Googleと女性がん研究所の提携に関する主要な事実を以下にまとめる。
発表概要
- 発表日:2025年2月18日
- 発表場所:フランスAIアクションサミット
- 提携機関:Google、女性がん研究所(Institute of Women’s Cancers)
- 女性がん研究所の設立母体:
- キュリー研究所(Institut Curie)
- パリ科学・人文科学研究大学(Université PSL)
- フランス国立保健医学研究機構(Inserm)
提携内容
- AIツールを活用したがん研究
- 科学的根拠に基づく健康情報の共有
- ポスドク研究者への資金提供
具体的な取り組み
- がんの進行予測と再発リスクの予測
- トリプルネガティブ乳がんなど難治性の女性特有のがんに焦点
- YouTubeでのキュリー研究所チャンネルの健康情報発信
- Google.orgから200万ドル以上の研究資金提供
主要関係者
- アンヌ・ヴァンサン=サロモン(女性がん研究所ディレクター)
- ジョエル・バラル(Google DeepMind研究上級ディレクター)
- セドリック・ドニ=レミス(パリ科学・人文科学研究大学イノベーション・起業開発担当副学長)
背景データ
- フランスの年間乳がん症例数:約60,000件
- 世界の乳がん診断数(2022年):200万件以上
過去の関連実績
- 2023年:メイヨークリニックと放射線治療計画のAIツール開発で提携
- 2023年:台湾の長庚記念病院とAI超音波による乳がん早期発見の研究を開始
- 2022年:医療技術企業iCADとの提携でAI乳房画像技術を統合128
from:Google partners with the Institute of Women’s Cancers for cancer research
【編集部解説】
Googleと女性がん研究所の提携は、AIによるがん研究の新時代を象徴する画期的な取り組みといえます。この提携の特徴は、世界最高峰の研究機関であるキュリー研究所の医学的専門性と、Googleの最先端AI技術を組み合わせる点にあります。
特に注目すべきは、トリプルネガティブ乳がんなどの難治性がんへの焦点です。この種の乳がんは他のタイプと比べて進行が速く、従来の治療法が効きにくいという特徴があります。
AIによる革新的な取り組み
GoogleのAI技術は既に乳がん検出において優れた成果を上げています。2019年の研究では、AI診断システムが放射線科医の61.4%を上回る精度で乳がんを検出することに成功しました。
さらに、このシステムは誤診を減らすことにも貢献しています。米国では偽陽性を5.7%、偽陰性を9.4%削減することに成功しました。
医療現場への実装に向けて
この提携では、200万ドル以上の研究資金が提供され、ポスドク研究者の支援も行われます9。これは、研究成果の実用化を加速させる重要な投資といえます。
しかし、AIの医療応用には慎重な姿勢も必要です。最近の研究では、医療用チャットボットの推奨する治療法の約3分の1がNCCNガイドラインと完全には一致しないことが判明しています。
今後の展望
この提携は、単なる技術開発にとどまらず、YouTubeを通じた科学的な健康情報の発信も計画しています。これは、誤情報対策という現代的な課題への取り組みとしても評価できます。
世界では年間200万人以上が乳がんと診断されており5、この数字は決して小さくありません。AIによる診断精度の向上と早期発見の実現は、多くの命を救う可能性を秘めています。
ただし、AI技術の公平性にも注意が必要です。例えば、人種によって乳房密度が異なることが知られており、AIシステムの開発にはこうした多様性への配慮が不可欠です。