コインチェック、電子決済手段等取引業に登録完了|国内2社目でUSDCへ

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日本でステーブルコインを扱う登録を持つ会社は、これまで1社だけでした。8月27日、コインチェックが2社目として登録を完了しました。発行する側の顔ぶればかりが伝えられてきたこの分野で、今回動いたのは流通を担う側です。制度は、発行と流通をまったく別の器として扱っています。


コインチェック株式会社は2026年8月27日、資金決済法に基づく電子決済手段等取引業の登録を完了したと発表した。登録番号は関東財務局長第00002号である。金融庁の電子決済手段等取引業者登録一覧には、同社が取り扱う電子決済手段としてUSDCが記載されている。

同一覧の登録事業者は、2025年3月4日に第00001号を取得したSBI VCトレード株式会社と合わせて2社となった。コインチェックは2019年1月11日に暗号資産交換業者として関東財務局長第00014号の登録を受けており、今回の登録により、ステーブルコインおよびオンチェーン金融領域での事業展開を順次開始するとしている。USDCの取扱開始時期と提供方法は示されていない。

From: 文献リンクコインチェック、電子決済手段等取引業登録を完了

コインチェック株式会社公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

ステーブルコインの話題は、これまで「誰が出すか」に集まってきました。JPYCが資金移動業型の円建てコインを発行し、SBIグループが信託型のJPYSCを送り出す。発行体の顔ぶれが増えるたびに、日本のステーブルコインは前へ進んできたように見えていました。

今回のニュースは、その線とほぼ直交します。コインチェックが取得した電子決済手段等取引業は、コインを発行するための登録ではありません。誰かが発行したコインを、日本国内で売買したり、交換したり、預かったりする側に必要な登録です。

2023年6月に施行された改正資金決済法は、法定通貨に連動するステーブルコインを暗号資産とは別枠の「電子決済手段」と定義しました。そのうえで、発行できる主体を銀行・信託会社・資金移動業者に限り、さらに流通を担う事業者にも別の登録を求めています。発行と流通が、制度上まったく別の器に分けられているわけです。

この流通側の器には、長らく1社しか入っていませんでした。2025年3月4日に第00001号を取得したSBI VCトレードです。同社は同月26日から一般向けにUSDCの取扱いを始め、現在はRLUSDとJPYSCも扱っています。流通の器がドル建てにも円建てにも開いていることを、実地で示してきた事業者です。そこへ8月27日、コインチェックが第00002号として加わりました。

1社から2社へ、という数字は地味に見えます。ただ、比較の対象を考えると意味が変わります。暗号資産交換業者は現在27社が登録されています。それに対して、電子決済手段等取引業者として登録された事業者は、コインチェックを含めて2社です。つまりこの領域は、業界地図がすでに描き終わった場所ではなく、いま線が引かれ始めた場所です。2社目が加わったことは、1社だけだった登録制度が、複数の事業者が参入する段階へ移った節目として読むことができます。

金融庁の登録一覧が取り扱い銘柄としてUSDCを挙げていることから、コインチェックが米Circleのドル建てステーブルコインを扱う道筋が見えます。同社は2024年2月にCircleと日本市場でのUSDCアクセス拡大に向けた提携を発表しており、そのときのリリースで、取扱いには電子決済手段等取引業の登録が必要になると自ら説明していました。2024年2月に示された前提条件が、2年半後に満たされたことになります。具体的な取扱開始時期や提供方法はこれから示される段階で、登録はサービスの開始日ではなく、その手前にある入場資格だと捉えるのが正確でしょう。

読者に一点だけ、制度の読み方として共有しておきたいことがあります。金融庁は登録一覧に、掲載された電子決済手段は事業者の説明に基づき法律上の定義に該当することを確認したにすぎず、その価値を保証・推奨するものではないと明記しています。「登録された」と「国のお墨付きを得た」は、制度上まったく別のことです。この線引きは、これから国内でドル建てコインに触れる人が最初に押さえておくべきところだと思います。

もう一つ、今回の登録には別の文脈も重なります。コインチェックの代表取締役会長執行役員である蓮尾聡氏は、2026年6月30日に日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の代表理事(会長)に就任しています。コインチェックを率いる人物が、自主規制のルールを議論する場の会長も務めている。ステーブルコインの実務がこれから積み上がっていくとき、その経験が今後の自主規制の議論に接続しうる立場にある、と見ることはできます。

コインチェックは6月に、オンチェーン分析に知見を持つキリフダと協働し、法人・機関投資家向けの分析レポートの発信を始めています。オンチェーンデータを経営の判断に組み込む取り組みは、登録より前から進んでいました。ウォレット間の資金の流れや、発行と償還の動きを読むことは、ステーブルコインを扱う事業者にとって商品設計そのものに直結します。今回の登録は、取扱銘柄が1つ増えるという話ではなく、すでに動いていたオンチェーン金融の取り組みを、規制の枠の中で事業として広げるための足場です。

