Last Updated on 2024-10-02 10:16 by admin
2024年10月1日から3日にかけてシアトルで開催されたUnreal Fest 2024において、NVIDIAは新しいUnreal Engine 5用のオンデバイスプラグインをリリースした。このプラグインは、NVIDIA ACE(Avatar Cloud Engine)のためのもので、AI駆動のMetaHuman(Epic Gamesが開発したデジタルヒューマン技術)キャラクターをWindows PC上で構築・展開することを容易にする。
ACEは、生成AIを活用して音声、知性、アニメーションを提供するデジタルヒューマン技術のスイートである。新しいプラグインには以下が含まれる:
- 口の動きと表情のアニメーション用のAudio2Face-3D
- 応答生成用のNemotron Mini 4Bモデル
- 文脈情報のための検索拡張生成(RAG)
また、NVIDIAはAutodesk Maya用のAudio2Face-3Dプラグインも発表した。このプラグインは、AIによる表情アニメーションの作成を簡素化するインターフェースを提供する。
さらに、NVIDIAはEpic GamesのUnreal Pixel Streaming技術を活用したUnreal Engine 5レンダラーマイクロサービスを構築した。このマイクロサービスは、NVIDIA ACE Animation Graphマイクロサービスとリナックスオペレーティングシステムをサポートしている。
これらの新機能により、開発者はより簡単にAI駆動のデジタルヒューマンを作成し、ゲームやアプリケーションに統合できるようになる。
from:Nvidia releases plugins to improve digital human realism on Unreal Engine 5
【編集部解説】
NVIDIAの今回の発表は、デジタルヒューマン技術の進化において重要な一歩を示しています。特に、ゲーム開発者にとって大きな意味を持つ技術革新といえるでしょう。
まず注目すべきは、Unreal Engine 5向けの新しいオンデバイスプラグインの登場です。これにより、AI駆動のMetaHumanキャラクターをWindows PC上で簡単に構築・展開できるようになります。従来は複雑だったプロセスが大幅に簡素化され、より多くの開発者がこの先進技術を活用できるようになると考えられます。
Audio2Face-3Dプラグインの導入も画期的です。これにより、リップシンクや表情のアニメーションがAIによって自動生成されるため、キャラクターの表現力が飛躍的に向上します。さらに、Autodesk Maya用のプラグインも提供されることで、3Dアニメーション制作のワークフローが大幅に効率化されるでしょう。
Nemotron Mini 4Bモデルと検索拡張生成(RAG)の組み合わせは、キャラクターの対話能力を新たな次元に引き上げます。これにより、ゲーム内のNPC(ノンプレイヤーキャラクター)がより自然で文脈に沿った会話を行えるようになり、プレイヤーの没入感が大幅に向上すると期待されます。
一方で、この技術の普及には課題もあります。高度なAI処理を必要とするため、ハードウェアへの要求が高くなる可能性があります。また、AIが生成する対話内容の品質管理や倫理的な配慮も重要になってくるでしょう。
長期的には、この技術がゲーム業界だけでなく、教育、医療、カスタマーサービスなど、幅広い分野に応用される可能性があります。例えば、個別化された学習支援や、より共感的な医療サポートシステムの開発などが考えられます。
しかし、技術の進化に伴い、プライバシーや個人データの取り扱いに関する新たな規制の必要性も出てくるかもしれません。また、人間とAIの境界が曖昧になることで、社会的・倫理的な議論が活発化する可能性もあります。
NVIDIAのこの取り組みは、デジタルヒューマン技術の民主化を促進し、より多くの開発者や企業がこの分野に参入する機会を提供するものと言えるでしょう。今後、この技術がどのように発展し、私たちの日常生活にどのような影響を与えていくのか、注目していく必要があります。
【用語解説】
アナロジー:
MetaHumanとNVIDIA ACEの関係は、料理に例えると以下のようになります:
- MetaHuman:高品質な食材(デジタルヒューマンの外見)
- NVIDIA ACE:優れた調理技術(AIによる動きや対話の生成)
両者を組み合わせることで、見た目も動きも自然な「デジタル料理」(リアルなデジタルヒューマン)が完成します。