SaaS(Software as a Service)市場に関する最新の動向と予測について、以下の要点が明らかになった。
- 国内SaaS市場規模:
- 2023年:約1.4兆円
- 2027年予測:2兆円超(2023年からの年平均成長率11%)
- カテゴリ別成長率予測(2022年〜2027年):
- 業務システム:年平均成長率15.5%
- プラットフォーム/インフラ:年平均成長率13.4%
- Gartnerの調査結果(2023年4月実施):
- 80%以上の企業がソフトウェア/クラウド契約に不満
- 主な不満:料金の値上がり、サービスレベルの不透明さ、契約ポリシーの一方的変更
- SaaS管理ツール「Nudge Security」の主な機能:
- 組織内で使用されているSaaSアプリの発見と分類
- 類似ツール間のユーザー重複の視覚化
- ベンダーのセキュリティプロファイル評価
- SaaS支出データの比較
- 継続的なSaaS拡散の抑制
- 2024年のSaaS市場予測:
- AI-Native企業の台頭
- 既存SaaS企業によるAI機能の組み込み加速
これらの動向は、SaaS市場の継続的な成長と、AI技術の統合による新たな展開を示唆している。
from:How to Reduce SaaS Spend and Risk Without Impacting Productivity
【編集部解説】
SaaS(Software as a Service)の利用拡大に伴う課題と、その解決策としてのSaaS管理ツールについて、より詳しく解説いたします。
まず、SaaSの急速な普及は、生産性向上という明確なメリットがあるからこそ進んでいます。しかし、その一方で、セキュリティリスクの増大や予期せぬコスト増加といった課題も浮き彫りになってきています。
特に注目すべきは、「シャドーIT」と呼ばれる現象です。これは、従業員が個人的に、あるいは部署単位でSaaSツールを導入することを指します。便利なツールを素早く導入できる反面、IT部門の管理が行き届かず、セキュリティホールになる可能性があります。
また、SaaS支出の管理も大きな課題となっています。Gartnerの調査によると、企業のSaaS契約の約25%が未使用または過剰に導入されているとされています。これは、年間で数百万円から数千万円規模の無駄遣いにつながる可能性があります。
このような状況に対応するため、Nudge SecurityなどのSaaS管理ツールが注目を集めています。これらのツールは、組織内で使用されているSaaSアプリを自動的に発見し、分類する機能を持っています。さらに、類似ツール間のユーザー重複を視覚化したり、ベンダーのセキュリティプロファイルを評価したりすることで、効率的なSaaS管理を支援します。
しかし、ツールの導入だけでは十分ではありません。効果的なSaaS管理には、IT部門、財務部門、各事業部門が連携して取り組む必要があります。例えば、新しいSaaSツールの導入プロセスを明確化し、定期的な利用状況の確認と最適化を行うといった組織的な取り組みが重要です。
また、SaaS管理の重要性は、今後さらに高まると予想されます。AI技術の進展により、AI機能を組み込んだSaaSツールが増加すると見込まれており、これらの管理はより複雑になる可能性があります。
一方で、SaaS管理を適切に行うことで得られるメリットも大きいです。コスト削減はもちろん、セキュリティリスクの低減、コンプライアンスの向上、さらには従業員の生産性向上にもつながります。
最後に、SaaS管理は単なるコスト削減や規制遵守のためだけではなく、デジタルトランスフォーメーションを成功させるための重要な要素であることを強調したいと思います。適切なSaaS管理を通じて、組織はより柔軟で効率的な業務環境を構築し、競争力を高めることができるのです。
【用語解説】
- シャドーIT:
社内のIT部門が把握していない、従業員が個人的に導入したITツールやサービスのことです。例えるなら、会社の公式制服以外に従業員が勝手に着ている私服のようなものです。 - CASB(Cloud Access Security Broker):
クラウドサービスの利用を可視化し、セキュリティポリシーに基づいて制御するツールです。これは、クラウドサービスの利用を監視する警備員のようなものと考えられます。
【参考リンク】
- Nudge Security(外部)
説明:SaaS管理とセキュリティを自動化するプラットフォームを提供する企業。シャドーITの発見や、SaaS支出の最適化を支援します。 - Gartner(外部)
説明:IT分野の調査・助言を行う世界的な企業。SaaS市場動向やIT支出に関する調査レポートを発表しています。