Last Updated on 2025-05-15 15:53 by admin

Poeが2025年5月13日に発表した最新の利用状況レポートによると、OpenAIとGoogleが主要なAIカテゴリーでの地位を強化する一方、Anthropicは市場シェアを失っている。また、専門的な推論モデルが2025年初頭から約2%から10%へと急増し、新たな競争分野として浮上している。

Poeは100以上のAIモデルにアクセスを提供するプラットフォームで、このレポートは2025年1月から5月までの期間を分析している。Quoraの AIcosystem Leadによれば、2024年の同時期と比較して、2025年の新モデルリリース数は3倍に増加したという。

テキスト生成分野では、OpenAIのGPT-4oが35.5%のシェアで首位を維持し、新しいGPT-4.1ファミリーも発売後すぐに9.4%のシェアを獲得した。GoogleのGemini 2.5 Proも約5%のシェアを達成している。一方、Anthropicは分析期間中に約10%のシェア減少を経験した。

推論モデル分野では、Gemini 2.5 Proが急速に約31%のシェアを獲得し、Claudeの推論特化モデルを上回った。OpenAIも2025年の最初の4ヶ月間に複数の推論モデル（o1、o2、o-mini-high、o3、o4-mini）を発表している。

画像生成分野では、Googleのモデルが約10%から30%へとシェアを拡大し、現在のリーダーであるBlack Forest LabsのFLUXモデル（約35%）に迫っている。OpenAIのGPT-4-1も短期間で17%のシェアを獲得した。

ビデオ生成分野では、中国のKuaishou（快手）が開発したKlingファミリーのモデルが急速に約30%のシェアを獲得した。特にKling-2.0-Masterは発売からわずか3週間で21%のシェアを達成している。GoogleのVeo 2は約20%のシェアを維持している一方、従来のリーダーであるRunwayは約60%から20%へとシェアを急落させた。

オーディオ生成市場ではElevenLabsが約80%という圧倒的なシェアを維持している。

業界アナリストによれば、推論能力へのシフトはAI市場の成熟を示しており、基本的なテキスト生成がコモディティ化する中で、プロバイダーは高付加価値機能で差別化を図る必要に迫られているという。

References:
AI power rankings upended: OpenAI, Google rise as Anthropic falls, Poe report finds

【編集部解説】

Poeが発表した最新レポートは、2025年前半のAI市場に起きている大きな変動を明らかにしています。このデータは単なる市場シェアの変化を超えて、AIテクノロジーの進化の方向性と企業戦略の転換点を示しています。

特に注目すべきは「推論モデル」の急成長です。Sambanovaのブログによれば、2025年は推論（インファレンス）がAIモデルのトレーニングを上回る年になると予測されていました。実際にPoeのデータはこの予測が現実になりつつあることを示しています。推論モデルの利用率が2%から10%へと急増したことは、単なる流行ではなく、AIの実用性が新たな段階に入ったことの証左と言えるでしょう。

基本的なテキスト生成が当たり前になる中で、より複雑な思考プロセスを模倣できる推論能力こそが、次世代AIの差別化ポイントになっています。企業ユーザーが処理時間やコストの増加を受け入れてでも、より精度の高い結果を求めているという事実は、AI活用の成熟度が高まっていることを示しています。

OpenAIの動向については、GPT-4.1シリーズの展開と並行して、推論モデル（o1、o2、o3など）の開発も積極的に進めています。業界情報によれば、OpenAIは2025年後半から2026年初頭にかけてGPT-5のリリースを計画しており、より高度なマルチモーダル機能と拡張されたコンテキストメモリにより、より流動的で直感的、かつパーソナライズされた体験が可能になると期待されています。

Anthropicについては、市場シェアの減少が報告されていますが、2025年中に画期的な大規模モデルをリリースし、OpenAIの最高の推論モデルに挑戦すると予想されています。Anthropicは着実に成長を続けており、今後の巻き返しに注目が集まります。

マルチモーダル化の加速も見逃せません。テキスト、画像、ビデオ、音声の各分野で競争が激化し、それぞれが独自の発展を遂げています。特に中国のKuaishou（快手）が開発したKlingモデルがビデオ生成で急速にシェアを獲得した例は注目に値します。Klingの急速な成長は、AI開発の国際競争が一層激化していることを示しています。

この急速な成長は、AI開発の国際競争が一層激化していることを示しています。特に中国企業の台頭は、従来の欧米中心のAI開発構図に変化をもたらしています。

企業にとっては、単一のAIプロバイダーに依存するリスクが明確になっています。「今月のリーダーが来月には2位に落ちる」という状況下では、柔軟性を持ったAI戦略が不可欠です。多くの企業が採用し始めている「ポートフォリオ戦略」は、この変動性に対応するための賢明なアプローチと言えるでしょう。

