みずほ銀行、対話型AI「あおまるバンク」提供開始 OpenAIの技術で音声にも対応

[最終更新]

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「引っ越したので住所を変えたい」。みずほ銀行の新しいAIアシスタントにこう話しかけても、すぐには手順が返ってきません。まず、利用している取引を聞き返してきます。速く答えるより先に条件を確かめるこの順番に、銀行がAIを窓口に立たせるときの作法が表れています。


みずほ銀行は2026年10月14日、公式キャラクター「あおまる」を対話型のAIエージェントとする「あおまるバンク」の第一弾として、銀行サービスや手続きに関する問い合わせへの回答機能の提供を開始したと発表した。1,700項目を超えるFAQや公式ウェブサイト、各種マニュアルを検索基盤とし、利用者との対話で状況や要望を確認したうえで案内を組み立て、回答には根拠となる情報源を併記する。

提供開始時点からリアルタイムの音声対話に対応し、OpenAIの音声AI技術と、同社のAIモデルを活用してみずほが構築したエージェント機能を組み合わせた。提供開始時点では口座情報や取引履歴を参照せず、入出力データはOpenAIのモデルの学習に使われない。今後は手続きや資産運用の相談へ段階的に広げる方針だ。

From: 文献リンク対話型AIアシスタント「あおまるバンク」の提供開始について|みずほ銀行

【編集部解説】

銀行のFAQは、情報がそろっていても、自分に当てはまる答えを探しにくいことがあります。みずほ銀行には1,700項目を超えるFAQがあり、公式サイトやマニュアルにも答えは書かれています。難しいのは、自分の状況に当てはまる答えがどれなのかを、利用者が自分で見分けなければならないことです。

リリースに載っている対話の例が、その難しさをよく表しています。引っ越したので住所を変えたい、という相談に対して、あおまるはすぐに手順を答えません。まず、融資や財形、マル優といった取引を使っているかを、選択肢を示して聞き返します。「利用していない」を選ぶと、そこで初めてアプリの住所変更メニューへ案内します。みずほ銀行の住所変更の案内でも、取引内容によってはインターネットで手続きできない場合があり、利用している取引によってたどるべき手続きが変わります。

銀行の手続きには、取引内容によって案内が枝分かれするものがあります。従来のFAQでは、利用者自身が条件を読み解かなければならない場面がありました。あおまるバンクは、その読み解きを対話の側で引き受けようとしています。副題にある「検索」から「対話」へという言葉は、こうした役割の移し替えとして読むことができます。

回答に根拠となる情報源を併記する点も、銀行らしい設計です。AIの答えをそのまま信じてもらうのではなく、利用者が公式の情報に戻って確かめられるようにしています。必要に応じて、電話窓口など人が対応する窓口へも案内します。AIによる自己解決を支えながら、必要なときには人の窓口にもつなぐ設計です。

もうひとつ目を引くのは、提供開始の時点から音声で話しかけられることです。スマートフォンのみずほ銀行アプリにログインして使う形で、ボタンを押して話すだけで質問でき、やり取りは文字でも表示されます。リリースは、テキスト入力に慣れていない人でも電話窓口に問い合わせる感覚で使えることを狙いに挙げています。文字入力を前提にしないAI窓口は、銀行の利用者の幅を考えれば自然な出発点です。

慎重さも、設計に組み込まれています。提供開始の時点では、口座情報や取引履歴を参照しません。入力と出力の両方に検知と制御の仕組みを重ね、入力と出力のデータはOpenAIのモデルの学習に使わないと明記しています。8月に公開されたみずほの公式インタビューによると、振込などの手続きは勘定系システムとの接続に時間がかかるため、既存のデータで精度を高めやすい問い合わせ対応から始めたといいます。手続きや資産運用の相談へ広げるのは、法令への適合や当局との協議を踏まえて段階的に進めるとしており、これはみずほ銀行が自ら掲げた次の宿題です。できることを狭く始め、信頼を積みながら広げる順番は、お金を預かる側として筋の通った選択です。

作り方にも、みずほの姿勢が表れています。エージェント機能にはOpenAIのモデルを活用し、同社のエンジニアチームによる技術支援も受けています。公式インタビューによると、最初のプロトタイプはデジタル戦略部の内製開発ラボで約1か月で作り、本格的な開発はベンダーと一体のチームで進めました。三菱UFJ銀行は9月、ZEALSの音声AIエージェント「Omakase AI」を口座開設キャンペーンのページに導入しています。外部の技術をどう取り込み、どこまで自分たちの手で作るか。メガバンクのあいだでも、その組み合わせには違いが見えます。

