innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

Take It Down Act|Meta・Googleも対応へ – 米国がAIディープフェイクとリベンジポルノ規制を強化

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-30 15:05 by admin

2025年4月28日、アメリカ合衆国下院は「Take It Down Act(テイク・イット・ダウン法)」を圧倒的多数(409対2)で可決した。この法案は、AIによって生成されたディープフェイクやリベンジポルノなど、本人の同意なく公開された性的画像や動画の拡散を規制するものである。

オンラインプラットフォーム事業者は、被害者からの通報を受けてから48時間以内に該当コンテンツを削除する義務を負う。また、こうした画像や動画の作成・配布を連邦犯罪とし、違反者は刑事訴追の対象となる。法案はすでに2025年2月に上院を全会一致で通過しており、今後はドナルド・トランプ大統領の署名を経て成立する見通しである。

この法案の成立には、ファーストレディのメラニア・トランプが「Be Best」イニシアチブの一環として積極的に関与し、議会への働きかけや被害者の支援活動を行った。法案のきっかけとなったのは、テキサス州の14歳の少女がクラスメートによってAIで偽造されたヌード画像を作成され、SNSに投稿された事件である。

被害者には著名人や高校生など幅広い層が含まれ、特に若年層の女性が多いとされている。今回の法案は、2018年以来となる米議会によるインターネット上の有害コンテンツ規制の大きな動きであり、今後のプラットフォーム運営やデジタル社会に大きな影響を与えるとみられる。

from:Congress passes bill to fight deepfake nudes, revenge porn

【編集部解説】

今回の「Take It Down Act」成立は、AI技術の進化がもたらす新たな社会課題に対し、米国が迅速に法整備を進めた象徴的な出来事です。従来のリベンジポルノ規制は、実際に撮影された画像や動画の流通が主な対象でした。

しかし、ディープフェイク技術の普及によって、現実には存在しない偽造画像が容易に作成され、被害が急増しています。今回の法案は、こうしたAI生成コンテンツも明確に規制対象とし、本人の同意がない限り、性的な画像や動画の公開・拡散を厳しく禁じる内容となっています。

48時間以内にプラットフォームが違法コンテンツを削除する義務を負う点は、技術的にも運用面でも大きなチャレンジです。MetaやGoogleなどの大手プラットフォームも対応を表明していますが、専門家によれば現状のAI検知技術の精度には限界があり、誤検知や削除漏れのリスクも指摘されています。それでも、こうした法的枠組みが整うことで、プラットフォーム側の技術開発や運営体制の強化が促進されることは間違いありません。

また、表現の自由とのバランスも重要な論点です。デジタル権利団体などからは、芸術や風刺など正当な表現活動への影響を懸念する声も上がっています。しかし、今回の法案では規制対象を「性的なディープフェイク画像や動画」に限定しており、政治的な風刺やパロディなどは対象外とされています。今後も社会的議論を重ねながら、適切な線引きが求められるでしょう。

この動きは、アメリカ国内だけでなく、世界の法制度にも大きな影響を与える可能性があります。EUではデジタルサービス法(DSA)がすでに施行されていますが、米国のように刑事罰を伴う規制は導入されていません。日本でもリベンジポルノ対策の法整備は進んでいますが、AI生成コンテンツへの対応は十分とは言えません。今後、国際的なルール作りや各国の法制度のアップデートが加速することが予想されます。

【用語解説】

ディープフェイク
AI技術を用いて実在人物の顔や体を合成し、偽の画像や動画を作成する手法。近年は悪用事例が増加し、法規制の対象となっている。

リベンジポルノ
元交際相手や配偶者などが、同意なく性的な画像や動画をネット上で公開する行為。各国で法規制が進むが、AI生成コンテンツへの対応は課題となっている。

【参考リンク】

Take It Down Act法案(外部)
2025年に米議会で可決された、AI生成を含む非合意的な性的画像や動画の拡散を規制する連邦法。被害者からの通報を受けたプラットフォーム事業者に対し、48時間以内の削除を義務付けている。法案全文や審議経過を確認できる。

Be Best Initiative(外部)
米国の元ファーストレディ、メラニア・トランプが推進する青少年のネット安全やいじめ防止を目的とした啓発活動。

Center for Democracy & Technology(外部)
米国のデジタル権利団体。今回の法案について表現の自由への影響を懸念する意見を表明している。

【関連記事】

AI(人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

テクノロジーと社会ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
ホーム » AI(人工知能) » AI(人工知能)ニュース » Take It Down Act|Meta・Googleも対応へ – 米国がAIディープフェイクとリベンジポルノ規制を強化