advertisements

CES 2026振り返り:AIは「生成」から「行動」へ――フィジカルAIが現実世界を書き換え始めた4日間

 - innovaTopia - (イノベトピア)

CES 2026は、生成AIからフィジカルAIへの転換点として位置づけられるイベントとなり、NVIDIA・AMDの基調講演はその方向性を決定づける内容になりました。


2026年1月6〜9日にラスベガスで開催されたCES 2026は、AIの歴史における一つのターニングポイントとして記憶されるイベントとなりました。
キーワードは「生成AIから行動するAIへ」であり、これまでスクリーンの中に閉じ込められていた知能が、ロボット・自動車・産業機器として現実空間に溶け込む「フィジカルAI」の本格始動が鮮明になりました。

本記事では、2021年以降のCESトレンドを踏まえつつ、「エージェントAI」「フィジカルAI」「モビリティ」「半導体」「日本勢」という5つの視点から、CES 2026が示したAI革命の新章を総括していきます。

2021〜2025年の流れを飛躍させたCES 2026

まず押さえておきたいのは、CES 2026が単なる「コロナ前への回帰」ではなく、イベントそのものが飛躍した節目であるという点です。
2021年の完全オンライン開催から始まり、2023年の「Human Security for All」、2024年の生成AI実用化、2025年のAIエージェントとエッジ推論という流れを経て、2026年は「AIが現実世界で行動する段階」にフォーカスが移りました。

出展社数・来場者数は4,100社超・148,000人規模と、コロナ前水準に迫る規模を維持しつつ、展示の重心は「家電」から「社会システムを変えるAI・ロボティクス・モビリティ」へと完全にシフトしています。
CESはもはや「ガジェットの祭典」ではなく、「人類の課題解決に向けた総合イノベーションプラットフォーム」として再定義されたと言ってよいでしょう。

NVIDIA:フィジカルAIと「世界モデル」が拓く産業ロボティクスの次フェーズ

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、CES 2026でも「フィジカルAI」をテーマとした基調講演を行い、工場・都市・自動車・ロボットを貫くプラットフォーム戦略を鮮明にしました。
同社は、GPUとOmniverse、Isaacなどのロボティクスプラットフォーム、そして物理世界の挙動を学習する「世界モデル」を組み合わせることで、シミュレーション空間からフィジカルAIを量産する構想を提示しています。

講演内では、自動運転車や産業ロボットが、現実空間の膨大な走行・作業パターンを仮想空間上で生成・評価し、それを実世界へフィードバックしていくデモが紹介されました。
ここで重要なのは、NVIDIAが単なるチップベンダーではなく、ロボティクス・自律走行・産業DXにおける「フィジカルAI向けのフルスタックインフラ(GPU/ソフトウェア/クラウドサービス)」を提供するプラットフォーマーへとポジションを移しつつあることです。

「フィジカルAI=ロボットの高性能化」ではなく、「現実世界そのものをシミュレーション可能なデジタルツインとして再構築し、その上でAIが行動計画を立てる世界観」が、明確な産業ロードマップとして示された年と位置づけられると考えられます。

AMD:AI Everywhere, for Everyone ― AI PCとエッジ推論の大衆化

一方、AMDは「AI Everywhere, for Everyone」を掲げ、PCからエッジデバイス、産業用途までを射程に収めるRyzen AI 400シリーズなどを発表しました。
Lisa Su氏の基調講演では、AI PCにおけるNPU性能強化と、オンデバイスでエージェントAIを動作させるためのソフトウェアスタックが前面に押し出されています。

特に、ローカルでエージェントAIを動かしつつ、プライバシーを確保したまま業務支援・クリエイティブ・ミーティング要約などを行うユースケースが、多数のパートナーとともに紹介されました。
これは、2025年に一気に立ち上がった「AIエージェント」の文脈を受け継ぎつつ、それをクラウド依存のサービスから「個々人のデバイスに根ざした常駐インフラ」へと押し下げる試みだと言えます。