また、業界レポートによれば、GPUの独占状態にも変化が見られます。2025年後半までにNVIDIAの市場シェアが減少する可能性があるとされています。これは、推論ワークロードに特化した電力効率の高い代替ハードウェアへの需要が高まっていることを反映しています。

このレポートは、AI市場が「技術デモンストレーション」の段階から「実用的価値創出」の段階へと移行していることを示しています。今後は単純な性能向上だけでなく、特定のユースケースにおける実質的な価値提供が、AIプロバイダーの成功を左右するでしょう。

私たちinnovaTopiaの読者の皆さんにとって、この変化は大きなチャンスを意味します。特に推論モデルの台頭は、より複雑な問題解決や意思決定支援が可能になることを示しています。一方で、急速に変化する市場においては、特定のプロバイダーに依存せず、柔軟にテクノロジーを選択・組み合わせる姿勢が重要になるでしょう。

今後も私たちは、AI技術の最新動向を追い続け、皆さんのビジネスや生活に役立つ洞察をお届けしていきます。

【用語解説】

OpenAI：
2015年に設立された米国のAI研究企業。ChatGPTやGPT-4などの大規模言語モデルを開発している。「汎用人工知能（AGI）が全人類に利益をもたらすようにする」ことを使命としている。

Google：
検索エンジン大手で、AI分野ではGeminiシリーズを開発。テキスト、画像、音声、動画などのマルチモーダル機能に強みを持つ。

Anthropic：
2021年にOpenAIの元従業員が設立したAI企業。Claude AIを開発し、安全で倫理的なAIの研究に重点を置いている。Amazon、Googleから大規模な投資を受けている。

Poe：
Quoraが開発したAIチャットプラットフォーム。OpenAI、Google、Anthropicなど複数のAIモデルに一つのインターフェースからアクセスできる。

Kuaishou（快手）：
中国のショートビデオプラットフォーム企業。AI技術を活用したビデオ生成モデル「Kling」を開発している。TikTokの競合として知られる。

Black Forest Labs：
画像生成AIの「FLUX」モデルを開発する企業。高品質な画像生成で急速にシェアを拡大している。

Runway：
AIビデオ生成技術のパイオニア企業。Gen-1、Gen-2などのモデルを開発し、映像制作ワークフローの革新を目指している。

ElevenLabs：
AIによる高品質な音声合成技術を提供する企業。自然で感情豊かな音声生成に強みを持つ。

大規模言語モデル（LLM）：
膨大なテキストデータから学習し、人間のような文章を生成できるAIモデル。GPT、Claude、Geminiなどが該当する。

推論モデル：
単純なテキスト生成を超えて、複雑な思考プロセスを模倣し、論理的な推論や問題解決を行うAIモデル。複数のステップを経た思考や分析が必要な場合に特に有効である。

マルチモーダル：
テキスト、画像、音声、動画など複数の形式（モード）の情報を理解・処理・生成できる能力。例えば、画像を見て質問に答えたり、音声を聞いてテキストで応答したりできる。

インファレンス：
AIモデルが学習後に実際のタスクを実行する過程。トレーニング（学習）が「知識を得る」過程なら、インファレンスは「得た知識を使って問題を解く」過程と言える。

ポートフォリオ戦略：
複数のAIモデルやプロバイダーを目的に応じて使い分ける戦略。単一のプロバイダーに依存するリスクを分散し、各タスクに最適なモデルを選択できる柔軟性を確保する。

【参考リンク】

OpenAI（外部）
ChatGPTやGPT-4oなどの先進的なAIモデルを開発する企業のウェブサイト

Google AI（外部）
Geminiなどのマルチモーダルモデルを開発するGoogleのAI部門サイト

Anthropic（外部）
Claude AIを開発する企業のウェブサイト

Poe（外部）
複数のAIモデルに一つのインターフェースからアクセスできるプラットフォーム

Runway（外部）
AIビデオ生成技術を提供する企業のウェブサイト

ElevenLabs（外部）
高品質なAI音声合成技術を提供する企業のウェブサイト

【参考動画】

【編集部後記】

AI市場の勢力図が急速に変化する中、皆さんのビジネスや日常生活ではどのAIツールを活用されていますか？ OpenAIのGPT-4o、GoogleのGemini、それともAnthropicのClaude？ 特に推論モデルの台頭は、より複雑な問題解決や意思決定支援を可能にします。一つのプロバイダーに依存せず、複数のAIを目的に応じて使い分ける「ポートフォリオ戦略」も検討してみてはいかがでしょうか。皆さんのAI活用体験やこれからチャレンジしたいことをぜひSNSでシェアしてください。

【関連記事】

AI(人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む