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TAKE IT DOWN Act:トランプ大統領がリベンジポルノ・ディープフェイク対策法に署名、48時間以内の削除義務化へ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-20 12:10 by admin

ドナルド・トランプ米大統領は2025年5月19日(月)、ホワイトハウスのローズガーデンで「TAKE IT DOWN Act(削除法)」に署名した。この法律は、リベンジポルノやAIで生成されたディープフェイクなどの「親密な画像」を被写体の同意なくオンラインに投稿することを犯罪とするものである。

この法案は、テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)とエイミー・クロブチャー上院議員(民主党・ミネソタ州)が共同で提出した超党派の法案で、2025年2月に上院で全会一致で可決され、4月末には下院で409対2という圧倒的多数で承認された。

法律の主な内容は以下の通りである:

  • 本物であれAIで生成されたものであれ、被写体の同意なく「親密な画像」をオンラインに投稿することを禁止
  • 違反者には最大3年の懲役刑を含む刑事罰を科す
  • ソーシャルメディア企業などのプラットフォームに対し、被害者からの通知後48時間以内にそのような素材を削除することを義務付ける
  • 連邦取引委員会(FTC)に執行権限を付与

メラニア・トランプ大統領夫人はこの法案の強力な支持者であり、3月3日に開催された円卓会議で初めての単独公開イベントを利用して議会に法案の承認を促した。署名式にも出席し、「子どもたちの尊厳、プライバシー、安全を守るために私たちが団結するという力強い宣言になった」と述べた。

Meta、TikTok、Googleを含む多くのテクノロジー企業がこの法案を支持している一方、電子フロンティア財団(EFF)やインターネット協会などのデジタル権利団体は、この法律が表現の自由を制限し、合法的なコンテンツの抑圧につながる可能性があると懸念を表明している。

この法律は、特にAI技術の発展により、有名人や一般人を標的としたディープフェイクポルノの作成と拡散が急増していることへの対応策となる。クルーズ上院議員によると、法案提出の動機の一つは、14歳の少女エリストン・ベリーさんに関するAI生成のディープフェイク画像をSnapchatが削除するまでに1年かかったケースがあったことだという。

References:
 - innovaTopia - (イノベトピア)Melania Trump says new revenge porn law will protect children online

【編集部解説】

「TAKE IT DOWN Act」の成立は、デジタル時代のプライバシー保護と表現の自由のバランスを問う重要な転換点です。

この法律の背景には、生成AI技術の急速な発展があります。ディープフェイク技術により、誰でも簡単に他人の顔を別の映像に合成できるようになり、悪用事例が急増していました。

注目すべきは、共和党のクルーズ議員と民主党のクロブチャー議員が共同提出し、上院では全会一致、下院でも409対2という圧倒的多数で可決された点です。現在の分断された米国政治では稀有な合意形成といえるでしょう。

メラニア・トランプ大統領夫人の役割も重要です。彼女は夫の2期目就任後、初の単独公開イベントでこの法案を支持し、「Be Best」イニシアチブの一環として子どものオンライン保護を推進しました。

Meta、Google、Microsoftなど大手IT企業は法案を支持していますが、これは企業イメージ向上だけでなく、明確なルールができることで運営指針が定まるメリットもあるためです。

一方、電子フロンティア財団などのデジタル権利団体は、48時間以内の削除義務が過剰な検閲を促し、合法的なコンテンツまで削除される恐れがあると懸念しています。

日本との比較では、日本でも2014年に「リベンジポルノ防止法」が施行されていますが、AI生成コンテンツへの明確な対応はまだありません。米国の新法は、実在の画像だけでなくAI生成の偽画像も対象としている点で先進的です。

この法律は、テクノロジーの発展に法規制が追いつこうとする動きを示しています。今後は、表現の自由との兼ね合いや国境を越えた執行可能性など、実効性と副作用を注視する必要があるでしょう。

【用語解説】

リベンジポルノ
元交際相手や配偶者との親密な画像・動画を、復讐や嫌がらせ目的で本人の同意なくインターネット上に公開する行為である。日本では2014年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)」が施行された。

ディープフェイク
ディープラーニング技術を使って、人物の顔や声を別の映像や音声に合成し、本物そっくりの偽映像・音声を作成する技術である。スマートフォンアプリなどで誰でも簡単に作成できるようになっている。

TAKE IT DOWN Act(削除法)
正式名称は「Tools to Address Known Exploitation by Immobilizing Technological Deepfakes On Websites and Networks Act」の頭文字を取ったもので、米国で2025年5月19日に成立した法律。リベンジポルノやAIで生成されたディープフェイクなどの「親密な画像」を被写体の同意なく投稿することを犯罪とし、プラットフォーム企業に48時間以内の削除を義務付ける。

電子フロンティア財団(EFF)
1990年に設立された米国の非営利組織で、デジタル社会における表現の自由やプライバシー権の擁護を目的としている。テクノロジーに関わる法的問題について活動している。

インターネットソサエティ(ISOC)
1992年に設立された国際的非営利組織で、インターネットの技術標準や教育、政策に関するリーダーシップを提供している。インターネットの発展と健全な利用を促進する活動を行っている。

通信品位法230条(Section 230)
米国の法律で、インターネットプラットフォームをユーザーが投稿したコンテンツに対する法的責任から保護している。SNSなどのプラットフォームが発展した法的基盤となっている。

【参考リンク】

Meta(旧Facebook)(外部)
世界最大のソーシャルメディア企業。Facebook、Instagram、WhatsAppなどのプラットフォームを運営している。

TikTok(外部)
ByteDance社が運営するショートムービープラットフォーム。世界中で10億人以上のユーザーを持つ。

Google(外部)
検索エンジン、クラウドサービス、OSなど多様なサービスを提供する世界最大のテクノロジー企業の一つ。

電子フロンティア財団(EFF)(外部)
デジタル権利を守るための非営利団体。オンラインプライバシーと表現の自由を擁護している。

インターネットソサエティ(ISOC)(外部)
インターネットの開放性、透明性、定義されたプロセスに基づく標準化を推進する国際非営利組織。

RAINN(Rape, Abuse & Incest National Network)(外部)
米国最大の性暴力防止団体。TAKE IT DOWN Actを強く支持し、被害者支援のリソースを提供している。

米国議会(TAKE IT DOWN Act法案ページ)(外部)
法案の全文や審議経過を確認できる公式ページ。

【参考動画】

Take It Down Actの進展と危険性について解説している動画。

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アリス
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