生成AIによる動画制作は、プロンプトを入力して結果を待つだけのものから変わり始めています。GoogleのGemini Omni 1.1 Flashでは、始点と終点、参照映像、試作解像度まで人間側が指定可能に。AI動画はどこまで「編集できる道具」に近づいたのでしょうか。
2026年8月27日、Google DeepMindは生成動画モデル「Gemini Omni 1.1 Flash」を発表した。従来の1秒から最大10秒へ過去映像の参照範囲を拡大し、10秒単位で累計40秒までシーンを延長できる。始点・終点フレーム指定、360pでの試作、1080p/4K出力、最大3秒の動画参照にも対応。360p生成は720p比で最大60%高速、コストは3分の1としている。
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Gemini Omni 1.1 Flash lets you build with more control
【編集部解説】
Gemini Omni 1.1 Flashで重要なのは、単純に「より高画質なAI動画を生成できるようになった」ことではありません。今回追加された機能を並べると、Googleが動画生成を1回のプロンプトで完成品を出す処理ではなく、複数回の試行や編集を重ねる制作工程として扱おうとしていることが見えてきます。
前身のgemini-omni-flash-previewは2026年6月30日に公開されたプレビューモデルで、動画生成と自然言語による動画編集を特徴としていました。今回のgemini-omni-1.1-flashは2026年8月27日に一般提供(GA)へ移行し、動画延長、始点・終点フレームを指定する補間、出力解像度の制御が正式に追加されています。プレビュー版は2026年9月30日に廃止予定です。
特に動画延長では、従来モデルが直前の1秒のみを参照していたのに対し、Omni 1.1は最大10秒の過去映像を分析できます。10秒ずつ延長し、累計40秒まで映像をつなげられるため、人物や背景、物語の流れをある程度引き継ぎながら次のショットを生成する仕組みになっています。
これは「40秒の動画を一度に生成できる」という意味ではありません。既存の映像を基準に10秒単位で続きを生成していく方式です。長尺化そのものより、前のショットを参照しながら次のショットを指示できることが今回の差分です。
もう一つの変化が、最初と最後のフレームを指定する動画補間です。2枚の画像と、その間でどのような動きをさせるかを指示すると、Omni 1.1が両者をつなぐ映像を生成します。Googleはカメラの旋回、ズーム、ループ映像などへの利用を例示しています。
従来のテキストから動画を生成する方式では、「どこから始まり、どこで終わるか」までプロンプトだけで安定して指定することは難しい場面があります。始点と終点を人間側が画像として固定できれば、AIに任せる範囲を「ショット全体」から「2つの状態の間の動き」へ狭められます。
さらに最大3秒の動画を参照素材として入力でき、映像内の動きや人物の一貫性を次の生成に利用できます。
こうした機能を組み合わせると、Omni 1.1は「欲しい動画を文章で説明して結果を待つモデル」というより、人間が開始点、終了点、参照映像、次の展開を指定しながらショットを組み立てるモデルに近づいています。
制作工程という観点では、360p出力の追加も重要です。Googleによると360pでは標準の720pと比べて最大60%高速に生成でき、コストは3分の1になります。同社自身も、低解像度で3〜4種類の案を作り、1要素ずつ条件を変更して比較するワークフローを例示しています。
採用するか分からない案を毎回高解像度で生成する必要がなくなるため、「低解像度で試作し、方向性を決めてから仕上げる」という従来の映像制作に近い工程をAI生成にも持ち込めます。
完成映像は1080pまたは4Kへ出力できます。ただし、ここは注意が必要です。GoogleのAPIドキュメントでは、1080pと4Kはいずれもアップスケーリングによる出力と明記されており、4K解像度でネイティブ生成しているわけではありません。
したがって、「4K対応」という数字だけで生成品質が4倍になったと評価するのではなく、今回の更新ではむしろ、低解像度での試作から高解像度での書き出しまでを一つの制作フローとして用意した点を見るべきでしょう。
gemini-omni-1.1-flashはGemini APIの有料Tierで一般提供され、Google AI Studioから試すことができます。720p動画の場合、Standard料金では実質約0.10ドル/秒とGoogleは案内しています。
モデルの出力は3〜10秒、24fpsで、360p、720p、1080p、4Kに対応します。入力にはテキスト、画像、動画を利用でき、編集・延長時には最大10秒の動画を扱えます。
またGoogle FlowではGoogle AI Plus、Pro、Ultraの利用者向けに世界で提供され、Geminiアプリでも同3プランを対象にシーン延長機能が提供されています。
今回のOmni 1.1で生成動画そのものの不確実性がなくなったわけではありません。40秒という長さも複数回の延長によって実現するもので、4Kもアップスケールです。一方で、生成結果を一発で当てることより、人間が途中で方向を決め直せることに機能開発の重点が移っている点は明確です。
生成AIによる映像制作が既存の制作ソフトに近づくとすれば、モデル単体の映像品質だけでなく、「試す、選ぶ、つなぐ、修正する」という制作工程をどれだけ人間が制御できるかが、今後さらに重要になりそうです。
【関連記事】
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2026年5月のGemini Omniファミリー初発表を扱った記事。今回の記事がOmni 1.1による制作制御の強化を扱うのに対し、こちらはOmniそのものの登場と、マルチモーダル入力・会話型編集という基本設計を中心にしている。
Gemini Omniがそもそもどのような動画AIとして登場したのかは、初発表時の記事で詳しく紹介しています。Omni 1.1で追加された機能と比較すると、わずか数カ月で動画制作の制御性がどこまで広がったのかが見えてきます。
