデフォルトで含まれる。対応プランはPro、Business、Enterpriseおよび SSL for SaaSで、追加費用は発生しない。

現時点ではHTMLからの変換のみに対応しており、圧縮レスポンスには非対応である。Cloudflareは自社の開発者ドキュメントおよびブログでこの機能を有効化済みである。

From: 文献リンクMarkdown for Agents · Cloudflare Fundamentals docs

【編集部解説】

この機能を理解するには、まず「コンテンツネゴシエーション」という仕組みを押さえておく必要があります。これはHTTPプロトコルに元々備わっている標準的な機能で、クライアント(ブラウザやAIエージェント)がサーバーに対して「どのフォーマットで情報を受け取りたいか」をリクエスト時に伝える仕組みです。同じURLに対して、人間のブラウザにはHTMLを、AIエージェントにはMarkdownを返す、という振り分けが可能になります。

Cloudflareのブログ記事では、同社ブログのある記事がHTMLでは16,180トークンを消費するのに対し、Markdownに変換すると3,150トークンになると報告されています。トークンベースの課金モデルで動作するAIサービスにとって、この差は運用コストに直結する数字です。

注目すべきは、この機能の影響範囲の広さです。Cloudflareは全Webサイトの約20%にサービスを提供しており、4,100万以上のWebサイトがそのネットワーク上にあります。つまり、この機能が広く有効化された場合、インターネット上の膨大なコンテンツがAIエージェントにとって即座にMarkdownで利用可能になる可能性を秘めています。

もう一つの重要な要素が「Content Signals」との統合です。Content Signalsは、Cloudflareが2025年9月に発表したフレームワークで、Webサイト運営者が自身のコンテンツをAIトレーニング、検索、AIへの入力にそれぞれ使用してよいかどうかを機械可読な形式で表明できる仕組みです。CloudflareはこのフレームワークをIETFにインターネットドラフトとして提出しており、業界標準化を目指しています。Markdown for Agentsの変換レスポンスにはこのContent Signalsヘッダーがデフォルトで付与されるため、「コンテンツの配信最適化」と「利用許諾の明示」がセットで提供されることになります。

一方で、この機能にはSEOコミュニティから懸念の声も上がっています。SEOコンサルタントのデイビッド・マクスウィーニー氏は、Accept: text/markdownヘッダーがオリジンサーバーにそのまま転送されるため、オリジン側でAIエージェント向けに異なるHTMLを返すことが技術的に可能であり、「AIクローキング」を容易にするリスクがあると指摘しました。つまり、人間向けとAI向けに異なるコンテンツを提供する「シャドーウェブ」が生まれかねない、という懸念です。

また、この機能の発表に先立ち、Googleのジョン・ミューラー氏やMicrosoftのファブリス・カネル氏が、AIボット向けに別途Markdownページを作成する行為についてクローキングに該当する可能性があると警告していました。ただし、Search Engine Journalが指摘するように、ミューラー氏が批判していたのはユーザーエージェントに基づいて別ページを配信する行為であり、Cloudflareのようなコンテンツネゴシエーションによる同一URLからの異なる表現の提供とは技術的に異なるアプローチです。

長期的な視点では、この動きはWebの構造そのものに関わる変化の一端と捉えることができます。従来のWebは人間のブラウザに向けて設計されてきましたが、AIクローラーやエージェントがトラフィックの重要な構成要素となる中で、機械にとって読みやすい「並列レイヤー」がネットワークインフラレベルで形成されつつあります。Cloudflareが自社の開発者ドキュメントとブログで率先してこの機能を有効化しているのは、この方向性に対する同社の確信を示していると言えるでしょう。

【用語解説】

Markdown(マークダウン)
テキストに見出しやリストなどの構造を付与する軽量マークアップ言語。2004年にジョン・グルーバーが考案した。#で見出し、-でリスト項目を表すなど、記法が簡潔で人間にも機械にも読みやすい。AIシステムではHTMLよりも処理効率が高いとされる。

コンテンツネゴシエーション(Content Negotiation)
HTTPプロトコルに標準で備わっている仕組みで、クライアントがリクエスト時にAcceptヘッダーで希望するデータ形式(HTML、JSON、Markdownなど)をサーバーに伝え、サーバーが適切な形式でレスポンスを返す。同一URLで複数の表現を提供できる点が特徴である。

