vrClinicals for Nursing・Wolters Kluwer Healthが変える看護教育――AIとVRがもたらす人材育成の未来

2025年5月1日19:04

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Last Updated on 2025-05-01 19:04 by admin

2025年4月30日、Wolters Kluwer Healthのヘルスラーニング＆プラクティス事業部副社長ジュリー・ステグマンは、米国の看護教育が深刻な教員不足や臨床実習先の減少に直面している現状を指摘した。

米国保健資源事業局（HRSA）は、看護師不足が2037年まで続くと予測している。2024年には看護学士・修士・博士課程への進学者も減少傾向にある。ナイチンゲール財団の調査によれば、看護師の年間離職率は18.4％で、特に経験1年未満の新人看護師の離職率が高い。

こうした課題に対し、AI（人工知能）やVR（仮想現実）を活用した没入型シミュレーション教育の導入が進んでいる。全米州看護委員会（NCSBN）の調査では、専任教員による高品質なシミュレーション教育が従来の臨床実習時間の最大50％を代替できるとされている。

Wolters Kluwer HealthとLaerdal Medicalが共同開発した「vrClinicals for Nursing」は、ヴィラノバ大学、カンザス大学、ロチェスター大学などで導入され、学生は複数患者のシナリオを体験しながら意思決定力を養っている。新人看護師の55％が医療ミスを経験している現状を踏まえ、VRとAIによる実践的なトレーニングの重要性が高まっている。

今後は、AIとVRのさらなる統合による個別最適化学習やAIによるフィードバック、高度な仮想環境などが看護教育に普及し、現場力向上と人材不足解消に寄与する見通しである。

from:How Immersive Technology is Reshaping Nursing Education Amid Critical Shortages

【編集部解説】

看護教育の現場では、従来の講義中心型教育だけでは現場で即戦力となる人材の育成が難しくなってきている。米国では臨床実習の機会が減少し、学生の実践力や自信不足が課題となっている。こうした背景から、AIやVRを活用したシミュレーション教育が注目されている。これにより、現実に近い多様な症例や緊急対応を安全な環境で反復練習できるようになった。

「vrClinicals for Nursing」は、複数患者の同時対応や優先順位付け、患者コミュニケーションなど、現場で求められる判断力やスキルを標準化されたシナリオで鍛えることができる。海外の業界レポートでも、VR導入による「学習体験の向上」「理論と実践のギャップ解消」「反復練習によるスキル定着」「コスト削減」などの効果が報告されている。2025年現在、米国の看護教育現場ではオンラインやハイブリッド型の学習も一般化し、リアルな現場対応力を重視する流れが加速している。

一方で、VR機材やソフトウェア導入の初期コスト、インターネット環境やデバイスの整備、教員側のITリテラシー格差、評価指標の標準化不足などの課題もある。また、バーチャル環境での学習が現実の患者対応にどこまで直結するか、長期的な効果検証も今後の課題である。

規制面では、米国の一部州でVRシミュレーションを臨床実習時間の一部として正式に認める動きが進んでいるが、全米一律ではない。今後は教育認証や国家資格試験との連動、データプライバシーや倫理面の議論も重要となる。

長期的には、AIとVRの融合は看護教育だけでなく、医療全体の人材育成や地域医療格差の是正、医療の質向上にもつながる可能性がある。教育現場・医療現場・規制当局・テクノロジー企業が連携し、持続可能な人材育成エコシステムを構築することが今後の焦点となるだろう。