AMDは産業向けのRyzen AI Embeddedも打ち出し、自動車・産業機器・フィジカルAI用途へ向けたNPU搭載プラットフォームを提示しており、「エッジ側のAI推論をどこまで民主化できるか」が2026年以降の競争軸になることを強く印象づけました。

フィジカルAIとロボティクス:ヒューマノイドから産業現場まで

CES 2026のフロアでは、NVIDIAのメッセージと呼応するかのように、ヒューマノイドロボットや倉庫ロボット、自律移動ロボットが数多く展示され、「フィジカルAI」の具体像が一気に可視化されました。

Hyundai Motor Groupは人間中心のAIロボティクス戦略を発表し、多関節と触覚センサーを備えたヒューマノイドを、2028年以降に高度な反復作業へ投入するロードマップを示しています。

倉庫や工場の物流自動化を担うロボット群は、従来の「教え込まれたタスクを繰り返す」段階から、環境変化に対応しながら柔軟にタスクを遂行する段階へと移行しつつあります。
ロボットタクシーや自律走行サービスは、カリフォルニアや中国の一部都市で既に商用運用が進み、NVIDIAは自律走行が数兆ドル規模の産業に成長し得ることを改めて強調しています。

フィジカルAIの本質は、「あらゆる動くものが自律化する」未来像であり、ロボット・車両・ドローン・建設機械など、現実世界のあらゆるアクチュエータがAIエージェントのアウトプットを物理的な行動に変換するインターフェースになるというビジョンだと言えます。

モビリティ:第三の生活空間とSDVが前提の世界へ

モビリティ分野では、CES 2026でも「自動車=第三の生活空間」「SDV(Software Defined Vehicle)」という流れがさらに加速しました。
ソニー・ホンダモビリティのAFEELAや、各社の最新EVは、エンタメ・オフィス・パーソナルアシスタント機能を統合し、対話型AIがドライバーのスケジュール管理から余暇提案まで担う「カンバセーショナルカー」像を提示しています。

BMWやHyundai系のAR HUD・ホログラフィックディスプレイは、フロントガラス全体をインターフェース化し、情報表示と空間認識を統合する方向性を示しました。
運転から解放された時間と空間は、新たな広告・コンテンツ・リモートワークのフロンティアとなり、自動車産業のビジネスモデルはプロダクト販売から、サブスクリプション型のサービス提供へとシフトしつつあります。

ホンダの「Honda 0 Series」のように、専用AIアクセラレータと独自OSを搭載したSDVの具体例が増えつつあり、「車載コンピューティング=AI推論インフラ」として捉える視点が重要になってきています。

半導体:TOPSがすべてのレイヤーで共通言語に

フィジカルAIとエージェントAIの社会実装を支える基盤として、半導体分野の発表もCES 2026の重要なポイントとなりました。
NVIDIAは、次世代GPUを含む6チップ構成のAIプラットフォーム「Rubin」を発表し、生成AIからロボティクス、自動運転までをカバーするフルスタック基盤として位置づけています。また、自動運転・ロボタクシー向けには、物理世界の複雑な挙動を理解し推論するオープンな推論モデル群「Alpamayo」などのPhysical AIモデル群を公開し、生成AIとフィジカルAIのトレーニングおよび推論を支えるクラウド/データセンター側の計算基盤を強化したことを強調しました。

Intelは18Aプロセス世代の新CPU「Core Ultra Series 3」を投入し、CPU+NPUの構成でエージェントAIのローカル動作を強化する方針だと伝えられています。
AMDはRyzen AI 400シリーズやRyzen AI Embeddedで、PC・産業機器・車載向けにNPU性能を前面に押し出し、TOPS値を一般消費者にとっても分かりやすい指標として訴求しています。

2026年時点では、「このデバイスは何TOPSか?」が、AI対応スマホ・PC・車・ロボットなど、あらゆるコンピューティングデバイスの購入判断に関わる共通言語になりつつあります。
TOPSを単なるスペック競争としてではなく、「どのレイヤーのAIをどこまでローカル化するか」を巡るアーキテクチャ戦略の指標として読み解くことが大事になっていくと考えています。

