OpenAIのAIチャットボットChatGPTが2025年12月2日火曜日、一部ユーザーで一時的に利用できなくなった。障害追跡サイトDowndetectorによると、約3,000人が問題を報告した。
OpenAIは火曜日の夕方、ルーティングの設定ミスが原因であり、問題は修正されたと発表した。この障害は、OpenAIがデータ分析プロバイダーMixpanelでのセキュリティ侵害を開示してから数日後に発生した。
Mixpanelの侵害では、OpenAI APIに紐づく名前やメールなどのユーザー情報が漏洩したが、影響を受けたユーザー数は明らかにされていない。
OpenAIによると、2025年10月時点で毎週8億人以上がChatGPTを使用している。
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OpenAI’s ChatGPT suffers outage for some users
【編集部解説】
2025年12月2日に発生したChatGPTの障害は、現代のAIインフラが抱える脆弱性を浮き彫りにしました。
報告数については、元記事では約3,000人とされていますが、実際にはピーク時で12,000人以上のユーザーがDowndetectorに報告しており、影響範囲はより広範だったことがわかります。障害の持続時間は約30分間で、米国東部時間12月2日午後2時40分(日本時間12月3日午前4時40分)に問題が確認され、午後3時10分頃(日本時間午前5時10分頃)には修正が適用されました。OpenAIの対応は比較的迅速だったと言えるでしょう。
原因として公表された「ルーティングの設定ミス」は、ネットワーク通信の経路設定における技術的なエラーを意味します。これは、サーバー間のデータ通信を適切な経路で送信できなかったことを示唆しており、大規模なサービスでは時折発生する問題です。
この障害が特に注目される理由は、そのタイミングにあります。数日前の11月27日、OpenAIはデータ分析プロバイダーMixpanelでのセキュリティ侵害を公表したばかりでした。Mixpanelの侵害は11月8日に発見され、SMSフィッシング攻撃によってOpenAI APIユーザーの名前、メールアドレス、おおよその位置情報などが流出しました。OpenAIはこの事態を受けてMixpanelの使用を完全に終了し、ベンダー全体のセキュリティレビューを実施すると発表しています。
ChatGPTの利用規模を考えると、わずか30分の障害でも影響は甚大です。2025年10月時点で、ChatGPTは毎週8億人以上が利用しており、毎分60億トークン以上を処理しています。学生、開発者、企業ユーザーなど、日常業務でChatGPTに依存する人々にとって、突然のアクセス不能は生産性の大きな損失を意味します。
今回の事案は、AIサービスの信頼性という根本的な課題を提起しています。AIツールが日常生活に深く組み込まれるほど、システムの安定性とセキュリティの重要性は増していきます。OpenAIは2024年に37億ドルの収益を上げ、2025年6月には年間収益100億ドルに到達しましたが、技術的な安定性の確保なくして持続的な成長はありません。
また、競争環境も激化しています。AnthropicのClaude、GoogleのGemini、MetaのAIなどが市場シェアを争っており、サービスの信頼性は競争優位性を左右する重要な要素となっています。わずかな障害やセキュリティ問題が、ユーザーの信頼を損ない、競合への流出を招く可能性があるのです。
サードパーティベンダーのセキュリティ管理も今後の課題です。Mixpanelの侵害が示すように、自社システムが堅牢であっても、連携する外部サービスの脆弱性が全体のセキュリティを脅かす可能性があります。OpenAIがベンダーエコシステム全体のセキュリティ要件を引き上げると表明したことは、業界全体にとって重要な先例となるでしょう。
【用語解説】
ルーティング設定ミス
ネットワーク上でデータを適切な経路で送信するための設定における誤り。サーバー間の通信経路が正しく設定されていないと、データが目的地に到達できず、サービスが利用できなくなる。
Downdetector
ウェブサイトやオンラインサービスの障害をリアルタイムで追跡するプラットフォーム。ユーザーからの報告を集約し、障害の規模や影響範囲を可視化する。
SMSフィッシング(スミッシング)
SMS(ショートメッセージ)を使った詐欺手法。正規の企業や組織を装ったメッセージで、受信者を偽のウェブサイトに誘導し、個人情報や認証情報を盗み取る。
トークン
AIモデルがテキストを処理する際の基本単位。単語や文字列を小さな単位に分割したもので、ChatGPTの処理能力は毎分何トークン処理できるかで表される。
【参考リンク】
OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPTを開発するAI研究機関。GPTシリーズやDALL-Eなどの生成AIモデルを提供している。
OpenAI Status Page(外部)
OpenAIのサービス稼働状況をリアルタイムで確認できる公式ステータスページ。
Mixpanel(外部)
製品分析とイベント追跡を提供するデータ分析プラットフォーム。ユーザー行動の追跡と分析を支援。
Downdetector(外部)
オンラインサービスの障害情報を集約・可視化するプラットフォーム。リアルタイムで障害状況を追跡。
ChatGPT(外部)
OpenAIが提供する対話型AIチャットボット。質問応答、文章作成、コード生成などを行う。
【参考記事】
ChatGPT had some issues earlier, but it’s back(外部)
障害発生から復旧までの経緯を時系列で報道。OpenAIの対応状況を詳しく解説。
ChatGPT Outage 2025: What Happened(外部)
米国で12,500人以上が影響を受けたことや、約30分で修正された経緯を報告。
ChatGPT is down worldwide(外部)
Downdetectorで30,000人以上が報告した詳細や、具体的なエラーメッセージを報道。
Sam Altman says ChatGPT has hit 800M users(外部)
ChatGPTが毎週8億人に達し、毎分60億トークン以上を処理していることを報道。
OpenAI User Data Exposed in Mixpanel Hack(外部)
Mixpanelのセキュリティ侵害の詳細。OpenAI APIユーザーの個人情報流出を解説。
OpenAI dumps Mixpanel after analytics breach(外部)
OpenAIがMixpanelとの契約を終了し、ベンダーのセキュリティレビューを実施と報道。
A data breach at Mixpanel leaves open questions(外部)
Mixpanelの侵害に関する未解決の問題点を指摘。数百万人規模の影響を分析。
【編集部後記】
今回のChatGPTの障害は、わずか30分という短時間でしたが、私たちがいかにAIサービスに依存しているかを実感させられる出来事でした。毎週8億人が利用するサービスが突然使えなくなったとき、あなたはどう感じられたでしょうか。便利なツールであるがゆえに、その停止が業務や学習に与える影響は小さくありません。さらにMixpanelでのセキュリティ侵害も重なり、AIサービスの信頼性について改めて考える機会となりました。私たちinnovaTopiaも、テクノロジーの進化を追いかける立場として、利便性だけでなく、安定性やセキュリティの重要性を一緒に見つめていきたいと考えています。みなさんは、AIツールとどのように付き合っていきますか。






























