Last Updated on 2024-09-23 09:02 by admin
2024年9月21日、ウクライナ政府は国家安全保障上の理由から、政府職員、軍人、防衛および重要インフラ関連の従業員に対し、公用デバイスでのTelegramの使用を禁止した。
この決定は、ウクライナのサイバーセキュリティ国家調整センター(NCCC)がFacebookで発表した。
ウクライナ国防省情報総局(GUR)のキリロ・ブダノフ長官は、Telegramの問題は言論の自由ではなく、国家安全保障の問題だと述べた。
ウクライナ国家安全保障防衛会議(NSDC)によると、Telegramは敵(ロシア)によってサイバー攻撃の実行、フィッシングメッセージやマルウェアの拡散、ユーザーの位置追跡、ドローンやミサイルによるウクライナ施設の標的化のための情報収集に積極的に利用されているという。
ただし、この禁止措置は個人の携帯電話や、公務の一環としてアプリを使用する人々には適用されない。
Telegram側は、ロシアを含むいかなる国にも個人データを提供していないこと、削除されたメッセージは永久に削除され復元不可能であることをロイター通信に対して述べた。
この決定は、Telegramの最高経営責任者(CEO)が児童ポルノ、麻薬取引、詐欺に関連する調査で逮捕され、その後保釈された数週間後に行われた。
【編集部解説】
ウクライナ政府によるTelegramの使用禁止措置は、サイバーセキュリティと国家安全保障の観点から非常に重要な決定です。この判断の背景には、ロシアによるサイバー攻撃や情報収集の脅威が深刻化していることがあります。
Telegramは、その高度な暗号化技術と匿名性で知られるメッセージングアプリですが、同時にこれらの特徴が悪用される可能性も指摘されてきました。ウクライナ政府の懸念は、ロシア情報機関がTelegramを通じてユーザーの個人情報や通信内容にアクセスできるという点にあります。
特に注目すべきは、削除されたメッセージまでもが復元可能だという指摘です。これは、Telegram側の主張と矛盾しており、アプリのセキュリティに対する信頼性に疑問を投げかけています。
一方で、この禁止措置は公用デバイスに限定されており、個人の使用は制限されていません。これは、情報の自由な流通と国家安全保障のバランスを取ろうとする試みと言えるでしょう。
この決定は、デジタル時代における国家安全保障の在り方に一石を投じています。技術の進歩により、コミュニケーションツールが国家間の情報戦の舞台となる現実を私たちは目の当たりにしています。
今回の措置は、他国にも影響を与える可能性があります。特に、地政学的な緊張が高まっている地域では、同様の対応を検討する国が出てくるかもしれません。
一方で、Telegramのような広く普及したアプリの使用制限は、情報共有や業務効率に影響を与える可能性もあります。代替手段の確保や、新たなセキュアな通信プラットフォームの開発が急務となるでしょう。
この事例は、テクノロジーの発展とともに、国家安全保障の概念も進化していく必要性を示しています。今後は、プライバシーの保護と国家安全保障のバランスを取りながら、より安全で信頼性の高い通信手段の開発が求められるでしょう。