Apple Intelligence、中国でQwen採用 12月のiOS 27.3から、Siri AIは含まず

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日本のiPhoneでは10月26日、Siri AIが日本語で話し始めました。その5日後、Appleは中国向けのApple Intelligenceを発表しましたが、そこにSiri AIは入っていません。代わりにSiriが特定の依頼でつなぐ先は、AlibabaのQwenです。同じiPhoneのAIが、地域ごとに別の組み合わせで動き始めています。


Appleは2026年10月31日、Apple Intelligenceの最初の機能を中国で提供すると発表した。11月4日から最新のiOS開発者ベータでテストを始め、12月のiOS 27.3で中国の利用者に届ける。機能はAppleが構築した生成モデルで動き、ライブ翻訳、作文ツール、ビジュアルインテリジェンス、通知の要約などを含む。

AppleはAlibabaと協業し、Siri、作文ツール、ビジュアルインテリジェンスの一部でQwen(千問)を使えるようにする。対象はiPhone 16以降やiPhone 15 Proなどで、ほかのプラットフォームは必要な審査を経てから提供する。WWDC 2026で発表したSiri AIは含まれない。

From: 文献リンクApple 智能即将登陆中国(Apple Newsroom 中国)

【編集部解説】

8月の時点で、中国版Apple Intelligenceについていちばん大きな問いとして残っていたのは「誰が何を担うのか」でした。Appleが中国向けに独自のモデルを訓練していると報じられた一方で、AppleのモデルとAlibabaのQwenの詳しい分担は、まだ見えていなかったからです。

10月31日の発表で、Apple自身がその問いに答えました。

中国版Apple Intelligenceは、Appleが構築した生成モデルで動きます。そこにQwenへの対応が加わり、3つの入口から呼び出せるようになります。

その3つとは、Siri、作文ツール、ビジュアルインテリジェンスです。Siriは特定の依頼でQwenにつなぎ、広い知識を必要とする質問や、写真・PDF・プレゼンテーションについての質問を任せます。作文ツールには、Qwenにゼロから文章を書かせる「作成」が加わります。Alibabaの発表によれば、この「千問で作成」では画像も生成できます。ビジュアルインテリジェンスでは、カメラに映ったものについて「Qwenに聞く」を選べます。

翻訳、通知の要約、メールの優先表示、写真のクリーンアップといった日々の機能は、Appleのリリースでは、Appleの生成モデルで動く機能として紹介されています。リリースに掲載された9点の画像も、どれもこうしたApple自身の機能を写したものです。Qwenの画面は1枚も入っていません。

Qwenの使い方にも、Appleらしい設計が見えます。Qwenとの連携を有効にするかどうかは利用者が選び、使うときはQwenのアカウントか「Appleでサインイン」でログインします。Alibabaの説明では、問いや書類、画像をQwenに送る前には、必ず利用者の同意を求めるとしています。

データの扱いについては、誰が何を約束しているのかを分けて読んでおくと正確です。

「利用者の依頼と生成した応答をモデルの学習に使わない」と明言しているのは、Alibabaの発表です。Appleのリリースが書いているのは、Qwenにつながる場面とログインの方法まででした。Qwenに送るデータを受け取る側の企業が、学習に使うかどうかを自ら公にしたことには、大きな意味があります。

一方で、今回の範囲に入らないものもはっきり書かれています。Siri AIと、WWDC 2026で発表された次世代のApple Intelligence機能は、今回のアップデートに含まれません。

Siri AIは、iOS 27などでベータ版として提供されています。Appleの案内では、対応する言語は英語、フランス語、日本語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語から始まっており、中国語はまだ入っていません。中国では、その新しいSiriを持ち込まず、Apple自身のモデルを土台に置いて、知識と生成の一部をQwenに任せる構成から始めることになります。同じiPhoneでも、AIの中身は地域ごとに違う組み合わせで動いている、ということです。

対象がiPhoneだけである点にも触れておきます。Alibabaは7月の時点で、QwenがiOS、iPadOS、macOS、visionOSの中国の利用者に届くとしていました。8月には、MacでQwenを使う手順書がAppleのサイトに一時掲載され、すぐに取り下げられています。今回のリリースは「ほかのプラットフォームは必要な審査を経てから」と書き、iPhoneから順に進める姿勢を示しました。

AppleのCEO、ジョン・ターナス氏は、WIREDのスティーブン・レヴィ氏によるインタビューで「AIのためのAIは出したくない」と語っています。AIが働いているかどうかを意識させず、使う人が気に入るものを作ることが大事だ、という趣旨です。

中国で最初に届く機能の顔ぶれは、この言葉と重なって見えます。翻訳、通知、メール、写真といった毎日の道具が先に並び、目立つ新しいSiri AIは今回の提供範囲に入っていません。Qwenも、独立したアプリとしてではなく、Siriや作文ツールの中で呼び出される形で入ります。これは私の読み方ですが、市場ごとにAIのパートナーを替えても、利用者が触れる入口はAppleの側にそろえておく、という設計思想がうかがえます。

