「自分の顔を見せずに、存在できるか」——その問いに、日本のインターネットが生んだ異端児たちが技術で答えを出した。スマートフォンアプリ「POPOPO」は、カメラという”自己開示の強制装置”を取り除くことで、通話体験そのものを再設計しようとする試みだ。ニコニコ動画を育てた川上量生、2ちゃんねるを作った西村博之、そして庵野秀明とGACKT——彼らが同じテーブルについたという事実だけで、これが単なるアプリのリリースではないことがわかる。
POPOPO株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:矢倉純之介)は、2026年3月18日15時よりスマートフォンアプリ「POPOPO」のサービスを開始した。POPOPOはカメラ不要のテレビ電話アプリで、iOS 18以上およびAndroid 13以降を推奨し、基本無料で提供される。同社の取締役にはGACKT、西村博之、川上量生、庵野秀明が就任した。CTOには岩城進之介が就任している。制作協力として、カメラワーク監修を手塚眞、UI/UX設計を深津貴之、コンセプトデザイン・アプリデザイン監修を有馬トモユキ、シーン内装設計を加藤圭が担当した。選べるホロスーツは400種類以上で、エヴァンゲリオンのラインナップが4月1日に追加予定である。
サービス開始を記念した「1億円ひとりじめ!! POPOPOで通話するだけキャンペーン」を2026年3月19日00時から4月19日23時59分まで開催し、1名に1億円が当たる。キャンペーンCMキャラクターには令和ロマンの髙比良くるまが就任した。
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カメラのいらないテレビ電話「POPOPO」サービス開始 各分野のクリエイターが集結し新たな国産SNSを開発 〜GACKT、西村博之、川上量生、庵野秀明が取締役に就任〜
アイキャッチ画像はPOPOPO公式プレスリリースより引用
【編集部解説】
「POPOPO」は、2023年8月に設立されたPOPOPO株式会社が開発したスマートフォンアプリです。「カメラのいらないテレビ電話」というキャッチコピーが示す通り、顔出し不要でリアルタイムの映像通話体験を提供するという、従来のビデオ通話アプリとは一線を画すコンセプトが特徴です。
このアプリの核心にあるのは「ホロスーツ」と呼ばれる独自の映像表現システムです。ユーザーはカメラを使わず、プロの監督が監修したカメラワークによって自動生成された映像の中に”存在”します。最大30人が同時参加でき、配信機能も備えています。取締役CTOの岩城進之介氏のもと、「スマホのメタバース」という方向性で開発が進められてきました。
注目すべきは、開発陣のキャッチコピー「AI時代を前に、人間が作る最後のSNS」という姿勢です。AIが開発力をコスト的に優位にし、グローバル資本が有利になる構造が進む中、あえて「人間の職人芸」を前面に押し出す戦略は、技術的な差別化というよりも、文化的・思想的なポジショニングとして読み取れます。川上量生氏と西村博之氏の約20年ぶりのタッグに、庵野秀明監督やGACKTが加わるという布陣は、日本のサブカルチャーと技術を融合させようとする意図が見えます。
リリース直後のユーザー反応は、賛否が真っ二つに割れています。
ポジティブな声としては、「普通の会話が映画みたいなエンタメになる」「顔出し不要で気軽に話せる」「ラジオ配信や作業配信向きで使いやすい」「VRChatより気軽に入れる」といった意見が、配信者層やカジュアルユーザーを中心に上がっています。
一方でネガティブな声も目立ちます。「UI悪い」「ログインする前から知らない人の声が流れてきて困惑」「課金押しが強い」「Clubhouseと何が違うの?」「劣化クラブハウスという印象」「唯一のVR要素がハリボテで、無駄にバッテリーを消費するだけ」「スマホが異常に熱くなる」——こうした初期UXへの不満や、新規性の低さへの指摘が相次ぎました。リリース直後の感想ではネガティブ意見が約6〜7割を占めており、特にVRChatユーザーやネット慣れしたユーザーからの「既存サービスの焼き直し」という評価が厳しい状況です。
ここには構造的なミスマッチが見えます。POPOPOが本来狙うターゲットは、メタバースもVRも知らないカジュアルな一般層のはずです。ところがリリース直後に飛びついたのは、ネット文化やVRに精通した”目の肥えた”ユーザーたちでした。この初期ユーザー層とサービス設計の間のギャップが、辛口評価の主な要因といえるでしょう。
潜在的な課題も浮かび上がっています。「自由にアバターが動けない」「VRM持ち込み不可」「身体コミュニケーションがない」といった自由度への不満は、今後のアップデートで解消できる余地がある一方、「アバターをユーザーが作成できるようになったら面白い」「国産IPをどんどん入れてほしい」という建設的な提案も多く寄せられています。エヴァンゲリオンや東方Projectなど、国産IPとの連携はこの声に応える動きとも読み取れます。
長期的な視点では、POPOPOが提唱する「通話アプリこそがスマホメタバースの正解」という命題は、XR市場全体への問いかけでもあります。「第二のニコニコを作りたいという意図が見える」というユーザーの指摘は鋭く、川上量生氏が再びコミュニティ型プラットフォームで勝負を仕掛けているという見方は自然です。VRM対応やUI改善、オンライン人狼や有名人配信といったキラーコンテンツが揃ったとき、評価が一変する可能性は十分にあります。
