Last Updated on 2024-08-02 06:46 by admin
2024年8月1日、ハリウッドの俳優や声優たちが、ビデオゲーム業界における人工知能(AI)の使用に抗議するデモを行った。このデモは、SAG-AFTRA(映画俳優組合・アメリカテレビ・ラジオ芸術家連盟)が主導し、ロサンゼルスのゲーム開発会社Insomniac Gamesの本社前で実施された。
抗議の主な理由は、ゲーム業界でのAI技術の使用拡大に対する懸念である。俳優たちは、AIが彼らの声や演技を複製し、将来的に人間の俳優を置き換える可能性を危惧している。
SAG-AFTRAは、ゲーム業界との契約交渉が2023年10月から行き詰まっており、AIの使用に関する保護措置を求めている。組合は、俳優の同意なしにAIが彼らの演技を複製することを禁止する条項を要求している。
デモには約400人の俳優が参加し、「人間の声優を守れ」「AIは私たちの仕事を奪う」などのスローガンを掲げた。参加者には、『The Last of Us』シリーズでジョエル役を演じたトロイ・ベイカーや、『Uncharted』シリーズのネイサン・ドレイク役で知られるノーラン・ノースなど、有名ゲーム声優も含まれていた。
この抗議活動は、ハリウッドの俳優や脚本家が映画・テレビ業界でのAI使用に反対してストライキを行っている最中に発生した。ゲーム業界での抗議は、エンターテインメント産業全体でAIの影響が広がっていることを示している。
from:Over 300 video game actors protest over unregulated AI use in Hollywood
【編集部解説】
今回のニュースについて、少し掘り下げて解説させていただきます。
まず、この抗議活動の背景には、AI技術の急速な発展とエンターテインメント業界への浸透があります。声優や俳優たちの懸念は、単なる技術への抵抗ではなく、自身のキャリアや表現の独自性を守ろうとする切実な思いから生まれています。
SAG-AFTRAとReplica Studiosの合意は、一見すると声優の権利を保護するように見えますが、業界の実態を考えると問題があります。例えば、有名声優のAI音声が安価で利用可能になれば、新人や中堅の声優の仕事が奪われる可能性が高くなります。これは業界の多様性や創造性を損なう恐れがあります。
また、「影響を受けるメンバーの承認を得た」というSAG-AFTRAの主張に対し、多くの著名声優が「相談されていない」と反論している点は看過できません。この齟齬は、組合と現場の声優たちの間に深刻な溝があることを示唆しています。
一方で、AI技術の活用自体は避けられない流れであり、完全な拒絶は現実的ではありません。むしろ、声優たちの権利を守りつつ、AIとの共存を図る新たなモデルの構築が求められているのです。
例えば、AI音声の使用に対する適切な報酬体系の確立や、人間の声優とAIの役割分担の明確化などが考えられます。また、AI音声を使用する際の倫理ガイドラインの策定も重要でしょう。
長期的には、この問題はゲーム業界だけでなく、アニメーションや吹き替え、ナレーションなど、声を使用するあらゆる分野に波及する可能性があります。そのため、業界全体での包括的な議論と対策が必要不可欠です。