AI搭載遺伝子エディターOpenCRISPR-1、人間DNA編集の新時代を切り開く

AI搭載遺伝子エディターOpenCRISPR-1、人間DNA編集の新時代を切り開く - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2024-05-06 10:10 by admin

Profluentは、人間のゲノムを編集するためのAI機能を備えたオープンソースの遺伝子エディターOpenCRISPR-1をリリースした。この技術は、商業利用と倫理的研究のために無料でライセンス可能である。

OpenCRISPR-1は、人間のDNAを編集する能力を持つ分子を作成するために人工知能を利用して設計された。CRISPR技術は、生物内のDNA配列を正確に修正することを可能にする。

OpenCRISPR-1で設計された分子は完全に合成されたもので、自然界には存在しない。Profluentは、OpenCRISPR-1を倫理的研究と商業利用のためにオープンソース化し、その開発背景をプレプリント出版物で公開した。

Profluentは、大規模なシーケンスと生物学的文脈に関する大規模言語モデル(LLMs)をトレーニングすることで、この成果を達成した。5.1百万のCas9様タンパク質のデータベースを開発し、このデータベースを使用してAIモデルをトレーニングし、CRISPR用の潜在的なタンパク質を作成した。

これにより、LLMは自然界で見つかった例から学習しながら、新しい遺伝子エディターをゼロから作成することができた。結果を絞り込んだ後、Cas9と同様に機能するが、オフターゲット部位への影響がはるかに少ないOpenCRISPR-1を特定した。これにより、より正確でDNAへの損傷が最小限に抑えられる。

OpenCRISPR-1をオープンソース化する目的は、特にCRISPRを活用した医薬品開発において、AIの使用を促進することである。Profluentは、CRISPR医薬品がより多くの患者やより多くの疾患に利用可能になるよう、最先端の研究機関や薬剤開発者とのパートナーシップを目指している。

【関連記事】
「RNA writing」登場、遺伝子編集の新時代を切り拓く

【参考リンク】
Profluent社 オフィシャルサイト(外部)

【編集者追記】用語解説
CRISPR/Cas9: 細菌が持つ獲得免疫システムの一部を、遺伝子編集に応用した革新的な技術。ガイドRNAで標的遺伝子を特定し、Cas9酵素がその部分を切断することで編集を行う。

ゲノム編集: 生物の遺伝情報であるゲノム(DNA)を人為的に改変すること。遺伝子治療や新品種作出などに利用される。

オフターゲット効果: CRISPR/Cas9が意図しない部位のDNAを切断してしまう副作用のこと。OpenCRISPR-1ではこの影響が低減されている。

Profluent: OpenCRISPR-1を開発した米国のバイオテック企業。AIを活用した合成生物学の研究で知られる。

オープンソース: ソフトウェアやデータなどの設計図を公開し、誰もが自由に利用・改良できるようにすること。

※CRISPR/Cas9についてさらに編集者による補足

CRISPR/Cas9は、DNAの編集作業を行う”分子レベルの編集ツール“と考えられます。ガイドRNAが編集する場所を特定し、Cas9タンパク質がその部分を切り取る役割を果たします。これは文書を編集するワープロソフトに例えられます。カーソルで編集箇所を指定し、削除や挿入を行うのと同じ原理です。

OpenCRISPR-1は、従来のCRISPRツールに人工知能(AI)の技術を組み込んだ”高性能な次世代エディター”だと言えるでしょう。AIの力で編集作業がより的確で安全に行えるようになっています。

Vision BioLearningによるOpenCRISPR-1の解説動画

【ニュース解説】

Profluent社が開発したOpenCRISPR-1は、人工知能を活用して設計されたオープンソースの遺伝子エディターであり、人間のDNAを編集する能力を持つ分子を作成することができます。この技術は、CRISPR(クラスター化された規則的な間隔を持つ短い回文反復配列)技術を基にしており、これまで以上に正確なDNAの修正を可能にします。OpenCRISPR-1で設計された分子は完全に合成されたもので、自然界には存在しないため、従来のCRISPR-Cas9技術とは一線を画しています。

この技術の背後には、大規模なシーケンスデータと生物学的文脈に基づいてトレーニングされた大規模言語モデル(LLMs)があります。Profluent社は、5.1百万のCas9様タンパク質のデータベースを開発し、このデータベースを用いてAIモデルをトレーニングしました。その結果、AIは自然界で見つかった例から学習しながら、新しい遺伝子エディターをゼロから作成する能力を持つに至りました。OpenCRISPR-1は、Cas9と同様に機能しますが、オフターゲット部位への影響がはるかに少ないため、より正確でDNAへの損傷が最小限に抑えられます。

この技術の開発とオープンソース化は、特にCRISPRを活用した医薬品開発において、AIの使用を促進し、発見とイノベーションのペースを加速することを目的としています。Profluent社は、CRISPR医薬品がより多くの患者やより多くの疾患に利用可能になるよう、最先端の研究機関や薬剤開発者とのパートナーシップを目指しています。

この技術のポジティブな側面としては、遺伝性疾患の治療や病気のメカニズムの研究に革命をもたらす可能性があります。一方で、人間のDNAを編集する技術は、倫理的な問題や潜在的なリスクを伴います。遺伝子編集の結果が予期せぬ副作用を引き起こす可能性や、遺伝子編集技術が不正に使用されるリスクなどが考えられます。そのため、この技術の使用には厳格な規制と倫理的なガイドラインが必要です。

将来的には、OpenCRISPR-1のような技術が、遺伝子編集に関する研究や医薬品開発を大きく前進させることが期待されます。AIの力を借りて、自然界には存在しない新しい分子を設計し、特定の疾患に対するより効果的で安全な治療法の開発が可能になるでしょう。しかし、この技術の発展と普及には、科学的な進歩と同じくらい、倫理的な考慮と社会的な受容が重要になります。

from Profluent releases AI-enabled OpenCRISPR-1 to edit the human genome.

SNSに投稿する

ホーム » バイオテクノロジー » バイオテクノロジーニュース » AI搭載遺伝子エディターOpenCRISPR-1、人間DNA編集の新時代を切り開く