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ーTech for Human Evolutionー

World ID、日本初の事業説明会開催 – AI時代の「人間証明」が本格始動、GUGAとの新パートナーシップも発表

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-15 19:01 by admin

虹彩の奥に秘められた人間性の証明—生成AIが浸透した2025年、「人間」と「機械」の境界線が曖昧になる中、OpenAIの共同創設者サム・アルトマン率いるTools for Humanityが次なる革命を日本に持ち込んだ。5月15日東京で初開催された「World」プロジェクト説明会では、プライバシーを守りながら「人間であること」を証明する虹彩認証システム「Orb」が注目を集めた。デジタル世界の信頼インフラを再構築するこの野心的構想は、AI時代における人間性の本質的価値に新たな光を投げかけている。


World プロジェクトを推進するグローバル・テクノロジー企業Tools for Humanityは、2025年5月15日に日本初となるメディア向け事業説明会および関係者交流イベントを開催した。

イベントでは、Tools for Humanity日本代表の牧野友衛によるプレゼンテーション、株式会社デジライズ代表取締役の茶圓将裕氏を迎えたパネルディスカッション、World IDを認証する最先端デバイス「Orb」の体験会が行われた。

牧野はプレゼンテーションで、Worldプロジェクトの原点と理念を説明し、「人間」と「AI」をオンライン上で区別できるインフラの重要性を解説した。World IDはプライバシーや匿名性を損なうことなく、人間とAI・ボットの区別を可能にするものであり、セキュリティ面でも安全な設計原則に基づいて構築されていると説明した。

パネルディスカッションでは、「生成AIによる”なりすまし”リスク」「革新技術と個人情報のせめぎ合い」「AIと人間の共存」について議論が交わされた。

また、Tools for Humanityは生成AI活用普及協会(GUGA)への加入を発表。今後、GUGAと連携し、生成AIの普及啓発活動やGUGA会員企業とのパートナーシップを推進していく予定である。

日本における今後の事業展開として、以下の取り組みが発表された:

1. 戦略的パートナーシップの強化– 2024年10月に博報堂との提携を発表し、「World ID」の国内認知拡大と導入実証を推進- 株式会社P-UP Worldと連携し、全国11店舗でOrb認証拠点としての役割を展開- 2025年5月16日より、バロックジャパンリミテッドとの試験的な取り組みを開始し、「The SHEL’TTER TOKYO 東急プラザ表参道『オモカド』店」にOrbを設置

2. World IDの利用ケースの創出– 2024年11月にWeb3ゲームプロジェクト「TOKYO BEAST」との連携を開始- Match Groupとのグローバル提携の一環として、日本のTinderとのWorld ID連携を予定

Worldは、AI時代のために構築された「人間性の証明(Proof of Personhood)」プロトコルであり、OpenAIの共同創設者サム・アルトマン氏らによって共同設立されたプロジェクトである。

References:
文献リンクTools for Humanity、「World」プロジェクト日本初の事業説明会を開催

【編集部解説】

AI時代における「人間性の証明」という新たな価値提案が日本でも本格始動しました。OpenAIのサム・アルトマン氏らが共同設立したWorldプロジェクトが日本市場での展開を加速させています。

今回の事業説明会は、単なる技術紹介にとどまらず、急速に発展するAI社会における「人間」の存在証明という根本的な課題に対するソリューション提案でもありました。

虹彩認証が拓く新たな可能性
World IDの核となる技術は「Orb」と呼ばれる虹彩認証デバイスです。このデバイスは人間の虹彩パターンをスキャンし、固有の「IrisCode」を生成します。重要なのは、このプロセスでプライバシーが保護される点です。

「生体情報を提供することへの抵抗感」は確かに存在しますが、World Networkは独自のAnonymized Multi-Party Computation(AMPC)技術を採用しています。この技術により、虹彩コードは分割され、分散・匿名化された形で管理されます。また、認証後は虹彩コード自体ではなくWorld IDのみが使用されるため、セキュリティ面での懸念に対応しています。

