Xiaomiは2025年11月22日、身体性基盤モデル「MiMo-Embodied」を正式リリースし、完全オープンソース化したと発表した。
MiMo-Embodiedは、自動運転と身体性AIを統合した業界初の身体性基盤モデルであり、両領域を単一のモデリングフレームワークで実現している。このモデルは、身体性AIの3つの中核タスクであるアフォーダンス推論、タスク計画、空間理解と、自動運転の3つの主要タスクである環境知覚、状態予測、運転計画を同時にサポートする。
29のベンチマークテストにおいて、身体性AIで17のベンチマーク、自動運転で12のベンチマークで最先端の結果を達成した。ソースコードはHugging FaceとArXivで公開されている。
【編集部解説】
今回Xiaomiが発表したMiMo-Embodiedは、AI研究における重要なパラダイムシフトを示しています。これまで自動運転とロボティクスは別々の専門領域として発展してきましたが、このモデルは両者を単一のフレームワークで統合した初のオープンソースモデルです。
技術的な革新性は、「双方向の知識転移」という概念にあります。室内でのロボット操作で学んだ物体認識や空間理解の能力が、屋外での運転判断に活かされ、逆に運転シーンでの動的予測能力が室内ロボットのタスク計画を向上させるという相乗効果が実証されました。
Xiaomiは2026年第1四半期から、自社のロボット掃除機やAGV(無人搬送車)、そしてSU7の高度運転支援システムへのMiMo-Embodied実装を計画していると報じられています。これは単なる研究成果の公開ではなく、実用化を見据えた戦略的な動きです。
注目すべきは、DeepSeekの元主要研究者である羅福麗(Luo Fuli)氏の参画です。DeepSeek-V2の開発に中心的な役割を果たした彼女は、現在XiaomiのMiMoチームを率いており、12月のパートナーカンファレンスでの詳細発表が予定されています。
このオープンソース化は、身体性AIのエコシステム構築を加速させる可能性があります。家庭、モビリティ、製造業といった多様な領域の開発者が、統一されたインテリジェンス基盤を利用できるようになることで、領域を超えた技術革新が期待されます。
ただし、安全性の観点からは慎重な検証が必要です。自動運転とロボティクスという2つの安全重視領域を統合するモデルには、それぞれの領域特有のリスク評価基準を満たすことが求められます。Xiaomiは多段階の学習パイプライン(身体性・運転スキル学習、思考連鎖推論強化、強化学習最適化)を通じて信頼性を高めていますが、実環境での長期的な検証が今後の課題となるでしょう。
【用語解説】
身体性AI(Embodied AI)
物理的な身体を持ち、実世界と相互作用しながら学習・行動するAIシステムを指す。ロボットや自動運転車など、センサーで環境を認識し、アクチュエーターで物理的に作用する知能が該当する。
アフォーダンス推論
環境内の物体が「何に使えるか」「どう操作できるか」を理解する能力のこと。例えば、椅子は「座れる」、ドアノブは「回せる」といった物体の可能性を認識し、行動計画に活用する。
思考連鎖(Chain-of-Thought, CoT)
AIが最終的な答えを出す前に、段階的な推論プロセスを明示的に生成する手法。複雑な問題を小さなステップに分解することで、推論の精度と信頼性を向上させる。
強化学習(RL: Reinforcement Learning)
AIが試行錯誤を通じて最適な行動を学習する手法。報酬信号を基に、長期的に望ましい結果を得られる行動パターンを獲得していく機械学習の一分野である。
SOTA(State-of-the-Art)
特定の分野やタスクにおいて、現時点で最高の性能を示す技術や手法を指す。ベンチマークテストにおける最高記録を意味する。
AGV(無人搬送車)
Automated Guided Vehicleの略称。工場や倉庫内で自律的に物品を搬送する無人車両システム。センサーとAIによって経路を判断し、効率的な物流を実現する。
DeepSeek
中国の深度求索(DeepSeek)社が開発するAI研究プロジェクト。高効率な大規模言語モデルの開発で知られ、DeepSeek-V3が国際的に注目を集めた。
【参考リンク】
Xiaomi MiMo-Embodied GitHub公式リポジトリ(外部)
ソースコード、モデルの重み、技術ドキュメントを公開。研究者や開発者が実装を確認できる公式ページ
MiMo-Embodied 技術論文(arXiv)(外部)
モデルアーキテクチャ、学習手法、ベンチマーク結果を記載したXiaomi公開の詳細な技術レポート
Hugging Face – MiMo-Embodied(外部)
AI/機械学習コミュニティに公開された論文ページ。コミュニティのフィードバックや議論も閲覧可能
Xiaomi公式サイト(外部)
スマートフォン、家電、EVを展開する中国の総合テクノロジー企業。SU7やロボット掃除機にAI統合
【参考記事】
Xiaomi open-sources AI model spanning autonomous driving and robotics(外部)
2026年Q1の実装計画と12月のパートナーカンファレンスについて報じるSCMPの詳細記事
MiMo-Embodied: X-Embodied Foundation Model Technical Report(外部)
29のベンチマーク評価、多段階学習パイプライン、双方向知識転移を詳述する公式技術論文
Xiaomi Open-Sources Cross-Domain Embodied Large Model MiMo-Embodied(外部)
羅福麗氏のMiMoチーム参画と12月カンファレンスでの発表予定について詳述するAI NEWS報道
【編集部後記】
自動運転とロボット掃除機が、実は同じ「知能」で動く日が来るなんて、少し前までは想像もできませんでした。家の中で学んだ空間認識が、街中を走る車の判断を賢くする。そんな技術の相乗効果を、私たちはどう活かしていけるでしょうか。みなさんの暮らしの中で、この統合された知能はどんな場面で役立つと思いますか?スマートホームと移動の未来について、一緒に想像してみたいです。
























