フィナンシェ・電算システムがWeb3地域創生で提携|コミュニティトークンの仕組みと可能性

[更新]2026年5月21日

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ふるさと納税が象徴するように、地域への「応援」は長らく一方通行でした。お金を送る、観光に行く——それ自体は善意であっても、地域との関係は多くの場合そこで完結し、継続的なつながりには育ちにくいという問題がありました。Web3技術はその構造を変えられるのでしょうか。岐阜を拠点とする決済・情報サービス企業の電算システムと、トークン型コミュニティプラットフォームを手がけるフィナンシェの資本業務提携は、その問いへの一つの答えを示そうとしています。


2026年4月30日、株式会社電算システム(岐阜県岐阜市、代表取締役社長執行役員:高橋 譲太)と株式会社フィナンシェ(東京都渋谷区、代表取締役:國光 宏尚)は資本業務提携を完了した。両社は2026年6月より、ブロックチェーン技術(Web3)を活用した地域創生の取り組みを本格開始する。

提携の核となるのは、電算システムが運営する観光・地域創生共創プロジェクト「NIPPON WONDER FACTORY(NWF)」だ。NWFにフィナンシェのトークンコミュニティプラットフォームを実装し、地域と支援者が継続的につながる「自律的な経済圏」の形成を目指す。具体的には、地域事業者や自治体によるトークン発行を通じた資金調達、二次流通マーケットによる流動性の確保、DAO(分散型自律組織)型コミュニティによる共創参加、トークン保有者向けのロイヤリティ施策などを段階的に展開していく。

今後は、フィナンシェのプラットフォーム上に電算システムのブロックチェーン決済基盤を組み込み、地域の店舗や観光施設でのステーブルコイン決済も視野に入れる。また、グループ会社の株式会社Unyteと連携し、個人の活動や地域への貢献をブロックチェーン上に記録する「貢献証明(Proof of Contribution)」の実装も予定している。共創プロジェクト第一弾は2026年8月頃に発表予定だ。

From: 文献リンク株式会社電算システムと株式会社フィナンシェが資本業務提携を完了し、Web3を活用した地域創生の共同プロジェクトを開始(PRTimes)

【編集部解説】

「疑似株主的」という発明と、それを成り立たせている法律の隙間

今回のプレスリリースのなかで最も注目すべき表現は、「地域事業者が株式上場に頼らずとも株主のようなエンゲージメントが期待できる疑似株主的なコミュニティを形成できる」というくだりです。

ただし、リリースの末尾には小さな注記が添えられています。

本プラットフォームで発行されるトークンは、金融商品取引法上の有価証券等および資金決済法上の暗号資産には該当せず、金銭的価値の保証や収益の分配を行うものではありません。

この「該当しない」という一文こそが、本提携のビジネスモデルを成り立たせている設計上の核心です。仕組みを理解するには、フィナンシェのプラットフォーム「FiNANCiE」上で発行されるコミュニティトークン(CT)が、技術的にも法的にも何であるかを押さえる必要があります。

コミュニティトークンの実態:FiNANCiE内で完結する「デジタルグッズ」

意外に思われるかもしれませんが、地域事業者がFiNANCiEで発行する「コミュニティトークン」は、FiNANCiE利用規約上「デジタルグッズ」と定義されており、FiNANCiEサービス内でのみ流通します。購入の事実はブロックチェーン上に記録されますが、保有・移転の管理はFiNANCiEプラットフォーム上で完結しており、外部ウォレットへの出金等には対応していない実装となっています。

フィナンシェの利用規約には、コミュニティトークンが「株式を含む有価証券、前払式支払手段、法定通貨または暗号資産(仮想通貨)いずれでもありません」と明記されています。

一方、同じフィナンシェが発行する「フィナンシェトークン(FNCT)」のほうは、Ethereumブロックチェーン上で発行され、Polygon上で流通する正真正銘の暗号資産です。国内取引所のCoincheckやOKCoinJapan(現OKJ)で売買され、金融庁登録の暗号資産交換業者を通じて流通します。

つまりフィナンシェは、「規制対象の暗号資産(FNCT)」と「規制対象外のサービス内デジタルグッズ(CT)」を意図的に分離した二層構造を採用しています。地域事業者や自治体が発行するのは後者であり、これによって有価証券規制も暗号資産規制も回避できる設計になっているのです。

なぜ「該当しない」ことが価値になるのか

もし地域事業者が発行するトークンが「暗号資産」に分類されれば、発行者・取扱業者は資金決済法上の暗号資産交換業の登録が必要になり、金融庁の厳しい監督下に入ります。利用者保護のための分別管理、本人確認(KYC)、リスク情報の開示など、対応コストは中小事業者にとって極めて重いものになります。

