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SBIとアプラスが万博成果を発展|ステーブルコインUSDC店舗決済を2026年春に開始

[更新]2025年12月27日

SBIとアプラスが万博成果を発展|ステーブルコインUSDC店舗決済を2026年春に開始 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年12月25日、SBI VCトレードと株式会社アプラスは、2026年春をめどに米Circle社が発行する米ドル建てステーブルコイン「USDC」を活用した店舗決済の実証実験を開始することを発表した。

両社は大阪・関西万博のEXPO2025デジタルウォレットの成果を発展させ、QRコードを用いたUSDC決済を実現し、インバウンド顧客を中心に国内におけるUSDC流通の実需創出を目指す。実証実験では、ユーザーがメタマスク等のプライベートウォレットにあるUSDCで店舗のQRコードを読み取り決済し、SBI VCトレードがUSDCを日本円に交換してアプラスに送金、アプラスが店舗に入金する仕組みを検証する。

SBI VCトレードは国内唯一の電子決済手段等取引業者として登録されており、アプラスはQRコードを活用した店舗決済において、幅広い加盟店への決済精算サービスを提供している。

From: 文献リンク【SBI VCトレード×アプラス】「米ドル建てステーブルコインUSDCによる店舗決済の実証実験」を来春開始のお知らせ

 - innovaTopia - (イノベトピア)
SBI VCトレード公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

今回のSBI VCトレードとアプラスによる実証実験は、日本国内でステーブルコインが「決済手段」として本格的に機能するかどうかを試す、極めて重要な試みです。2023年6月に施行された改正資金決済法によって、日本ではステーブルコインが「電子決済手段」として法的に位置づけられましたが、これまで実店舗でのステーブルコイン決済は一般化していませんでした。

この実証実験の背景には、大阪・関西万博で実施されたEXPO2025デジタルウォレットの成果があります。万博期間中、このウォレットアプリはダウンロード数約100万件を記録し、2025年9月からはUSDCに対応するなど、ステーブルコインの社会実装に向けた貴重な実績を積み重ねてきました。今回の実証実験は、この万博での知見を活かし、より実用的な決済モデルとして発展させる狙いがあります。

技術的な仕組みに注目すると、ユーザーはメタマスクなどのプライベートウォレットに保有するUSDCを使い、店舗のQRコードを読み取るだけで決済が完了します。その後、SBI VCトレードがUSDCを日本円に交換し、アプラスを通じて店舗に入金されるという流れです。これにより、店舗側は暗号資産の知識がなくても、最終的には日本円で売上を受け取ることができます。

特筆すべきは、SBI VCトレードが2025年3月に国内第1号の「電子決済手段等取引業者」として登録を完了した点です。これにより同社は、法制度に準拠した形でCircle社が発行するUSDCなど、海外発行のステーブルコインを取り扱うことができます。2025年3月に登録第1号となった同社は、法制度に準拠した形でUSDCなどのステーブルコインを取り扱えます。日本の法規制では、海外発行のステーブルコイン(外国型電子決済手段)には1回あたり100万円以下の移転額制限があり、ユーザーごとの保有残高も100万円相当額までに制限されています。こうした規制の中で、どのように実用的な決済モデルを構築できるかが実証実験の焦点となるでしょう。

インバウンド顧客を主なターゲットとしている点も戦略的です。訪日外国人観光客にとって、自国のウォレットに保有するUSDCで日本国内の店舗で直接決済できれば、両替の手間やコストを大幅に削減できます。特に現在のような円安環境下では、ステーブルコイン決済によって訪日外国人の為替コストが相対的に抑えられる可能性があり、インバウンド需要の取り込みに寄与する可能性があります。

一方で、いくつかの課題も存在します。まず、ステーブルコインの価格変動リスクです。USDCは1ドルとのペッグを維持するよう設計されていますが、市場の需給によって若干のずれが生じることがあります。また、店舗側がUSDC決済を受け入れるインセンティブをどう設計するか、決済処理のスピードや手数料体系をどう最適化するかといった実務的な課題もあります。

規制面では、今後の展開が注目されます。金融庁は2024年11月の金融審議会で、銀行によるステーブルコイン発行について慎重な姿勢を示していますが、資金移動業者や信託銀行による発行は段階的に進んでいます。2025年8月18日には国内初の円建てステーブルコインJPYCが資金移動業として認可、同年10月27日に発行が開始されており、今後はUSDCだけでなく円建てステーブルコインを活用した決済モデルの構築も期待されます。

長期的な視点で見れば、この実証実験は「国際金融都市OSAKA」という大阪府・大阪市の構想とも連動しています。ステーブルコイン決済の社会実装が進めば、大阪が国際的な金融ハブとしての地位を確立する上での重要な基盤となるでしょう。実証実験の結果次第では、加盟店網の拡大や他のウォレット・決済アプリとの連携が加速し、日本国内でステーブルコインが日常的な決済手段として定着する可能性があります。

