Last Updated on 2025-05-01 08:14 by admin
1973年、イギリス・エディンバラ大学のドナルド・ミチー率いる研究チームは、研究用ロボット「Freddy II(フレディ・ツー)」を開発した。
Freddy IIはカメラとピンサー型の手を持ち、無造作に積まれた部品から自律的に模型を組み立てることができた。
組み立てには1~2日間の学習・プログラミング後、約16時間かかった。1971年、英国科学研究会議(SRC)がAI研究の現状評価をケンブリッジ大学の数学者ジェームズ・ライトヒルに依頼し、1972年に「ライトヒル・レポート」が完成。
AI基礎研究(特にロボティクス分野)に対して悲観的な評価を下し、1973年5月9日のBBC公開討論を経て、英国政府はAI・ロボティクス分野への資金提供を大幅に削減した。
これにより英国のAI研究は「AI冬の時代」に突入し、約10年にわたり停滞した。Freddy IIは1980年に退役し、現在はスコットランド国立博物館に展示されている。
from:Freddy the Robot Was the Fall Guy for British AI
【編集部解説】
Freddy IIは1970年代初頭のロボティクスとAIの最先端を象徴する存在です。カメラによる物体認識、ピンサー型グリッパーによる操作、柔軟な再プログラム性など、現代の産業用ロボットや自律システムの基礎となる技術がすでに実装されていました。
当時の英国政府は短期的な成果を重視し、ライトヒル・レポートの影響で基礎研究への資金を大幅に削減しましたが、これは長期的なイノベーションの芽を摘む結果となりました。AI冬の時代でも、理論研究や一部の応用開発は欧米各地で続いており、のちのAI復興の土台となっています。
Freddy IIの歴史は、技術の本質的価値や基礎研究の重要性、そして社会や政策がどのように技術革新に影響を与えるかを考えるうえで、現代にも示唆を与えています。AIやロボティクスの進化が加速する今こそ、過去の「冬」から学ぶべき教訓が多いといえるでしょう。
【用語解説】
Freddy II(フレディ・ツー)
1973年にエディンバラ大学で開発された研究用ロボット。カメラとピンサー型グリッパーを持ち、部品の山から模型を自律組み立てできる。現代の産業ロボットの原型的存在。
エディンバラ大学(University of Edinburgh)
イギリス・スコットランドの名門大学。AI研究の世界的拠点であり、Freddyシリーズの開発母体。
ドナルド・ミチー(Donald Michie)
イギリスのAI研究者。Freddyプロジェクトのリーダーであり、英国AI研究の父と呼ばれる。
ジェームズ・ライトヒル(James Lighthill)
英国の数学者。1973年に「ライトヒル・レポート」でAI研究の進捗を批判し、英国AI冬の引き金を引いた。
ライトヒル・レポート(Lighthill Report)
1973年、英国科学研究会議(SRC)の依頼でライトヒルがまとめたAI研究の現状調査報告書。AI分野への資金削減を提言し、英国AI冬の直接的要因となった。
【関連リンク】
Freddy IIプロジェクト公式ページ(外部)
1970年代のFreddy IIロボットの概要・技術解説・論文情報を掲載。
エディンバラ大学・情報学部(外部)
AI研究・教育の世界的拠点。学科の歴史や研究内容も紹介。
National Museums Scotland Freddy II紹介ページ(外部)
Freddy IIの展示情報や歴史的意義について解説。
【参考動画】
【編集部後記】
AIやロボティクスの歴史には、期待と失望が繰り返し訪れてきた背景があります。もし当時の「AI冬」がなかったら、今の技術はどこまで進化していたのでしょうか?みなさんもぜひ、AIの未来や社会との関わりについて、ご自身の視点で考えてみてください。