Last Updated on 2025-01-08 14:49 by admin
AIが物理世界とつながる未来へ――NVIDIAが発表した新プラットフォームは、物理的環境をリアルに再現し、次世代のロボティクスやシミュレーションを可能にします。その最前線に迫ります
NVIDIA社は2025年1月のCESにて、物理世界対応型AIプラットフォーム「Cosmos」を発表しました。
基本仕様
- 学習データ:2000万時間以上の動画データ
- 処理能力:従来比89倍(20万時間の処理を14日間で完了)
- トークン数:9,000兆
主要機能
- マルチバースシミュレーション機能搭載
- 2段階安全確認システム実装
- プライバシー保護機能(自動顔面ぼかし処理)
- 物理法則に基づく動作予測・制御
採用企業
- Uber
- XPENG
- Figure AI
from Advancing Physical AI with NVIDIA Cosmos World Foundation Model Platform
【編集部解説】
物理世界対応型AIの新たな地平を切り開くNVIDIA Cosmosについて、その革新性と可能性を解説いたします。
Cosmosの技術的革新は、AIの物理世界理解を根本から変革します。2000万時間という膨大な動画データを学習基盤とし、物理法則に基づいた予測と制御を実現します。これは、人間の経験学習をAIが超越的なスケールで再現する試みといえるでしょう。
注目すべき技術的特徴として、従来比89倍という圧倒的な処理速度向上が挙げられます。この処理能力は、自動運転車やロボット開発における試行錯誤のサイクルを劇的に短縮します。
実用面では、自動運転車開発において、実道路でのテスト前に仮想環境で徹底的な検証が可能になります。ロボット工学分野では、動作の精密な調整や検証を、従来では考えられないスピードで実施できるようになります。
さらに、2段階の安全確認システムにより、開発から実装まで一貫した品質管理が実現。プライバシー保護機能も標準搭載され、実用化に向けた環境が整っています。
長期的な展望として、Cosmosは物理世界で動作するAIシステムの開発を加速させる触媒となるでしょう。より多くの開発者がロボットや自動運転技術の開発に参入できるようになり、イノベーションの新たな波が生まれることが期待されます。
私たちの日常においても、より自然に動作するロボットや、正確な予測に基づく自動運転車の実現など、具体的な変化が見えてきます。Cosmosは、AIと物理世界の融合における重要な転換点となることでしょう。
【実際に使ってみた】
発表と同時に使えるようになったため、編集部で実際に使ってみました。
物理シミュレーションに特化したNVIDIA謹製のAIということでどれくらい現実の物理現象に基づいた動画が生成されるのか試してみました。
赤の軽自動車と青の軽自動車がお互いにぶつかって大破する様子をプロンプトとして入力して出力されたものが以下のような動画でした。
他の動画生成AI(SoraやRunway等です)に比べると、動画として不自然な部分は多いものの、煙や光、車が大破する様子などが現実の物理法則に基づいた上で描写されています。今後のアップデートが楽しみです。
【用語解説】
- マルチバースシミュレーション
複数の仮想現実(VR)やシミュレーション環境が同時に存在し、それぞれが異なる物理法則や条件を持つシステム。科学研究や仮説検証に活用される。 - 物理世界対応型AI
実世界の物理法則や環境データを理解・反映し、現実世界の課題解決やロボット制御に適応する人工知能。 - Foundation Model
基盤となる大規模AIモデル
【参考リンク】
- NVIDIA公式アナウンス(外部リンク)
COSMOSのリリース記事 - NVIDIA cosmos-1.0-diffusion-7b preview(外部リンク)
Cosmosを実際に使うことが出来るNVIDIAの公式ページ