ーTech for Human Evolutionー

Outset、AIエージェントで市場調査を革新 シリーズAで1700万ドル調達、Nestlé・Microsoftが導入

Outset、AIエージェントで市場調査を革新 シリーズAで1700万ドル調達、Nestlé・Microsoftが導入 - innovaTopia - (イノベトピア)

サンフランシスコのスタートアップOutsetが2025年6月11日、シリーズA資金調達で1700万ドルを調達したと発表した。

8VCが主導し、ベイン・アンド・カンパニーのFuture Back Venturesと既存投資家が参加し、総調達額は2100万ドルに達した。

Outsetは創業2年で、AI司会型市場調査プラットフォームを提供している。同社のAIエージェントは合成音声、テキスト、画像、動画を使用してビデオインタビューを実施し、従来の人間主導調査と比較して8倍高速、81%安価、10倍のリーチを実現する。

主要顧客にはNestlé、Microsoft、WeightWatchersが含まれる。従来の市場調査では4-6週間で25回のインタビューを実施後、2-4週間の分析が必要だが、Outsetでは250回のインタビューを1週間未満で完了できる。

同社は14人の従業員で50以上の企業顧客を持ち、年間経常収益は数百万ドル、過去4ヶ月で収益が倍増した。CEOのアーロン・キャノンが率いる。

From: 文献リンクOutset raises $17M to replace human interviewers with AI agents for enterprise research

【編集部解説】

今回のOutsetの資金調達は、市場調査業界における根本的な変革の象徴として注目すべき事案です。従来の市場調査は人的リソースに大きく依存し、時間とコストの制約から規模の拡大が困難でした。

Outsetが提示する「8倍高速、81%コスト削減、10倍のリーチ」という数値は、単なる効率化を超えた業界構造の変化を示唆しています。特に注目すべきは、従来25回のインタビューに4-6週間を要していたプロセスが、250回のインタビューを1週間未満で完了できる点です。これは量的調査と質的調査の境界を曖昧にする技術革新といえるでしょう。

技術的な観点から見ると、合成音声とマルチモーダルな対話機能により、AIが人間の調査員と同等以上の深度でインタビューを実施できる点が革新的です。参加者がビデオ、音声、テキスト、画面共有など多様な方法で応答できる仕組みは、従来の静的なアンケート調査では不可能だった豊富なデータ収集を実現しています。

投資家が指摘する1400億ドルのTAM(Total Addressable Market)は、UX調査、一般調査、人的調査予算を合算した数値です。この規模感は、AI調査プラットフォームが単なるニッチ市場ではなく、企業の意思決定インフラの中核を担う可能性を示しています。

一方で、潜在的なリスクも存在します。AIによる調査では、人間特有の直感的な追加質問や、非言語的コミュニケーションから得られる洞察が制限される可能性があります。また、AIの学習データに含まれるバイアスが調査結果に影響を与えるリスクも考慮すべきでしょう。

規制面では、GDPR等のデータ保護規制への対応が重要になります。Outsetが企業向けにセキュリティ認証やデータ分離機能を提供している点は、この課題への対応策として評価できます。

長期的には、この技術は企業の顧客理解を民主化する可能性を秘めています。現在は専門の調査部門が担っていた高度な市場調査が、組織内の誰でも実行できるようになれば、より迅速で多角的な意思決定が可能になるでしょう。

ただし、キャノンCEOが認めているように、深い人間関係の構築が必要な調査や完全な即興性が求められる場面では、依然として人間の調査員が優位性を保つと考えられます。AIと人間の調査員の適切な使い分けが、今後の市場調査の鍵となりそうです。

【用語解説】

Outset raises $17M to replace human interviewers with AI agents for enterprise research
人工知能が司会者となって実施する市場調査手法。従来の人間による面接調査に代わり、AIが合成音声やテキストを使用して参加者とのインタビューを実施し、リアルタイムで追加質問を行う。

シリーズA資金調達
スタートアップ企業が事業拡大のために実施する本格的な資金調達ラウンド。通常、製品開発やビジネスモデルの検証が完了した段階で行われ、数百万ドルから数千万ドル規模の投資を受ける。

TAM(Total Addressable Market)
企業が参入可能な市場の総規模を示す指標。Outsetの場合、UX調査、一般調査、人的調査予算を合算した約1400億ドルの市場規模を指す。

LLM(Large Language Model)
大規模言語モデル。膨大なテキストデータで訓練された人工知能モデルで、自然な言語理解と生成が可能。ChatGPTなどがその代表例である。

Fortune 500
米国の売上高上位500社を毎年ランキング化したリスト。世界最大級の企業群を指し、Outsetの主要顧客層を示す指標として使用されている。

【参考リンク】

Outset公式サイト(外部)
AI司会型市場調査プラットフォームを提供するOutsetの公式サイト

8VC公式サイト(外部)
今回の資金調達ラウンドを主導したベンチャーキャピタル

Nestlé公式サイト(外部)
スイスに本社を置く世界最大の食品・飲料メーカー

Microsoft公式サイト(外部)
米国の大手テクノロジー企業でOutsetの主要顧客

WeightWatchers公式サイト(外部)
米国の体重管理・健康支援サービス企業

【参考動画】

【参考記事】

Startup Outset Raises $17M Series A to Help Enterprises Scale & Accelerate Customer Research with AI Agent-led Interviews
Outsetの資金調達に関する公式プレスリリース。共同創設者の経歴や具体的な製品機能、企業向けツールキットの詳細を記載している。

Outset: Interview With Co-Founder & CEO Aaron Cannon About The Company
OutsetのCEO Aaron Cannonへのインタビュー記事。会社設立の背景や製品開発の動機、従来の調査手法との違いについて詳しく説明している。

【編集部後記】

AIが人間のインタビュアーを上回る成果を示すOutsetの事例は、私たちが想像していた以上に早く現実となっているようです。

皆さんの職場でも、顧客の声を聞く方法が根本的に変わる可能性があります。もし自社の市場調査や顧客インサイト収集にAIを導入するとしたら、どのような変化を期待しますか?また、人間にしかできない調査領域はどこに残ると思われますか?ぜひSNSで皆さんの視点をお聞かせください。

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TaTsu
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