この作り手の層を、みずほはさらに厚くしようとしています。日本経済新聞は10月15日、みずほフィナンシャルグループが営業や事務の社員をAIの開発人材に転換し、10年後に数千人規模を目指すと報じました。今春には、自社サービス向けのAI開発人材を2026年度中に400人規模へ増やす計画も報じられています。先の公式インタビューには、新卒で入社して法人営業や主計部を経験したのちデジタル戦略部に移り、あおまるバンクのプロダクトオーナーを務める社員が登場します。報じられた転換構想との直接の関係はわかりませんが、金融の現場を知る社員が作り手の側に回る姿は、すでに現れています。

みずほ銀行は、あおまるバンクを「質問に答えるAI」から「お客さまの課題解決を支えるAI」へ育てていくとしています。いまは問い合わせに答える段階ですが、手続きや資産形成の相談まで広がれば、銀行と利用者の接点そのものが変わっていきます。ウォンバットのキャラクターが話す最初の一言は、その長い道のりの入り口です。

【関連記事】

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【編集部後記】

公式インタビューによると、開発チームは音声の扱い方を2つ比べています。声をいったん文字に起こしてAIに渡し、答えを再び声に戻す方式と、声のまま受け取って声で返す方式です。選ばれたのは後者で、決め手は会話の自然さでした。

電話で銀行に問い合わせるとき、私たちは相手の相づちに助けられながら用件を整理しています。あおまるの聞き返しの間合いが、その相づちにどこまで近づけるのか。アプリで実際に話しかけて確かめてみたくなります。


【用語解説】

AIエージェント
利用者の目的に応じて、情報の確認や案内などを対話しながら進めるAI。あおまるバンクは現時点では問い合わせへの回答を担い、振込や住所変更などの手続きは実行しない。

マル優
障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度の通称。障害者等を対象に、一定額までの預貯金等の利子を非課税とする。誰でも使える制度ではない。

勘定系システム
預金・融資・為替など銀行の基幹業務を処理し、口座の残高や取引の記録を管理するシステム。

プロダクトオーナー
アジャイル開発で、製品の価値に責任を持ち、何をどの順番で作るかを決める役割。

【参考リンク】

あおまるバンク(AIチャット)とはどのようなサービスですか?|みずほ銀行(外部)
対応端末やログインの要否、できることとできないこと、個人情報を入力しない注意点をまとめた、みずほ銀行の公式FAQページ。

みずほ銀行(外部)
株式会社みずほ銀行の公式サイト。個人・法人向けの商品やサービス、各種手続きの案内、最新のニュースリリースを掲載している。

OpenAI(外部)
ChatGPTなどを開発する米国のAI企業の公式サイト。あおまるバンクは、同社の音声AI技術とAIモデルを活用している。

株式会社ZEALS(外部)
接客AIエージェントを開発する企業の公式サイト。三菱UFJ銀行が導入した音声AIエージェント「Omakase AI」を提供する。

【参考記事】

「探す」から「対話で導かれる」へ。OpenAIの技術を活用した〈みずほ〉の対話型AIアシスタント「あおまるバンク」が変える、お客さまと銀行の関係|MIZUHO DX(外部)
開発を担ったデジタル戦略部の2人へのインタビュー。内製ラボでのプロトタイプ作成、音声方式の選定、問い合わせ対応を先行させた理由を語る。

新サービス「あおまるバンク」を2026年9月(予定)より提供開始|みずほ銀行(外部)
あおまるバンクの予告リリース。みずほダイレクトアプリでの提供予定と、各種手続きや資産形成の相談へ広げていく構想を示した。

お客さま向け音声 AI エージェント「Omakase AI」の提供開始について|三菱UFJ銀行(外部)
三菱UFJ銀行がZEALSの音声AIエージェントをウェブサイトに導入した発表。まずキャンペーンと口座開設の問い合わせに答える。

みずほが数千人をAI開発者に転換 事務や営業、日本企業の働き方転機|日本経済新聞(外部)
みずほフィナンシャルグループが営業や事務の社員をAIの開発人材に転換し、10年後に数千人規模を目指すと報じた記事。会員限定。

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みずほFGが自社サービス向けAIの開発人材を2026年度中に400人規模へ増やし、最大1000億円を投じる計画を報じた。

住所の変更|みずほ銀行(外部)
みずほ銀行の住所変更の案内ページ。当座勘定や一部の融資、マル優などの取引がある場合は、インターネットで手続きできないと示す。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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