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Apple、AIドクター開発へ本格始動 — 2026年リリース予定の「Health+」で医療アドバイスを提供

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-02 16:58 by admin

Appleが「Project Mulberry」というコードネームで、AIを活用した医師機能、健康アプリの大幅リニューアル、新しい健康コーチ機能を開発中であることが明らかになった。

この情報は、Bloombergのテクノロジーレポーターであるマーク・ガーマン氏が2025年4月2日に報じたものである。

開発は現在全速力で進行中であり、新機能は2026年春または夏にリリース予定のiOS 19.4で登場する可能性がある。

非公式に「Health+」と呼ばれる新しい健康アプリは、Apple WatchやiPhoneなどのAppleデバイスからユーザーの健康データを収集し、それに基づいてヘルスケアの推奨事項を提供する。例えば、高血圧の兆候がある人に特定の食品を提案するなどの機能が含まれる。

Appleは社内の医師チームと協力しており、様々な専門分野の医師を招いて教育用ビデオコンテンツを作成する計画である。また、コンテンツの中心となる著名な医師の起用も検討している。

新アプリには食事追跡機能が追加される予定で、これによりAppleはMyFitnessPalやNoomなどの企業と競合することになる。さらに、iPhoneカメラを使用してユーザーのワークアウト動画を撮影し、テクニック改善を提案するパーソナルトレーナー機能も搭載される可能性がある。

このプロジェクトは、現在Appleのヘルスチームを率いるスンブル・デサイ博士が主導し、同社の最高執行責任者(COO)であるジェフ・ウィリアムズ氏も深く関わっている。

AppleのCEOであるティム・クックは2019年にCNBCのインタビューで、健康とウェルネスにおけるAppleの取り組みが「人類への同社の最大の貢献になる」と述べている。

from AIがAppleヘルスケアアプリに登場-Peplexity discoverより(こちらのリンクから本記事に対する深堀りや質問を行うことが出来ます。)
Apple Prepping an ‘AI Doctor’ and Health App Revamp

【編集部解説】

Appleが「Project Mulberry」という名のAIドクター開発プロジェクトを進めているというニュースは、テクノロジーと医療の融合という大きな潮流を象徴しています。複数のメディアが報じているこの情報は、Bloombergのマーク・ガーマン氏による調査報道が発端となっています。

このプロジェクトの本質は、単なる健康データの収集から一歩進んだ「データの解釈と行動提案」にあります。現在のApple Watchなどのデバイスは様々な健康指標を測定していますが、それらのデータが何を意味するのか、どのような行動を取るべきかという点については、ユーザー自身の判断に委ねられています。

「Health+」と呼ばれる新サービスでは、AIがこれらのデータを分析し、医師のような視点からアドバイスを提供することを目指しています。例えば、高血圧の兆候が見られる場合に特定の食品を推奨するなど、パーソナライズされた健康アドバイスが可能になるでしょう。

注目すべきは、Appleがこのプロジェクトのために医師を積極的に採用している点です。カリフォルニア州オークランド近郊に新たな施設を開設し、睡眠、栄養、理学療法、メンタルヘルス、心臓病学などの専門家を招いてAIの訓練とコンテンツ制作を行う計画があります。これは、AIの判断に医学的根拠を持たせるための重要なステップと言えるでしょう。

食事追跡機能の追加も大きな変化です。これまでAppleは食事管理機能にあまり力を入れてきませんでしたが、健康管理において食事は運動と同様に重要な要素です。この機能追加により、MyFitnessPalやNoomなどの専門アプリとの競合が予想されます。

ティム・クックCEOが「人類への最大の貢献」と位置づけるヘルスケア分野。これは単なるレトリックではなく、Appleが真剣にヘルスケア市場に参入する意思表示と捉えるべきでしょう。世界的な高齢化や医療費の増大という社会課題に対し、テクノロジーによる解決策を提示する試みとも言えます。

しかし、このようなサービスには潜在的なリスクも存在します。最も懸念されるのは、医療アドバイスの正確性と責任の所在です。AIが提供するアドバイスに基づいて健康上の決断を下した場合、その結果に対する責任は誰が負うのでしょうか。また、各国の医療規制との整合性も課題となるでしょう。

プライバシーの観点からも重要な問題があります。健康データは最も機密性の高い個人情報の一つです。Appleは従来からプライバシー保護を重視してきましたが、より詳細な健康データを扱うことになれば、そのセキュリティ対策はさらに重要になります。

長期的な視点では、このようなサービスが普及することで、予防医療の強化や医療リソースの最適化につながる可能性があります。早期に健康リスクを発見し対処することで、深刻な疾患の予防や医療費の削減が期待できます。

また、医療へのアクセスが限られている地域や人々にとって、AIを活用した健康アドバイスは貴重なリソースとなるかもしれません。特に専門医が不足している地域では、基本的な健康管理のサポートとして機能する可能性があります。

テクノロジー企業による医療分野への参入は、既存の医療システムにも変革をもたらすでしょう。医師の役割が変化し、AIがルーティンワークを担当する一方で、医師はより複雑な診断や患者との関係構築に集中できるようになるかもしれません。

「Project Mulberry」の成否は、技術的な精度だけでなく、ユーザーの信頼を獲得できるかどうかにかかっています。健康という極めて個人的な領域において、テクノロジーがどこまで受け入れられるか、その境界線が試されることになるでしょう。

【用語解説】

Project Mulberry(プロジェクト・マルベリー):Appleが開発中のAIを活用した医師機能と健康アプリの大幅リニューアルプロジェクトのコードネーム。「マルベリー」は桑の実を意味し、健康や自然との関連を示唆している。

AIドクター:人工知能を活用して医療診断や健康アドバイスを提供するシステム。人間の医師の知識や判断を模倣し、健康データを分析して個別化された提案を行う。

Health+(ヘルス プラス):Project Mulberryの一環として開発中の新しい健康アプリの非公式名称。現行のApple「ヘルスケア」アプリを大幅に強化したもの。

【参考リンク】

Apple公式サイト(外部)Appleの製品・サービス情報、サポート、ニュースなどを提供する公式サイト。

Apple ヘルスケアアプリ(外部)現行のApple健康管理アプリ。健康データを一元管理し、視覚化する機能を提供している。

Bloomberg(外部)経済・金融情報を中心に、ニュース配信を行うグローバルメディア企業のサイト。

MyFitnessPal(外部)食事記録や栄養管理、運動記録などを行える人気の健康管理アプリ。

Noom(外部)心理学に基づいたアプローチで食事管理や体重管理をサポートするアプリ。

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乗杉 海
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