ロシアの通信傍受システム「SORM」が、中央アジアとラテンアメリカの複数国で導入が進んでいることが、脅威インテリジェンス企業Recorded Futureの2025年1月7日の報告で明らかになりました。
SORMは通信事業者の施設内に設置された監視装置を通じて、携帯電話番号、位置情報、メールアドレス、IPアドレスなどの情報を政府機関に提供します。
特にニカラグアでは、2018年の学生による抗議活動の際にSORMを使用して350人以上の活動家を特定し、弾圧につながった事例が報告されています。
主要なSORMプロバイダーはCitadel社、Norsi-Trans社、Protei社の3社で、アフリカや中東でも展示会に参加するなど、さらなる市場拡大を目指しています。
from:Russia Carves Out Commercial Surveillance Success Globally
【編集部解説】
SORMシステムの世界展開は、デジタル監視技術の新たな転換点を示しています。これまでイスラエル、イタリア、インドが商用スパイウェア市場を主導してきましたが、ロシアが第4の主要プレイヤーとして台頭してきました。
特筆すべきは、SORMがロシア国内では1995年から運用されている成熟した技術だという点です。通信事業者に導入が義務付けられており、事業者自身はシステムへのアクセスや監査権限を持っていないという特徴があります。
地政学的な影響
この展開は、単なる通信監視の問題を超えて、国際的な情報収集の力学に大きな影響を与える可能性があります。特に注目すべきは、ラテンアメリカでの展開です。ニカラグアのセロ・モコロン軍事施設やベネズエラのフエルテ・ティウナなど、重要な施設にSORMが導入されています。
セキュリティリスク
2018年のニカラグアの事例は、この技術の実際の使用例として注目に値します。学生による抗議活動の際、WhatsAppの通信を監視することで抗議活動のリーダーを特定し、350人以上の死者を出す弾圧につながったとされています。
将来的な展望
ロシアの主要なSORMプロバイダーであるProtei社は、アフリカ、中東、ラテンアメリカの展示会に積極的に参加しており、さらなる市場拡大を目指しています。
特に懸念されるのは、犯罪組織による技術の取得です。パラグアイやホンジュラス、メキシコの主要カルテルなどの犯罪組織が、ロシアの監視技術を入手しているという報告もあります。
企業への影響
グローバルに事業を展開する企業にとって、各国の監視体制の違いを理解し、適切な対策を講じることが重要になってきています。VPNの使用だけでは十分な対策とならない可能性があり、より包括的なセキュリティ対策が必要とされています。
このような状況下で、企業は従業員の海外での通信セキュリティについて、より慎重な対応を求められることになるでしょう。