【用語解説】

USDC(ユーエスディーシー)
米Circle社が発行する米ドル建てのステーブルコイン。1USDC=1米ドルとなるよう設計されており、発行額と同額の米ドル建て資産(米国短期国債や現金)で100%裏付けられている。世界的に最も信頼性の高いステーブルコインの一つ。

メタマスク(MetaMask)
世界で最も利用されているWeb3ウォレットの一つ。イーサリアムをはじめ、複数のブロックチェーンに対応し、暗号資産やNFTの管理、DeFiサービスへのアクセスが可能。

EXPO2025デジタルウォレット
大阪・関西万博の公式デジタルウォレットアプリ。キャッシュレス決済やポイント獲得、NFT収集などの機能を備え、2025年9月からUSDCに対応した。万博終了後は「HashPort Wallet」にリニューアルされた。

国際金融都市OSAKA
大阪府・大阪市が推進する、大阪を国際的な金融ハブとして発展させる構想。デジタル金融やフィンテック分野での先進的な取り組みを通じて、国内外の金融機関や企業の誘致を目指している。

電子決済手段等取引業者
電子決済手段の売買や交換、仲介などを業として行う事業者に対する登録制度。海外発行のステーブルコインを取り扱う際に必要となる。SBI VCトレードは2025年3月に国内第1号(登録番号:関東財務局長第00001号)として登録を完了した。

※記者追記:
資金移動業者
資金決済法に基づき、銀行以外の事業者が為替取引(送金サービス)を行うための登録制度。ステーブルコインを自ら発行・償還する場合はこの登録が必要となる。JPYC株式会社は2025年8月に資金移動業者として登録を完了し(登録番号:関東財務局長第00099号)、円建てステーブルコインJPYCの発行を開始した。電子決済手段等取引業者とは業態が異なり、前者は自ら発行、後者は仲介を行う。

【参考リンク】

SBI VCトレード(外部)
国内唯一の電子決済手段等取引業者として登録された暗号資産取引所。USDCをはじめとするステーブルコインを法制度に準拠した形で取り扱う。

株式会社アプラス(外部)
SBI新生銀行グループの決済事業会社。カード、ショッピングクレジット、ペイメント事業を展開し、QRコード決済で豊富な加盟店網を持つ。

Circle(サークル)(外部)
米国のフィンテック企業で、USDCの発行元。ニューヨーク州金融サービス局からライセンスを取得し、EUの暗号資産市場規制(MiCA)にも準拠。

大阪・関西万博公式サイト(外部)
2025年4月13日から10月13日まで開催された大阪・関西万博の公式ウェブサイト。EXPO2025デジタルウォレットに関する情報も掲載。

HashPort(外部)
大阪・関西万博のEXPO2025デジタルウォレットを開発した企業。万博終了後はHashPort Walletとしてステーブルコイン対応サービスを提供。

JPYC株式会社(外部)
日本初の円建てステーブルコインJPYCを発行する企業。2025年8月に資金移動業者として金融庁から認可を受けた。

MetaMask(メタマスク)(外部)
世界で最も利用されているWeb3ウォレット。イーサリアムをはじめとする複数のブロックチェーンに対応し、DeFiやNFTサービスへのアクセスが可能。

【参考記事】

大阪・関西万博で約100万ダウンロードの「EXPO2025デジタルウォレット」が、10月31日に「HashPort Wallet」としてリニューアル(外部)
HashPort公式サイトより、EXPO2025デジタルウォレットのダウンロード数が約100万件に達したこと、万博終了後もHashPort Walletとして継続される計画が詳述されている。

USDCの概要|投資家視点で見る特徴と日本における今後の展望 – SBI VCトレード(外部)
USDCの仕組みや準備金構成、日本国内での規制状況について詳細に解説。SBI VCトレードが国内初の電子決済手段等取引業者として登録完了した経緯を説明。

【コラム】日本におけるステーブルコインと関連する決済サービスの規制動向 – 東京国際法律事務所(外部)
日本におけるステーブルコインの法的位置づけと規制の詳細を解説。デジタルマネー型と暗号資産型の2種類に分類される仕組みが説明されている。

金融庁 事務局説明資料 2024年11月21日(外部)
金融審議会でのステーブルコイン規制に関する最新の議論内容。電子決済手段の発行者や仲介業者に関する規制の枠組み、銀行による発行の慎重論などを記載。

【編集部後記】

ステーブルコインが日常の買い物で使える時代が、いよいよ現実味を帯びてきました。みなさんは、海外旅行で両替の手数料に驚いた経験はありませんか。訪日する外国人観光客も同じ課題を抱えています。USDCのような米ドル建てステーブルコインで直接決済できれば、こうした摩擦は大きく減らせるかもしれません。

一方、日本では2025年8月にJPYCという円建てステーブルコインも誕生しており、外貨建てと自国通貨建て、それぞれのステーブルコインがどのように使い分けられていくのかも興味深い点です。価格変動リスクや法規制、店舗側の受け入れ体制など、課題も少なくありません。みなさんなら、ステーブルコイン決済が普及した未来をどう描きますか。決済手段の選択肢が増えることは、私たちの暮らしをどう変えていくでしょうか。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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