グローバルでの受容と規制の動向
Worldプロジェクトは世界各国で展開されていますが、その受け入れは一様ではありません。2024年12月にはドイツの規制当局がプライバシー懸念からWorldcoinに対して制限を課し、不法に収集された生体認証データの削除を命じました。同様に、韓国でも個人情報保護委員会が2024年9月に制裁金を科しています。

こうした規制上の課題は、新技術導入における避けられない過程とも言えますが、日本での展開においても注視すべき点でしょう。

日本市場での戦略的展開
日本では2023年12月から博報堂との協力のもと実証実験が行われてきました。当時の発表によれば、世界で約600万人がWorld IDを認証していましたが、現在ではその数が大幅に増加していると考えられます。

今回発表された戦略的パートナーシップの拡大は、日本社会へのWorld ID浸透を加速させるでしょう。特に注目すべきは、デジタルショップ「テルル」やアパレル企業「バロックジャパンリミテッド」との提携です。これにより、幅広い層、特に若年女性層へのリーチが期待できます。

AI時代の新たな信頼基盤
World IDが提供するのは、単なる認証システムではなく、AI時代における「信頼のインフラ」です。生成AIの発展により、オンライン上での「なりすまし」や「偽情報」のリスクが高まる中、「人間であること」を証明する仕組みの重要性は増しています。

マッチングアプリTinderとの連携は、その実用的な一例です。オンラインデートにおける「本物の人間」との出会いを保証することで、プラットフォームの信頼性向上に貢献します。

プライバシーとセキュリティのバランス
World IDの設計思想で特筆すべきは「プライバシー・バイ・デザイン」の姿勢です。「誰であるか」ではなく「人間であるか」のみを証明するというアプローチは、個人情報保護の観点から評価できます。

しかし、生体認証技術の活用には常にリスクが伴います。特に懸念されるのは、アカウント売買などの不正利用や、物理的なOrbデバイスへのアクセシビリティの問題です。これらの課題に対する継続的な取り組みが、プロジェクトの長期的な成功を左右するでしょう。

今後の展望と社会的インパクト
AIと人間の共存という大きなテーマに対するWorldの取り組みは、単なる技術革新を超えた社会的意義を持ちます。「人間性の証明」という新たな価値基準は、デジタル社会における信頼構築の新たなパラダイムとなる可能性を秘めています。

今後は、World IDの普及に伴い、オンラインサービスやコミュニティにおける信頼性向上、AI生成コンテンツとの差別化、さらには新たな経済圏の創出など、多様な展開が期待されます。

私たちinnovaTopiaは、このような人間中心の技術革新が、テクノロジーと人間の健全な関係構築にどのように貢献していくのか、引き続き注目していきます。

【用語解説】

World ID
AI時代のための「人間性の証明」プロトコル。個人情報を開示することなく、オンライン上で「自分が人間である」ことを証明できる仕組みである。

Orb
World IDを認証するための虹彩スキャンデバイス。人間の虹彩パターンをスキャンし、その人が唯一の人間であることを匿名で検証する。

生成AI活用普及協会(GUGA)
生成AIの社会実装を通じて産業の再構築を目指す国内有数の生成AIプラットフォーム。生成AIインフラの企画・提供を推進している。

Tools for Humanity
2019年にAlex Blania(CEO)とSam Altman(会長)によって設立されたテクノロジー企業。AIの時代に人間のためのツールを構築している。サンフランシスコとドイツのミュンヘンに本社を置く。

AMPC(Anonymized Multi-Party Computation)
匿名化された複数関係者間計算技術。データを分散管理することで、プライバシーを保護しながら計算処理を可能にする技術である。

【参考リンク】

Tools for Humanity(外部)AI時代に人間のためのツールを構築するテクノロジー企業。400人以上の開発者、科学者、エンジニアなどが所属している。

World ID by World(外部)World IDの公式サイト。プライバシーを保護しながら、オンライン上で人間であることを証明するサービスについて説明している。

生成AI活用普及協会(GUGA)(外部)生成AIの社会実装を通じて産業の再構築を目指す日本の団体。生成AIパスポートや人材認定カードなどの取り組みを行っている。

【関連動画】

Orbを使用した認証プロセスを実演している動画。2025年5月3日に公開された最新の解説動画である。

World ID 2.0の機能や特徴について説明している動画。

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乗杉 海
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