もし「有価証券」に分類されれば、金融商品取引法上の開示義務(有価証券届出書など)が発生し、無登録での発行・募集は犯罪となります。クラウドファンディングの一種である「電子記録移転権利」として扱われた場合でも、第一種金融商品取引業の登録が必要となります。

地方の中小事業者や自治体プロジェクトが、こうした重い規制対応をクリアして資金調達することは現実的ではありません。だからこそフィナンシェは、規制の網の目をくぐり抜けるルートを切り拓いたわけです。

ここに、Web3を「謳う」サービスとブロックチェーン技術との微妙な距離感があらわれています。利用者の体験としては「トークンを買って応援し、価格変動を楽しみ、二次流通で売却益も得られる」という、株式投資にも似た感覚が成立しています。にもかかわらず、法的にはあくまで「サービス内のデジタルグッズ」であり、株式でも暗号資産でもないというのが、この仕組みの妙味です。

「疑似株主」の限界:何が約束されていないのか

リリースが「疑似株主的」と表現するように、コミュニティトークン保有者は株主に「似た」立場に置かれます。しかし、似ているのは熱量・愛着・参加の動機であって、株主が法的に保障されている権利の多くは存在しません。

つまり「疑似株主」とは、株主らしい体験を提供する一方で、株主としての法的保護は提供しないモデルです。この非対称性をどう評価するかは、立場によって分かれるでしょう。

地域事業者の側から見れば、上場や第三者割当のような重い手続きなしに、ファンとの強固なエンゲージメントを獲得できる革命的な仕組みです。一方、トークン購入者の側から見れば、株式と同等のリスクを負いながら、株式が持つ法的保護を欠いた状態で「応援」と「投資」の境界線上に立たされることになります。

リリースが「金銭的価値の保証や収益の分配を行うものではありません」と明示しているのは、こうしたリスクの所在を購入者に認識させるためであり、同時に発行者・プラットフォーム側を法的責任から切り離すための線引きでもあります。

海外の動きとの対比:米国は「証券か否か」を真正面から議論している

日本がトークンの法的位置づけをある種の「グレーゾーン運用」で進めてきた一方、米国では真正面からの議論が動いています。

米SECのAtkins議長は2025年11月12日、「Project Crypto」と題する演説で、SEC v. W.J. Howey Co.(1946年)を起点とするトークン分類体系の方向性を示しました。「デジタル株式や債券のように振る舞うトークンは引き続き有価証券として規制されるが、初期の資金調達に関連付けられるトークンは、そのことだけを理由に有価証券として扱われない」という方針を示しました。

さらに2026年に入ると、SECの法人金融部はトークン化証券に関する声明を発表し、暗号資産を5つのカテゴリ(デジタル商品、デジタル収集品、デジタルツール、ステーブルコイン、デジタル証券)に分類する枠組みを示しています。トークンの性質・用途・機能に応じて分類し、それぞれに適用される規制を明確化するアプローチです。

米国の議論は、Howey test(投資契約に該当するか否かの判定基準)という80年来の枠組みを再解釈しながら、トークンが「証券か否か」を逐次判断していく方向に向かっています。

これに対して日本の「コミュニティトークンは暗号資産でも有価証券でもない」という整理は、トークンの実質的な機能(価格変動を伴う取引、二次流通の存在、収益期待の喚起)を問わず、技術的な実装とサービス上の規約定義によって規制を回避する道筋を選んでいます。

どちらが優れているかは一概には言えません。米国型は明確な分類による予見可能性を高める一方、新興事業者にとっては規制対応コストが重くなります。日本型は中小事業者の参入障壁を下げる一方、購入者保護の仕組みが事業者の自主的な情報開示と利用規約に委ねられがちです。

日本の規制も動いている:「該当しない」状態がいつまで続くか

ここで見逃せないのが、日本の規制も2025年から大きく動いていることです。

金融庁の「暗号資産制度ワーキング・グループ」は2025年7月から議論を本格化させ、2025年11月7日の第5回会合では、暗号資産の発行・流通に関する情報提供規制の方向性が議論されています。具体的には、暗号資産を金融商品取引法上の「金融商品」と位置づけ、業として売買等を行う場合に第一種金融商品取引業に相当する規制を課す方向で検討されています。

