Last Updated on 2025-04-11 10:42 by admin
OpenAIは2025年4月10日(木)、ChatGPTの新しいメモリー機能を発表した。この機能により、ChatGPTはユーザーの過去のすべてのチャット内容を参照し、より個別化された応答を提供できるようになった。
主な特徴は以下の通りである
- ユーザーの好みや興味を活用し、文章作成、アドバイス、学習などをさらに役立つものにする。
- 会話の中で自然に拾い上げた詳細を活用し、例えばユーザーが野球ファンであることを把握すれば、それを応答に反映する。
- ユーザーは設定を通じて、過去のチャットの参照やメモリー機能全体をオプトアウトすることができる。
- ユーザーはChatGPTに何を記憶しているか尋ねることができ、一時的なチャットモードに切り替えて会話を保存しないこともできる。
- この機能は、ChatGPT PlusおよびProのユーザーに対して順次展開される。ただし、イギリス、EU、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスなどの一部の国は除外される。
- ChatGPT Team、Enterprise、Eduのユーザーは数週間後にこの新機能にアクセスできるようになる。
OpenAIのCEOであるSam Altmanは、この機能について「驚くほど素晴らしい機能だ」とコメントしている。
なお、ChatGPTは2022年11月の発表から2ヶ月で1億人のユーザーを獲得し、2025年4月1日時点で有料サブスクライバー数は約2,000万人に達している。これは2024年末の1,550万人から約30%増加したことになる。
from:ChatGPT can now remember everything you ever told it
【編集部解説】
ChatGPTの新しいメモリー機能は、AIパーソナライゼーションの領域に大きな進展をもたらすものです。この機能強化により、ChatGPTはユーザーとの過去のすべての会話を記憶し、より個人に合わせた応答ができるようになりました。
従来のメモリー機能では、ユーザーが明示的に「これを覚えておいて」と指示する必要がありましたが、今回のアップデートではそのプロセスが自動化されています。例えば、あるユーザーが野球ファンだとChatGPTが会話から理解すれば、将来の会話でもその文脈を活かした応答が可能になります。
この機能強化は、単なる便利さ以上の意味を持っています。OpenAIのCEOであるSam Altmanが述べているように、これは「あなたの人生を通じてあなたを知り、非常に便利でパーソナライズされたAIシステム」への第一歩なのです。AIが長期的な関係を通じてユーザーをより深く理解するという方向性は、AIの未来像を示唆しています。
プライバシーへの配慮も忘れていません。ユーザーは設定からメモリー機能を完全にオフにしたり、特定の記憶を管理したりすることができます。また、「一時的なチャット」モードを使用すれば、会話が保存されない状態でChatGPTを利用することも可能です。
興味深いのは、この機能がまず有料ユーザー(ChatGPT PlusとPro)向けに展開され、一部の地域(イギリス、EU諸国、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスなど)では規制上の理由から提供が遅れている点です。これは、AIの記憶機能が個人データの取り扱いに関する規制と密接に関連していることを示しています。
この技術の実用的な価値は非常に高いでしょう。例えば、長期的なプロジェクトの相談、学習支援、創作活動など、文脈の継続性が重要な用途では大きな効果を発揮します。ユーザーが同じ情報を何度も説明する必要がなくなり、より自然で効率的な対話が可能になります。
一方で、AIが私たちの情報をより多く記憶することへの懸念も存在します。プライバシーの問題だけでなく、AIが個人の好みや傾向を長期的に学習することで、情報のフィルターバブル化や偏った提案が強化される可能性もあります。
長期的には、この機能はAIとのインタラクションの本質を変える可能性を秘めています。一時的な質問応答ツールから、長期的な関係を構築するデジタルアシスタントへと、AIの役割が進化していくかもしれません。
ChatGPTの急速な成長(2ヶ月で1億ユーザー獲得、2025年4月時点で約2,000万人の有料ユーザー)を考えると、この新機能が多くのユーザーの日常に影響を与えることは間違いないでしょう。
テクノロジーの進化とともに、私たちはAIとの関係をどう構築していくか、そしてどのような情報をAIに委ねるかについて、より意識的に考える必要があるのかもしれません。
【用語解説】
OpenAI:
人工知能の研究と開発を行う企業。ChatGPTの開発元として有名。
ChatGPT:
OpenAIが開発した対話型AI。人間のような自然な会話ができる。
GPT(Generative Pre-trained Transformer):
大量のテキストデータから学習し、人間のような文章を生成できるAIモデル。
メモリ機能:
AIが過去の会話内容を記憶し、後の対話に活用する機能。人間との長期的な関係構築を可能にする。
AGI(Artificial General Intelligence):
人間のような汎用的な知能を持つAI。特定のタスクだけでなく、様々な課題に対応できる。
パーソナライゼーション:ユーザーの好みや行動に基づいて、サービスやコンテンツを個別に最適化する手法。
フィルターバブル:ユーザーの過去の行動や好みに基づいて情報が選別され、偏った情報しか受け取れなくなる現象。
オプトアウト:特定のサービスや機能の利用をユーザーが拒否する選択。
【参考リンク】
Sam Altman個人ブログ(外部)
OpenAIのCEO、Sam Altmanの個人ブログ。AI技術や未来社会についての洞察が書かれている。
【参考動画】
【編集部後記】
みなさんは、AIとの対話がどれだけ「自然」になったら理想的だと感じますか? 友人との会話のように、毎回同じ説明をしなくても文脈を理解してくれるAI。便利さの一方で、どこまで記憶してほしいかという線引きも考えさせられますね。ChatGPTの新機能を試してみたい方、あるいはプライバシーについて考えを巡らせたい方、ぜひSNSでご意見をシェアしてください。AIとの新しい関係性について、一緒に考えていきましょう。