日本のステーブルコインには、いま二本の水路が引かれつつあります。日常の買い物や国内送金へ降りていく円建ての流れと、国境をまたぐ決済や機関投資家の資金移動につながるドル建ての流れです。前者はこの1年で、実証実験の形ながら、自販機やコンビニのPOSレジまで届きました。後者を担う電子決済手段等取引業者として登録された事業者は、コインチェックを含めて2社になったところです。どちらが本命かではなく、二本あることが日本の強みになる。その二本目の水路を広げる側に、国内最大級の利用者基盤を持つ取引所が加わったことの意味は、これから数年かけて見えてくるはずです。

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【編集部後記】

金融庁の電子決済手段等取引業者の一覧を開くと、表は2行で終わります。暗号資産交換業者の一覧が27行あり、取扱銘柄がびっしり並ぶのとは対照的な眺めです。

この2行の名簿が、5年後に何行になっているのか。増え方の速さよりも、どんな顔ぶれが並ぶのかを見ていたいと思っています。銀行なのか、通信会社なのか、それともまだ名前を知らない会社なのか。日本のステーブルコインの姿は、この名簿の顔ぶれで決まっていくはずです。


【用語解説】

電子決済手段等取引業
電子決済手段の売買・交換・媒介・取次ぎ・代理・管理などを業として行う者に必要な登録である。コインを発行する側ではなく、扱う側にかかる。2023年6月施行の改正資金決済法で整備された。

電子決済手段
改正資金決済法上の区分。法定通貨建てで、不特定の者への支払いに使え、法定通貨と交換できる財産的価値を指す。暗号資産とは法的にまったく別の枠に置かれている。

改正資金決済法
2023年6月に施行。法定通貨に連動するステーブルコインを「電子決済手段」と定義し、発行できる主体を銀行・信託会社・資金移動業者に限ったうえで、流通を担う事業者にも別の登録を求めた。

暗号資産交換業
暗号資産の売買や交換、その媒介などを行う事業者に必要な登録。ビットコインやイーサリアムを扱うための登録であり、電子決済手段等取引業とは別物である。

USDC
米Circleが発行する米ドル連動型ステーブルコイン。日本国内で扱うには、電子決済手段等取引業の登録を持つ事業者を経る必要がある。

RLUSD
米Rippleが発行する米ドル建てステーブルコイン。国内ではSBI VCトレードが取り扱う。

JPYSC
信託銀行が発行する円建てステーブルコイン。資金決済法上は「3号電子決済手段」にあたり、資金移動業型とは発行主体も保全の方法も異なる。

JPYC
資金移動業者が発行する円建てステーブルコイン。「1号電子決済手段」にあたる。同じ円建てでも、信託型とは制度上の器が違う。

償還
発行されたコインを発行体に戻し、額面どおりの法定通貨に払い戻すこと。発行が入口、償還が出口にあたり、この動きを読むことがステーブルコイン事業の実務では重要になる。

オンチェーン
取引がブロックチェーン上に直接記録される形態。誰から誰へいくら動いたかが公開データとして残るため、資金の流れを外部から分析できる。

【参考リンク】

金融庁 電子決済手段等取引業者登録一覧(外部)
登録番号、登録年月日、取り扱う電子決済手段が事業者ごとに記載された金融庁の一覧。今回の記事で用いた数値は、この一覧に基づいている。

金融庁 免許・許可・登録等を受けている事業者一覧(外部)
業態別の登録事業者一覧をまとめた金融庁のページ。暗号資産交換業者と電子決済手段等取引業者は、それぞれ別のファイルで掲載されている。

コインチェック株式会社(外部)
暗号資産取引サービス「Coincheck」を運営する会社の公式サイト。プレスリリースとお知らせがカテゴリ別に公開されている。

SBI VCトレード株式会社(外部)
電子決済手段等取引業の国内第1号登録事業者。USDCの特設ページでは、取扱いの経緯や対応するチェーンが説明されている。

一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)(外部)
資金決済法上の認定協会。規則・ガイドラインが業態別に整理されており、電子決済手段等取引業についての項目も設けられている。

キリフダ株式会社(外部)
オンチェーン金融機能の実装支援と、オンチェーン分析を手がける会社である。コインチェックとの協働レポートの相手方にあたる。

Circle(外部)
USDCの発行体。準備金の構成や、第三者機関による月次の証明報告に関する情報を公開している、米国の金融テクノロジー企業。

【参考記事】

【国内初】ステーブルコイン取扱いにかかる「電子決済手段等取引業者」登録完了のお知らせ(外部)
第00001号の登録完了を伝えたリリース。暗号資産交換業、第一種金融商品取引業と合わせ、3つのライセンス保有になると説明している。

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コインチェック、キリフダと協働で事業法人・機関投資家向けオンチェーン分析レポート「Coincheck Prime Onchain Report」の発信を開始(外部)
オンチェーンデータを経営の意思決定に組み込む取り組みを進めてきたと説明。今回の登録より前から動いていた文脈を示す資料である。

【速報】国内2社目、コインチェックが「電子決済手段等取引業」登録完了。ステーブルコイン事業に本格参入へ(外部)
2024年2月の時点で、同社の担当役員が登録手続きの進行を語っていたという経緯まで含めて伝えた、登録完了当日の速報記事。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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