日本企業とJapanパビリオン:ニッチ×世界市場という勝ち筋

CES 2026では、日本企業31社がJapanパビリオンに集結し、AI、ヘルステック、AR/VR、宇宙技術などの分野でプレゼンスを発揮しました。​
Japanパビリオンには、素材・部品系を含む多様なスタートアップや技術企業が参加し、水上エンターテインメント「ARIVIA」のような独自性の高いプロジェクトも注目を集めました。

量と派手さで韓国・中国勢に押される一方で、日本企業は「ニッチな技術をグローバルなバリューチェーンに組み込む」スタイルで存在感を示していると言えます。
ただし、フィジカルAIやエージェントAIのプラットフォーム層では、米国勢と韓国勢の攻勢が目立ち、日本発の「AI OS」や「世界モデル」が見えてこないことは、今後10年の競争力という観点では懸念材料でもあります。

2026年のフィジカルAI予測:エージェント×ロボティクス×モビリティがもたらす3つの変化

CES 2026で浮かび上がったフィジカルAIの方向性を踏まえると、2026年は少なくとも次の3つの変化が進行すると考えられます。

  1. 現場業務の「半自律化」が一気に進むこと
    倉庫・工場・建設現場などで、エージェントAIが作業計画を立て、ロボットが実行する「人間+AI+ロボット」のハイブリッド運用が広がっていきます。
    完全自動化ではなく、ヒューマン・イン・ザ・ループを前提にした「監督する人間×動くAI」という役割分担が、実務のデファクトになっていきます。
  2. 「動くすべてのもの」がインテリジェントエンドポイント化すること
    自家用車、商用車、ドローン、搬送ロボットなどが、それぞれNPU/GPUを搭載した「AIノード」としてネットワークに組み込まれ、トップダウンではなくエッジ主導の分散AIが進みます。
    これにより、クラウド依存型のサービス設計から、ローカル推論+クラウド連携のハイブリッド設計への転換が加速していきます。
  3. AIガバナンスとAIリテラシーが競争力の一部になること
    フィジカルAIが現実世界で人やモノに直接作用するようになることで、安全性・説明責任・労務への影響など、ガバナンスの課題が前面化していきます。
    組織や個人がAIエージェントとどのように協働するか、そのためのリテラシーとルール設計が、そのまま事業スピードと競争力に直結するフェーズに入っていきます。

今、何を準備すべきか

CES 2026は、「AIをどう使うか」という問いから、「AIと共にどう動くか」「AIに何を任せ、何を人間が担うか」という問いへのシフトを象徴するイベントだったと言えます。
日本の中小企業やスタートアップにとっては、次の3点が2026年の実務的なアクションになると考えられます。

  • フィジカルAIを前提にしたビジネスモデルの再設計
    自社のプロセスのどこにロボットや自律システムを組み込めるかを、エージェントAI活用も含めて洗い出していくことが重要です。
  • エッジAI前提のサービス設計
    PC・スマホ・車載・現場デバイスでどこまでローカル推論させるか、そのためにどのプラットフォーム(NVIDIA/AMD/Qualcomm/クラウド)に乗るかを、中長期視点で選定していく必要があります。
  • ヒューマン・イン・ザ・ループの運用設計
    「AI任せにしない」ための監視・介入プロセスと、現場メンバーがAIと安全に協働するための教育・ルールづくりを、早い段階から始めることが求められます。

innovaTopiaでは今後も、CES 2026で示されたフィジカルAIの潮流を、現場で実装するための具体的なケーススタディとともに追いかけていきたいと考えています。「人間の進化を支えるテクノロジー」としてのAIのあり方を、読者のみなさんと共にアップデートしていきます。

投稿者アバター
まお
おしゃべり好きなライターです。趣味は知識をためることとゲームをすること(ソシャゲや音楽ゲームが大好きです)。最近はAIの情勢や地政学の問題を勉強中。時折記者として会見や発表に赴いたり、インタビューを行ったりもしています。

読み込み中…

innovaTopia の記事は、紹介・引用・情報収集の一環として自由に活用していただくことを想定しています。

継続的にキャッチアップしたい場合は、以下のいずれかの方法でフォロー・購読をお願いします。