【編集部追記】
実際にPOPOPOを触ってみた率直な印象をお伝えします。
起動した瞬間、正直「重い」と感じました。UIの動作も含め、ファーストインプレッションとしては快適とは言い難く、「劣化クラブハウス」という言葉が頭をよぎったのも事実です。
ホロスーツの価格設定にも少し驚きました。無料アプリのオプションとしては強気な印象で、コアなファン以外が気軽に手を伸ばせる価格帯とは言いにくいところがあります。
そして予想外だったのが、スマホの発熱です。カメラを使わない”軽量”な通話アプリのはずが、端末がかなりの熱を帯びます。パフォーマンスの最適化はまだこれからといったところでしょうか。
「メタバース」という言葉については、正直なところ少し疑問を感じました。ホロスーツを纏って通話する体験は確かに新しいのですが、これをメタバースと呼ぶには現時点の実装では言葉が先行している印象を受けます。
ただ——面白いのです。この荒削りさが、どこかニコニコ動画の黎明期を思い起こさせます。当時も「なんだこれ」と言われながら、気づけば日本のネット文化の中心になっていました。川上量生氏が関わっていると知れば、この”ガバガバさ”すら愛おしく見えてくるから不思議です。
リリース初日に完成度を求めるのは少し野暮というもの。この先どう育っていくのか、引き続き注目していきたいと思います。
【用語解説】
ホロスーツ
POPOPOが独自に定義する映像表現の仕組み。従来のアバターが「自分の分身」であるのに対し、ホロスーツはファッション感覚で着替える”服”として設計されている。ユーザーの外見を固定的に置き換えるのではなく、シーンや気分に応じて柔軟に変えられる点が特徴だ。
ヴィジュアリスト
映画・映像・アート・音楽など複数のメディアを横断して創作活動を行うクリエイターを指す肩書。手塚眞氏が自身のスタイルを表現するために用いている独自の呼称で、単なる映画監督に留まらない表現者としての姿勢を示している。
【参考リンク】
POPOPO 公式サイト(外部)
「カメラのいらないテレビ電話」を掲げるPOPOPO株式会社の公式サイト。アプリのダウンロードリンク、会社概要、最新ニュースを掲載している。
POPOPO株式会社 コーポレートサイト(外部)
代表取締役・矢倉純之介をはじめ、取締役メンバーの情報や会社概要を確認できるコーポレートページ。所在地は東京都中央区銀座4-10-6 G4ビル9F。
THE GUILD 公式サイト(外部)
UI/UX設計を担当した深津貴之氏が代表を務めるギルド型クリエイティブファーム。サービスデザインやUX設計を中心に多数のプロジェクトを手がけている。
POPOPO公式YouTubeチャンネル(外部)
POPOPO株式会社による公式チャンネル。サービス紹介や関連動画を配信している。
【参考動画】
POPOPOサービス発表会(公式ライブ配信)
2026年3月18日12時より配信されたPOPOPO公式サービス発表会のアーカイブ。川上量生、庵野秀明、GACKT、西村博之、手塚眞が登壇し、サービスの詳細を説明している。
https://www.youtube.com/live/7Bd8I8NI15Q
POPOPO公式YouTubeチャンネル
POPOPO株式会社による公式チャンネル。サービス紹介や関連動画を配信している。
【参考記事】
謎の国産SNS『POPOPO』発表会が3月18日12時より開催へ|電ファミニコゲーマー
発表会の概要と登壇者情報をいち早く報じた記事。「AI時代を前に人間が作る最後のSNS」というキャッチコピーや、「YouTubeとNetflixの溝を埋める」という発言を収録している。
4chan owner Hiroyuki, Evangelion director Hideaki Anno and GACKT to participate in humanity’s “last human-made SNS”|Automaton Media
英語圏向けに事案を報じた記事。西村博之氏を「4chanのオーナー」として紹介しつつ、POPOPOのコンセプトと取締役陣を国際読者向けに解説している。
ひろゆき氏&川上量生氏が20年ぶりタッグ 庵野秀明氏も参戦|Yahoo!ニュース
ニコニコ動画以来、約20年ぶりとなる西村博之氏と川上量生氏のタッグに着目した記事。両者の関係性と今回のプロジェクトへの参加経緯を報じている。
POPOPO サービス発表会 テザーページ|POPOPO公式(外部)
「YouTubeとNetflixには大きな溝がある」「POPOPOは電話と通話の間にある」という制作陣のコメントが掲載されており、サービスのコンセプト背景を理解するうえで重要な一次資料。
【編集部後記】
「カメラを使わないのに、なぜスマホがこんなに熱くなるのか」——触ってみて最初に感じた素朴な疑問が、このサービスの本質を突いているような気がします。
荒削りでも、ガバガバでも、何かが生まれようとしている予感がある。それで十分だと思っています。ニコニコ動画だって最初からあんなに愛されていたわけじゃなかった。POPOPOの行方を、引き続き一緒に見守りましょう。







































