Last Updated on 2025-05-30 17:48 by admin
AI検索エンジンのPerplexityが5月29日(現地時間、日本時間5月30日)に、Pro会員向けの新機能「Perplexity Labs」を発表した。
この機能により、ユーザーはスプレッドシート、ダッシュボード、レポート、インタラクティブなWebアプリケーションなどの複雑な成果物を生成できるようになる。
Perplexity Labsは月額20ドルのProプラン加入者を対象とした機能として提供される。この新しいツールは従来の検索機能を大幅に拡張し、10分以上の時間をかけて詳細なレポートやデータ可視化、ミニアプリケーションの生成などを行うことが可能である。現在はWeb版、iOS版、Android版で利用可能であり、近日中にMacおよびWindows向けのアプリケーションでも提供予定である。
Perplexity Labsの主要機能には、Web検索、コードの実行、グラフ・画像生成などが含まれる。これらの機能を活用して調査分析やインタラクティブなWebアプリ、コードを用いたデータ処理やドキュメントの作成が可能となる。生成されたすべてのファイルは専用の「Assets」タブで整理され、簡単に閲覧・ダウンロードができる仕組みとなっている。
from: Introducing Perplexity Labs | Perplexity AI
【編集部解説】
Perplexity Labsの発表は、AI検索エンジンが単なる情報検索ツールから包括的なワークプラットフォームへと進化する重要な転換点を示しています。この新機能により、従来の検索結果を表示するだけの機能から、実際に成果物を生成する生産性ツールへと大きく変貌を遂げました。
特に注目すべきは、10分以上の長時間処理を可能にした点です。従来のAI検索では瞬時の回答が重視されていましたが、Perplexity Labsは複雑なプロジェクトに必要な時間的余裕を確保することで、より実用的なビジネスツールとしての地位を確立しようとしています。
この機能の技術的な革新性は、Webスクレイピング、コード実行、データ可視化、ファイル生成といった複数の機能を統合した点にあります。これまでユーザーは複数のツールを使い分ける必要がありましたが、Perplexity Labsは一つのプラットフォームでワークフローを完結できる環境を提供しています。
ビジネス戦略の観点から見ると、この展開は同社の収益多様化への取り組みとして理解できます。月額20ドルのPro会員限定機能とすることで、従来の広告収入モデルからサブスクリプション収入への転換を図っています。2025年3月時点で年間約1億ドルのARRを達成し、現在進行中の5億ドル資金調達と140億ドル企業価値評価の背景には、こうした収益基盤の強化があります。
一方で、この機能拡張にはいくつかの課題も存在します。生成されるコンテンツの品質管理は重要な問題で、AIが自動生成するスプレッドシートやレポートの精度については継続的な検証が必要です。特に企業の意思決定に関わる重要なデータを扱う場合、人間による最終確認は不可欠でしょう。
競合他社への影響も見逃せません。ChatGPT、Claude、Geminiといった既存のAIプラットフォームは、これまで汎用的な対話型AIとして発展してきましたが、Perplexity Labsの登場により、より具体的な成果物生成に特化した機能開発が求められる可能性があります。
プライバシーとセキュリティの観点では、同社が開発中のCometブラウザとの連携が注目されます。ブラウザレベルでの包括的なデータ収集能力と、Labs機能による高度な分析処理の組み合わせは、ユーザーの行動パターンをより詳細に把握できる一方で、データプライバシーに関する新たな議論を呼ぶ可能性があります。
長期的な視点では、この動きはAI業界全体の成熟化を示唆しています。単純な質問応答から実用的なビジネスツールへの進化は、AI技術の実用化段階が新たなフェーズに入ったことを意味します。今後は、より専門性の高い業界特化型AIツールの開発が加速する可能性が高いでしょう。
規制面では、生成されるコンテンツの著作権や責任の所在について新たな議論が必要になります。特に、Web上の情報を基に自動生成されるレポートやダッシュボードについて、元となる情報源への適切な帰属表示や使用許諾の問題は今後重要な課題となるでしょう。
【編集部追記】
編集部の乗杉が実際にLabsを使用してうっかりさん向けに特化したTodoアプリを作成しました。このクォリティのWebアプリが自然言語でのプロンプト入力だけで作れるのは驚きです。しかもわずか10分で作ることができました!
こちら↓のURLから実際に使用することが出来ます。皆さんも実際になにか作ってみてはどうでしょうか。

【用語解説】
Perplexity Labs:Perplexityが2025年5月29日に発表したPro会員向けの新機能。従来の検索機能を拡張し、スプレッドシート、ダッシュボード、レポート、インタラクティブWebアプリケーションなどの複雑な成果物を10分以上かけて生成できる。
ARR(Annual Recurring Revenue):年間経常収益。サブスクリプションビジネスにおける重要な指標で、1年間で継続的に得られる収益を示す。Perplexityは2025年3月時点で約1億ドルのARRを達成している。
エージェント検索:AIが単に情報を検索するだけでなく、複雑な指示を理解し、タスクを実行し、自律的に判断を行う次世代の検索概念。Perplexityが開発中のCometブラウザの中核技術として位置づけられている。
Assetsタブ:Perplexity Labsで生成されたファイル、コード、画像、チャートなどの成果物を整理・管理する専用インターフェース。ユーザーが簡単にアクセスやダウンロードを行える。
企業価値評価(バリュエーション):投資家が企業に対して付ける価値の評価額。Perplexityは2024年12月時点で90億ドル、2025年5月時点で140億ドルの評価を受けている。
【参考リンク】
Perplexity AI公式サイト(外部)AI検索エンジンPerplexityの公式サイト。無料版と有料版のサービス詳細、最新機能の情報を提供している。
Hello.cv(外部)Read.cvの.cvドメイン移行先サービス。個人ウェブサイト作成機能を継承している。
【参考記事】
Perplexity’s new tool can generate spreadsheets, dashboards, and more | TechCrunch
TechCrunchによるPerplexity Labs発表の詳細記事。新機能の技術的詳細と市場への影響を分析している。
Perplexity AI wrapping $500 million raise at $14 billion valuation | CNBC
CNBCによるPerplexityの資金調達に関する報道。企業価値評価の変遷と投資家の動向を詳しく解説している。
Perplexity Acquires Read.cv to Expand AI-Driven Professional Tools | AutoGPT
AutoGPTによるRead.cv買収の詳細記事。買収の戦略的意図と今後の展開について分析している。
【編集部後記】
Perplexity Labsの登場は、まさに「検索の次の章」の始まりを告げる出来事です。これからは「教えて」と「作って」が融合する時代に突入しました。月額20ドルという価格設定も絶妙で、個人ユーザーにとって手の届く範囲でありながら、企業にとっては十分に価値のある投資と言えるでしょう。
特に興味深いのは、同社が単なる機能追加ではなく、プラットフォーム全体の再定義を図っている点です。Read.cvの買収やCometブラウザの開発と合わせて考えると、Perplexityが描く未来のワークスタイルが見えてきます。果たして私たちの働き方は、どこまで変わっていくのでしょうか。その答えは、すぐそこまで来ているのかもしれませんね。