日本の読者にとっては、自分のiPhoneに置き換えて考えると分かりやすいかもしれません。日本語のSiri AIは10月26日、iOS 27.2などのアップデートで使えるようになりました(Siri AI自体はベータ版の位置づけです)。中国では、Siri AIを含まない形で、Qwenとの連携を備えたApple Intelligenceの提供が予定されています。同じ対応端末でも、提供される地域や言語、購入した地域、アカウントの条件によって、使えるAIの機能や連携先が変わります。スマートフォンのAIは、端末の性能だけでなく、その地域の制度とパートナーによって形づくられる段階に入っています。

11月4日に開発者ベータが配信されると、どの依頼がAppleのモデルにとどまり、どこからQwenに渡されるのか、その境目が具体的に見えてくるはずです。8月の時点では見えていなかった中国版Apple Intelligenceの機能と提供の予定が、12月の正式提供に向けて、ようやく輪郭を持ち始めました。

【関連記事】

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8月の前回記事。Appleが中国向けに独自のモデルを訓練したとの報道と、7月の备案、Mac向け手順書の取り下げを扱った。

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英語で先に始まったSiri AIの評価と、その基盤のモデルを扱った記事。中国版に入らなかったSiri AIの中身がわかる。

【編集部後記】

Appleの米国のニュースルームのトップには、10月下旬の発表として新しいMacBook ProやiMacの記事が並んでいます。ところが11月3日の時点で、中国のApple Intelligenceの記事はそこに見当たりません。この発表は、中国本土向けのニュースルームに中国語で掲載されたものです。

Appleの発表でQwenの名前が出るのも、その中国語の文面の中だけです。誰に向けて、どの言葉で語るのか。発表の置き場所にも、地域ごとに組み合わせを変えるAppleの進め方が表れているように見えます。


【用語解説】

Apple Intelligence
Appleの生成AI機能群。iPhone、iPad、Macなどに組み込まれ、文章の書き直しや要約、通知の要約、翻訳、画像の生成などを担う。中国では2026年12月のiOS 27.3から提供される。

Qwen(千問)
中国のAlibabaが開発する大規模言語モデルのシリーズ、および同名のAIアシスタント。中国名は「千问」。中国のApple Intelligenceでは、Siri、作文ツール、ビジュアルインテリジェンスから呼び出される。

Siri AI
AppleがWWDC 2026で発表した、生成AIで作り直したSiri。iOS 27などでベータ版として提供され、日本語には10月26日に対応した。中国向けの今回のアップデートには含まれない。

作文ツール
Apple Intelligenceの機能の一つ。入力した文章の書き直し、校正、要約を行う。中国ではQwenにゼロから文章を作らせる「作成」も加わる。

ビジュアルインテリジェンス
iPhoneのカメラに映ったものや場所について、その場で調べられるApple Intelligenceの機能。中国ではAlibabaの発表によると、Qwenに質問する選択肢が加わる。

開発者ベータ
正式版の前に、アプリ開発者向けに配信されるOSの試験版。中国向けのApple Intelligenceは、11月4日から最新のiOS開発者ベータでテストできる。

Appleでサインイン
Apple Accountを使って、ほかのサービスにログインできる仕組み。中国ではQwenのアカウントを作らなくても、この方法でQwenとの連携にログインできる。

【参考リンク】

Apple IntelligenceとSiri(Apple 日本)(外部)
Apple Intelligenceの日本語の公式ページ。Siri AIの対応言語やベータ版の位置づけ、対応端末の条件を注記に記載している。

Qwen(Alibaba)(外部)
AlibabaのAIモデルQwenの公式サイト。モデルの一覧や、チャット形式のアシスタントの入口、開発者向けの情報をまとめている。

Alibaba Group(外部)
Alibaba Groupの公式サイト(英語)。グループの事業や経営陣、ニュースリリースを掲載し、Qwenを含むAI事業も紹介している。

【参考記事】

Alibaba’s Qwen AI model to integrate into Apple Intelligence in landmark partnership(CGTN)(外部)
新華社の配信を転載した記事。提携の発表、提供時期、学習に使わない方針、対象の利用者の条件、呉泳銘CEOのコメントを伝える。

阿里宣布与苹果合作,将千问集成至Apple智能(澎湃新闻)(外部)
Alibabaの微信公式アカウントの発表を転載した記事。千問での作成、Qwenに聞く、送信前の同意、学習に使わない方針を記載。

Siri AI、日本語で提供開始(Apple 日本)(外部)
2026年10月26日のApple日本の発表。27.2のアップデートで、Siri AIが日本語など5つの言語に新たに対応したと伝える。

I Spent 30 Minutes With Apple’s CEO. Now I Know Why John Ternus Got the Job(WIRED)(外部)
スティーブン・レヴィ氏によるターナスCEOのインタビュー。AIのためにAIを出すのではなく、使う人が気に入る製品を作ると語る。

国行苹果 AI 功能完成备案,阿里巴巴称千问将作为 AI 能力集成至 Apple 智能(IT之家)(外部)
2026年7月15日の記事。Apple Intelligenceの备案の公告と、Qwenを4つのOSに入れるAlibabaの方針を伝える。

苹果官网:Mac电脑可配合苹果智能使用千问,进行文本创作、使用Siri问答(澎湃新闻)(外部)
2026年8月の記事。Appleのサイトに載ったMac向けの手順書の内容(Siriと作文ツールでのQwenの利用、送信前の確認)を伝える。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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