Last Updated on 2024-11-26 12:35 by admin
AIアシスタントたちは、ついに情報の壁から解き放たれるかもしれない。Anthropicが発表した画期的な通信規格は、AIシステムとデータの結びつき方を根本から作り変えようとしている。
2024年11月25日、AI企業のAnthropic社が「Model Context Protocol (MCP)」と呼ばれる新しいオープンソースツールを公開した。
MCPの主な特徴は以下の通り:
- AIアシスタントが様々なデータソースに直接アクセスできる統一的な接続プロトコル
- 開発者は一度の統合で複数のデータソースに接続可能
- すでにReplit、Codeium、Sourcegraphなどのコーディングソフトウェアが採用を開始
この発表に先立ち、OpenAIは2024年11月上旬にMac版ChatGPT向けの「Work with Apps」機能のテストを開始している。これに対しMCPは、特定のアプリケーションに限定せず、すべてのAIシステムとデータソースでの利用を目指している。
Anthropic社のclaude担当責任者アレックス・アルバート氏は、このプロトコルによって開発者は個別のコネクタを維持する必要がなくなり、より効率的な開発が可能になると説明している。
from Anthropic launches tool to connect AI systems directly to datasets
【編集部解説】
MCPの登場は、企業のAI活用における大きな転換点となります。現在のAIシステムは、データの孤立(サイロ化)という深刻な課題を抱えています。新しいデータソースを追加するたびに、カスタム実装が必要となり、これが企業のAI導入を妨げる大きな要因となっていました。
MCPは、この課題に対する革新的な解決策を提供します。例えば、社内の営業データベース、顧客管理システム、開発環境など、異なるデータソースを統一的なプロトコルで接続できるようになります。Block社のCTO:Dhanji R. Prasanna氏が述べているように、MCPはAIと実世界のアプリケーションを結ぶ架け橋となり、イノベーションのアクセシビリティと透明性を確保します。
特筆すべきは、MCPがオープンソースとして公開されている点です。これにより、特定の企業に依存することなく、開発者コミュニティ全体でプロトコルの改善と拡張が可能となります。すでにGoogle Drive、Slack、GitHub、Postgres、Puppeteerなど、広く使用されているエンタープライズシステム向けの事前構築されたMCPサーバーも提供されています。
現時点でMCPはローカルサーバー接続のみをサポートしていますが、Anthropicは今後、エンタープライズグレードのセキュリティ機能を備えたリモートサーバーサポートを計画しています。これにより、より多くの企業がMCPを活用できるようになるでしょう。
一方で、OpenAIなどの競合他社は独自のデータ接続ソリューションを持っており、MCPの普及には課題も残されています。また、セキュリティやデータプライバシーの観点から、特に医療や金融などの規制の厳しい産業での採用には慎重な検討が必要です。
しかし、AIシステムの相互運用性を高め、より効率的なAI活用を可能にするMCPの取り組みは、今後のAI開発の標準となる可能性を秘めています。特に日本企業において、既存システムとの統合や段階的な導入が容易になることで、より多くの企業がAIの恩恵を受けられるようになることが期待されます。
【用語解説】
Model Context Protocol (MCP)
– AIシステムとデータソースを接続するためのオープンな標準規格
– JSON-RPC 2.0プロトコルを使用してデータを送受信
– ローカルサーバー方式で安全性を確保
MCP Server/Client
– Server:データソースを公開する側のシステム
– Client:AIアプリケーションなど、データにアクセスする側のシステム
JSON-RPC 2.0
– システム間でデータをやり取りするための軽量な通信プロトコル
– リクエストとレスポンスの形式を標準化