現状の議論はあくまで「暗号資産」を対象としていますが、トークンの実質的機能を重視する規制アプローチが進めば、いつまで現在の整理が通用するかは不透明です。とくに、二次流通市場で価格が変動し、利益期待が喚起される場合は、米国のHowey test的な「投資契約該当性」の議論が日本でも援用される可能性があります。

電算システム・フィナンシェ陣営にとって、本提携は規制環境が比較的緩い「いま」を捉えて、地域でのユースケースを既成事実化していく動きとも読めます。共創プロジェクト第一弾を2026年8月頃に予定しているのは、規制議論の本格化と並行して、社会実装の実績を積み上げる戦略でしょう。

ステーブルコイン決済との接続:規制と非規制の「橋」を架ける

注目すべきもう一つの点は、本提携が「リアル経済圏との接続」として、ステーブルコイン決済を明示的に組み込んでいることです。電算システムは2024年5月にJPYCと資本業務提携、2025年8月に三井住友銀行・Ava Labsとステーブルコイン共同検討の基本合意、2025年9月にJPYCの社会実装に向けた共同検討の基本合意と、ステーブルコイン関連の動きを矢継ぎ早に進めてきました。

ステーブルコインは2023年6月施行の改正資金決済法で「電子決済手段」として位置づけられ、銀行・資金移動業者・信託会社が発行できる規制対象資産です。つまり、コミュニティトークン(規制対象外のサービス内デジタルグッズ)とステーブルコイン(規制対象の電子決済手段)を一つのプラットフォームで併用することで、「熱量の循環」を担うコミュニティトークンと、「決済の媒介」を担うステーブルコインを役割分担させる構造になります。

これは規制設計の観点からも巧妙で、利用者が地域の店舗で実際に支払いをする局面では規制対象のステーブルコインを使い、コミュニティ内での応援や保有による価値変動は規制対象外のCTで担う。「該当しない」ものと「該当する」ものを組み合わせて、シームレスな体験を作り出そうとしているわけです。

トークン参加におけるリスクと留意点

地域創生×Web3という枠組みは、響きとしてはポジティブです。しかし、その裏側で何が起きているかを正確に把握しないまま「応援」に参加すると、思わぬリスクを背負う可能性があります。

トークンを購入する側にとって押さえておくべき点は、以下のとおりです。

  • 自分が買っているものは法的には「サービス内のデジタルグッズ」であり、株式でも暗号資産でもない
  • 金銭的価値の保証はない。プロジェクトオーナーがサービスを離れれば価値はゼロになる可能性がある
  • 二次流通で価格は上下するが、それは「投資商品」としての保護を受けるものではない
  • 「疑似株主」の「疑似」の部分が何を意味するか、自分なりに理解しておく必要がある

地域事業者・自治体の側にとって、この仕組みは確かに新しい資金調達と関係人口創出の手段です。しかし、トークン購入者との関係は、株主との関係とは異なる責任の構造を持ちます。法的な義務がないからこそ、自主的な情報開示と誠実な運営がコミュニティの持続性を決めることになるでしょう。

そして規制当局——日本の金融庁が現在進めている暗号資産制度の見直し議論が、今回のような「該当しない」スキームをどう扱うかは、今後数年のWeb3地域創生の行方を大きく左右することになりそうです。

【用語解説】

Web3
ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットの概念。特定の企業や機関が中央管理するのではなく、ネットワーク参加者全体でデータや資産を管理する仕組みを指す。現在の「Web2.0」(プラットフォーム企業が情報を集中管理する形態)への対比として語られることが多い。

DAO(分散型自律組織、Decentralized Autonomous Organization)
スマートコントラクト(ブロックチェーン上で自動実行されるプログラム)によって運営ルールを定め、トークン保有者の投票で意思決定を行う組織形態。管理者を持たず、参加者全員が組織の方針に関与できる点が特徴。ただし法的な人格を持たないため、日本では法的位置づけが未確立の状態にある。

コミュニティトークン(CT)
FiNANCiEプラットフォーム上でプロジェクトオーナーが発行するデジタルグッズ。株式・暗号資産・前払式支払手段のいずれにも該当しないサービス内コンテンツとして設計されており、プラットフォーム内での二次売買が可能。価格は需給によって変動する。

FNCT(フィナンシェトークン)
フィナンシェが発行する暗号資産(仮想通貨)。Ethereumブロックチェーン上で発行され、Polygon上で流通する。CoincheckやOKCoinJapan(現OKJ)といった国内の金融庁登録暗号資産交換業者で売買できる。コミュニティトークン(CT)とは法的位置づけが異なる別の資産。

