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State Bar of California/Kaplan/ACS Ventures – AI生成問題導入で司法試験に混乱、信頼性と技術課題が浮上

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Last Updated on 2025-04-25 18:09 by admin

2025年2月にアメリカ・カリフォルニア州で実施された司法試験で、State Bar of California(カリフォルニア州弁護士会)はAIを活用した問題作成を導入した。全171問の多肢選択式問題のうち、23問は心理測定業者のACS VenturesがAIを用いて作成し、48問は法科大学院1年生向け試験から流用、残る100問は教育企業Kaplan Exam Servicesが新規に作成した。AIによる問題作成や流用問題の存在は、試験後に受験者からの苦情や疑問が相次いだことを受けて明らかになった。

試験はオンラインプラットフォームMeazure Learning上で実施されたが、システムのクラッシュやフリーズ、解答データのアップロード失敗などの技術的トラブルが多発し、多くの受験者が影響を受けた。これにより一部受験者は運営会社に対する集団訴訟を起こし、州議会も調査に乗り出している。

AI問題作成の検証も同じ業者が担当していたことや、カリフォルニア州最高裁判所がAI活用を事前に知らされていなかったことが判明し、専門家や法曹教育者からは「法実務に必要な能力を測るには不適切」との批判が出ている。これらの混乱を受け、カリフォルニア州弁護士会は2025年4月18日に合格基準の引き下げを決定し、最高裁判所に請願書を提出。今後は5月の会合で受験者への救済措置について再検討する予定である。

from:State Bar of California admits it used AI to develop exam questions, triggering new furor

【編集部解説】

今回のカリフォルニア州司法試験をめぐる混乱は、AI技術の導入が専門資格試験の現場にもたらす影響を改めて浮き彫りにしました。AIによる問題作成は、従来2年以上かかっていた作問プロセスを大幅に短縮し、コスト削減や効率化という観点では大きな前進です。しかし、AIが生成した問題の品質や適切性、そして検証プロセスの透明性については、依然として多くの課題が残っています。

特に注目すべきは、AI問題の作成と検証を同じ業者が担っていた点です。これは客観性や利害関係の観点から大きな問題を孕んでいます。また、カリフォルニア州最高裁判所がAIの活用について事前に知らされていなかったことも、ガバナンスや説明責任の観点から重大な指摘です。専門性が求められる司法試験において、非法律家がAIを用いて作成した問題が適切な能力評価につながるのかという疑問も根強く残っています。

さらに、試験実施のオンラインプラットフォームで発生したシステム障害は、受験者にとって大きなストレスとなり、試験の公平性や信頼性を損なう結果となりました。こうした技術的トラブルは、今後AIやデジタル技術を活用した資格試験が増加する中で、避けて通れない課題です。

一方で、AIの活用によって今後はより多様な問題作成や受験機会の拡大が期待できるのも事実です。重要なのは、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、人間の専門性や倫理観と組み合わせて活用するハイブリッドな運用体制を構築することです。今回の事例は、AI時代の資格試験や教育評価の在り方について、社会全体で議論を深めるきっかけになるでしょう。今後は、AI活用のガイドライン整備や第三者による検証体制の強化が不可欠です。

【用語解説】

心理測定業者(Psychometrician)
試験や評価の設計、分析、妥当性検証を専門とする業者や専門家。試験の公平性や信頼性を担保する役割を持つ。

【参考リンク】

カルフォルニア州弁護士会(State Bar of California)(外部)
カリフォルニア州の弁護士資格認定や規律、監督を行う公的機関。司法試験の運営や合格基準の決定も担う。

ACS Ventures, LLC(外部)
教育・資格試験分野で評価設計や運用、品質保証を行う心理測定業者。今回の司法試験ではAIを用いた問題作成と検証を担当した。

Kaplan(外部)
アメリカを拠点とする大手教育企業。各種資格試験や標準テストの対策コース、模擬試験、問題作成などを幅広く手がけている。

Meazure Learning(外部)
オンライン試験監督や試験運営プラットフォームを提供する企業。今回の司法試験のオンライン実施とシステム運用を担当した。

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りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
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