トークン(Token)
AIの大規模言語モデル(LLM)がテキストを処理する際の最小単位。単語や部分文字列に分割されたもので、APIの利用料金やコンテキストウィンドウの容量はトークン数で計算される。HTMLの装飾タグなどはセマンティックな意味を持たないが、トークンとしてはカウントされるため、コスト増の要因となる。

コンテキストウィンドウ(Context Window)
LLMが一度に処理できるトークンの最大量。この上限を超える入力は切り捨てられるか、分割(チャンキング)して処理する必要がある。

Content Signals(コンテンツシグナル)
Cloudflareが2025年9月に発表したフレームワーク。Webサイト運営者がコンテンツのAIトレーニング利用、検索利用、AI入力利用に対する許諾意思を機械可読な形式で表明できる。CloudflareはこれをIETFにインターネットドラフトとして提出しており、業界標準化を目指している。

クローキング(Cloaking)
検索エンジンのクローラーと人間のユーザーに対して異なるコンテンツを提供する手法。検索エンジンガイドラインで禁止されている行為であり、ランキング操作を目的とした場合はペナルティの対象となる。

エッジ(Edge)
CDN(コンテンツ配信ネットワーク)において、ユーザーに地理的に近い場所に配置されたサーバー群のこと。Cloudflareの場合、100か国以上200都市以上にエッジサーバーを展開している。コンテンツの変換や配信をエッジで行うことで、遅延の低減と処理の効率化を実現する。

ゾーン(Zone)
Cloudflareにおけるドメイン管理の単位。1つのドメインが1つのゾーンに対応し、DNS設定やセキュリティ設定、今回のMarkdown for Agentsの有効化もゾーン単位で行われる。

【参考リンク】

Markdown for Agents — Cloudflare開発者ドキュメント(外部)
Markdown for Agentsの公式ドキュメント。使用方法、有効化手順、API設定、制限事項を記載。

Cloudflare公式ブログ — Introducing Markdown for Agents(外部)
トークン削減効果の具体的数値やCloudflare Radarでのトラッキング機能追加を詳述した発表記事。

Content Signals公式サイト(外部)
Cloudflare推進のコンテンツ利用許諾フレームワーク。IETF提出のインターネットドラフトに基づく仕様を公開。

Cloudflare Radar — AI Insights(外部)
AIボット・クローラーのトラフィックデータを可視化するダッシュボード。コンテンツタイプ別分布も確認可能。

IETF — Vocabulary For Expressing Content Signals(Internet-Draft)(外部)
Content Signalsの技術仕様。CloudflareのM.トレマンテとL.ロムが著者として提出。

Cloudflare Workers AI — Markdown Conversion(外部)
AI.toMarkdown()メソッドのドキュメント。HTML以外の複数形式からMarkdownへの変換と要約に対応。

【参考動画】

Cloudflare TV「This Week in NET」— Moltworker & Markdown for Agents(2026年2月13日配信)(外部)
Markdown for Agentsの開発を主導したセルソ・マルティーニョ(VP of Engineering)が出演。アイデアから出荷まで約1週間で実現した経緯や、HTMLの16,000トークンがMarkdownで約3,000トークンに削減される仕組みを解説している。

【参考記事】

Cloudflare turns websites into faster food for AI agents — The Register(外部)
HTMLからMarkdownへの変換でトークン数が16,180から3,150に削減(約80%減)される点を報道。

Cloudflare’s New Markdown for AI Bots — Search Engine Journal(外部)
ミューラー氏の批判とCloudflareのコンテンツネゴシエーション方式の技術的な違いを整理。

Cloudflare’s Markdown for Agents AI feature has SEOs on alert — Search Engine Land(外部)
全Webの約20%を支えるCloudflareの動きと、AIクローキング懸念をSEO視点で分析。

Cloudflare now serves sites in Markdown to AI agents — Techzine Global(外部)
Markdown見出しが約3トークン、HTML同等要素が12〜15トークンを消費する具体例を紹介。

Cloudflare Statistics (2026) — DemandSage(外部)
Cloudflareが全Webの20.4%・4,100万超サイトにサービス提供する規模感を示す統計データ。

【編集部後記】

AIエージェントがWebを「読む」時代、私たちが日々目にしているページの裏側では、すでに大きな変化が始まっています。あなたが運営するサイトや、あなたが開発に関わるサービスは、AIにとってどのように見えているでしょうか。

人間のための設計と、機械のための最適化。この2つをどう両立させるかは、これからのWebに関わるすべての人にとって避けて通れないテーマになりそうです。みなさんはどうお考えですか?

投稿者アバター
Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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