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南極の氷の下で微生物の隠された世界を発見|GFZ研究チームが2,829種の未知の生命体を確認、極限環境での共生メカニズムを解明

南極の氷の下で微生物の隠された世界を発見|GFZ研究チームが2,829種の未知の生命体を確認、極限環境での共生メカニズムを解明 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-25 08:06 by admin

ドイツのGFZヘルムホルツ地球科学研究センターとポツダム大学のディルク・ワーグナー博士率いる研究チームは、東南極ラーセマン・ヒルズの後退する氷河前の土壌で、2,829種の微生物(細菌と真核生物)を発見した。

研究は『Frontiers in Microbiology』で発表された。26点の土壌サンプルを採取し、細胞内DNA(iDNA)と細胞外DNA(eDNA)を区別する先進的なDNAバーコーディングを用いて、現在生息する微生物と過去に存在した種の両方を解析した。その結果、緑藻と細菌の栄養交換や、真菌と放線菌の共存など、これまで知られていなかった微生物間の相利共生関係が明らかになった。

この研究により、南極土壌の生物多様性は従来の推定を大きく上回ることが示された。

References:
文献リンクScientists Discover Hidden World Thriving Beneath Antarctic Ice

【編集部解説】

今回の発見は、「南極の土壌はほぼ無生物」という従来のイメージを覆すものです。2,829種もの微生物が、極寒・乾燥・栄養不足という三重苦の環境下で複雑なネットワークを形成し、互いに助け合いながら生きていることが明らかになりました。特に、細胞内外DNAを分けて解析することで、現在だけでなく過去の生態系の変遷も追跡できる点は画期的です。

この知見は、地球外生命探査や極限環境でのバイオテクノロジー応用にもつながる可能性を秘めています。たとえば、火星やエウロパなどの氷下環境での生命探索、または低温・乾燥環境での環境浄化技術への応用が期待されます。

一方で、今回明らかになった微生物間の「協力」は、進化生物学における相利共生や相互扶助論の現代的な実証例ともいえます。過酷な環境ほど「競争」より「協力」が生存戦略として有利になることが、分子レベルで裏付けられつつあります。

今後は、発見された新しい共生関係がどのようなメカニズムで成立しているのか、実験室レベルでの再現や産業応用への展開が期待されます。規制面では、微生物多様性の保護やバイオセーフティの観点から、南極条約の見直し議論も進むかもしれません。

【用語解説】

DNAバーコーディング:
生物種を特定するための分子生物学的手法。バーコードのように短いDNA配列を用いる。

細胞内DNA(iDNA)/細胞外DNA(eDNA):
iDNAは生きた細胞由来、eDNAは死んだ生物や過去の生物由来。

相利共生:
異なる生物が互いに利益を得る関係。緑藻と細菌、真菌と放線菌の関係が該当。

放線菌:
土壌中に多い細菌の一群で、抗生物質生産などで知られる。

【参考リンク】

GFZヘルムホルツ地球科学研究センター(外部)
ドイツの国立地球科学研究機関。地球内部や極限環境の研究を行う。

ポツダム大学(外部)
ドイツ・ブランデンブルク州の公立大学。幅広い学問分野で研究を展開。

Frontiers in Microbiology(外部)
微生物学分野のオープンアクセス学術誌。

【参考動画】

【編集部後記】

南極の極限環境で発見された微生物の共生は、私たちの身近な発酵食品や腸内細菌ともつながっています。自然界の「協力の仕組み」に、どんな可能性や未来を感じますか?皆さんの身の回りで感じる「見えない協力」についても、ぜひ考えてみてください。

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TaTsu
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