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2026年6月末のGemini Omni Flashプレビュー版を扱った記事。今回一般提供されたgemini-omni-1.1-flashの直前の状態を確認でき、プレビューから正式版へ何が追加されたのかを比較しやすい。
今回のOmni 1.1は、6月に公開されたGemini Omni Flashプレビュー版を正式運用に近づけたモデルです。プレビュー公開時の機能や位置づけはこちらの記事から確認できます。
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Google Flowが2025年に登場した際の記事。複数のAI生成クリップを組み立てる「シーンビルダー」など、Googleが以前から動画生成を単発生成ではなく制作工程として設計してきた流れを確認できる。
Omni 1.1の制御機能は、GoogleがFlowで進めてきた「AIを映像制作工程に組み込む」という方向性ともつながっています。Flow登場時の機能はこちらの記事で整理しています。
【編集部後記】
AI動画はここ1〜2年で驚くほど綺麗になりましたが、個人的には画質向上よりも「思った通りに直せること」の方が魅力的に感じます。
一発で理想の映像を生成するより、何度か試しながら人間が方向を決めていく方が、実際の制作にも馴染みやすそうです。
360pで気軽に案を出し、良いものだけを高解像度に仕上げられるのも、かなり現実的な進化だと思います。
始点や終点まで指定できるようになれば、AIに任せるというより、一緒に映像を作る感覚に近づいていくのかもしれません。
生成AIがクリエイターを置き換えるのではなく、人間の「こうしたい」をどこまで細かく形にできる道具になるのか。
個人的には、これからのAI動画で最も楽しみなのは、その制御性がどこまで高まっていくかです。
【参考リンク】
Google AI Studio(外部)
Gemini APIのモデルをブラウザ上で試せるGoogleの開発環境。Gemini Omni 1.1 Flashもここから利用開始可能。
Gemini API|Google AI for Developers(外部)
Gemini Omni Flashの仕様、対応する入出力形式、動画生成・編集方法、API実装例を確認できる公式開発者サイト。
Google Flow(外部)
GoogleのAI映像制作ツール。Gemini Omni 1.1 Flashの始点・終点指定、360pでの試作、高解像度出力などが提供されている。
Gemini(外部)
GoogleのAIアシスタント。Google AI Plus、Pro、Ultraの対象ユーザーにはGemini Omni 1.1 Flashのシーン延長機能が提供されている。
【参考動画】
Introducing Gemini Omni: Create Anything from Anything|Google
2026年5月19日にGoogle公式YouTubeチャンネルが公開したGemini Omniの紹介動画。1.1アップデート以前の動画だが、画像・音声・動画・テキストを利用した生成と、会話による動画編集というOmniシリーズの基本コンセプトを確認できる。
【参考記事】
Gemini Omni Flash|Google AI for Developers(外部)gemini-omni-1.1-flashのモデル仕様。テキスト・画像・動画入力、3〜10秒の動画出力、360p/720p/1080p/4K、24fpsなどの対応範囲を確認できる。
Gemini API Release notes|Google AI for Developers(外部)
2026年8月27日のGemini Omni 1.1 Flash一般提供開始と、動画延長、フレーム補間、解像度指定の追加を記録した公式リリースノート。旧プレビュー版の終了予定も掲載。
Generate and edit videos with Gemini Omni Flash|Google AI for Developers(外部)
動画生成、自然言語編集、始点・終点フレーム補間、解像度指定など、Omni FlashをAPIから利用する具体的な方法を掲載した公式ガイド。
Gemini Developer API pricing|Google AI for Developers(外部)
Gemini Omni FlashのAPI料金体系を掲載する公式ページ。動画出力のトークン換算と720p動画における実効価格の目安を確認できる。
Google Flow brings new creative control features to enhance video editing|Google(外部)
Gemini Omni 1.1 Flashを利用したGoogle Flowの更新内容。始点・終点フレーム指定、360p試作、高解像度出力などをFlow側の制作体験から説明している。
【用語解説】
Gemini Omni 1.1 Flash
Google DeepMindの生成・編集向け動画AIモデル。テキスト、画像、動画を入力でき、動画生成、自然言語による編集、動画延長、始点・終点フレームを指定した補間などに対応する。モデルIDはgemini-omni-1.1-flash。
シーン延長(Video Extension)
既存動画の終端から続きを生成する機能。Omni 1.1では最大10秒の過去映像を参照し、10秒単位で累計40秒まで延長できる。
フレーム補間(First and Last Frame Interpolation)
開始画像と終了画像の2枚を指定し、その間をつなぐ連続した動画を生成する機能。カメラ移動やズーム、ループ映像などの制作に利用できる。
アップスケーリング
低い解像度の映像を処理して、より高い解像度として出力する処理。Gemini Omni 1.1 Flashの1080pと4K出力は、公式ドキュメント上ではアップスケール出力とされている。


