ステーブルコイン
法定通貨(円やドルなど)と価値を連動させることで価格変動を抑えたデジタル通貨。2023年6月施行の改正資金決済法により、デジタルマネー類似型のステーブルコインは「電子決済手段」として位置づけられ、銀行・信託会社・資金移動業者が発行できる規制対象資産となっている。

貢献証明(Proof of Contribution)
個人の活動や地域への貢献をブロックチェーン上に記録する仕組み。従来の労働や金銭対価では捕捉されにくい「応援」「参加」「コミュニティへの貢献」を可視化・記録することを目的とする。今回の提携ではグループ会社・Unyteとの連携で実装が予定されている。

関係人口
定住人口でも観光客などの「交流人口」でもなく、特定の地域と継続的に関わる人々を指す政策用語。総務省が地方創生の文脈で普及させた概念で、移住や定期訪問だけでなく、地域の産品を購入したり、オンラインで地域プロジェクトを応援したりする関与も含む。

【参考リンク】

FiNANCiE(フィナンシェ)公式サイト(外部)
ブロックチェーン技術を活用したトークンコミュニティプラットフォームを運営する株式会社フィナンシェのコーポレートサイト。事業概要や最新情報を確認できる。

FiNANCiE アプリ(iOS)(外部)
スポーツ・地域・アイドルなど多様なプロジェクトのトークンを購入・売却し、コミュニティに参加できるアプリ。実際の仕組みを体験できる。

NIPPON WONDER FACTORY 公式サイト(外部)
電算システムが運営する観光・地域創生共創プロジェクトの公式サイト。参加プロジェクトの一覧や取り組み内容を確認できる。

株式会社電算システム(決済・収納代行)(外部)
コンビニ収納代行・口座振替など決済サービスのパイオニアとして、導入実績5,000社以上を誇る。今回の提携母体となる企業の事業詳細。

改正資金決済法におけるステーブルコインの規制概要(牛島総合法律事務所)(外部)
2023年6月施行の改正資金決済法による「電子決済手段」の定義と、発行者・仲介業者に課される規制の解説。ステーブルコイン決済の法的背景を理解するための参考資料。

【参考記事】

コミュニティトークン(CT)の法的位置づけと税務上の整理(村上裕一公認会計士事務所)(外部)
CTがサービス内デジタルグッズとして扱われている理由と、税務上の取り扱いを解説。本記事の「コミュニティトークンの実態」セクションの背景資料。

FiNANCiEのCT・FNCT・ポイント三層構造と法的整理(会社設立のミチシルベ)(外部)
コミュニティトークン・FNCTトークン・ポイントの三層構造を整理した解説記事。フィナンシェのビジネスモデルの法的設計を理解するための参考資料。

SEC Chairman Atkins Signals Major Shift on Crypto(Winston & Strawn)(外部)
米SECのAtkins議長が2025年11月に示したトークン分類体系の方向性を解説。日本の「該当しない」設計との対比を考える上での参照資料。

The SEC’s New Framework for Crypto Assets Under Howey(WilmerHale)(外部)
2026年3月にSECが示したデジタルアセット5分類の枠組みを解説。機能ベースの分類アプローチを詳述しており、日本の規制議論との比較に有用。

ステーブルコインに関する法規制の概要とポイント解説(EY Japan)(外部)
日本の改正資金決済法におけるステーブルコインの「電子決済手段」としての定義と、発行者・仲介者の規制体系をわかりやすく解説。

2025年改正資金決済法の概要と実務対応(BUSINESS LAWYERS)(外部)
2025年6月成立の改正資金決済法による最新の規制動向を解説。信託型ステーブルコインの裏付資産管理の柔軟化など、規制環境のアップデートを確認できる。

フィナンシェの地域創生・町おこしへの取り組み事例(あたらしい経済)(外部)
FiNANCiEが地方自治体や地域プロジェクトと連携してきた実績と関係人口創出への貢献を紹介。今回の提携が目指す地域経済圏のイメージを具体的に理解できる。

【編集部後記】

「応援」という言葉には、見返りを求めない純粋さが宿っています。しかし今回の仕組みは、その「応援」に価格変動という経済的な次元を重ねました。応援が熱量を帯びるほど価値が上がり、価値が上がれば応援の動機が変容していく——その循環は豊かさでもあり、問いでもあります。私たちが気になるのは、「疑似株主」として地域と関わることで、人と地域の関係はどう変わっていくのか、という点です。お金と感情が混ざり合ったとき、コミュニティの結びつきは強くなるのか、それとも別の何かになるのか。2026年8月に予定される第一弾プロジェクトを、引き続き注目していきたいと思います。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。