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Google、Wizを320億ドルで買収へ – マルチクラウドセキュリティ市場に地殻変動

Google、Wizを320億ドルで買収へ - マルチクラウドセキュリティ市場に地殻変動 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-03-19 10:19 by admin

Googleの親会社Alphabetは2025年3月18日、クラウドセキュリティスタートアップのWizを320億ドル(約4.8兆円)の全額現金で買収することで合意したと発表した。

この買収はGoogleにとって過去最大規模であり、テクノロジー業界における2025年最大の企業買収案件となっている。

Wizは2020年に設立されたイスラエル発のクラウドセキュリティ企業で、CNAPP(Cloud-Native Application Protection Platform)と呼ばれるクラウドセキュリティプラットフォームを提供している。このプラットフォームは、企業がマルチクラウド環境全体でセキュリティリスクを検出・管理するのを支援する。

Google Cloud CEOのThomas Kurian氏によると、買収後もWizのサービスはAmazon Web Services、Microsoft Azure、Oracle Cloudなど、すべての主要クラウドプラットフォームで引き続き利用可能となる予定だ。GoogleはWizのプラットフォームとGoogle Security Operations(以前はGoogle Chronicleとして知られていたAI駆動のSecOpsプラットフォーム)を統合する計画を持っている。

Wizの共同創業者兼CEOのAssaf Rappaport氏は、この買収により「単独企業としてできることよりもさらに速く実行し革新することができるようになる」と述べている。

この買収は規制当局の承認など通常の完了条件を前提として、2026年に完了する見込みである。

from:Google to Acquire Wiz for $32B in Multicloud Security Play

【編集部解説】

Googleによる320億ドル(約4.8兆円)のWiz買収は、クラウドセキュリティ市場における歴史的な一大転換点となる可能性を秘めています。この買収はGoogleにとって過去最大規模であるだけでなく、テクノロジー業界全体でも2025年最大の買収案件となりました。

まず注目すべきは、この買収の背景にあるクラウドコンピューティング市場の激しい競争です。GoogleはAmazon Web Services(AWS)とMicrosoft Azureに次ぐ第3位のクラウドプロバイダーとして、市場シェアの拡大を目指しています。クラウドセキュリティは企業のクラウド採用を促進する上で最も重要な要素の一つであり、Wizの買収はGoogleのセキュリティケイパビリティを大幅に強化することになるでしょう。

Wizが提供するCNAPPは、複数のクラウド環境にまたがるセキュリティリスクを検出・管理するプラットフォームです。現代の企業は単一のクラウドプロバイダーに依存するのではなく、複数のクラウドサービスを併用する「マルチクラウド」戦略を採用する傾向が強まっています。Gartnerの調査によれば、2025年までに企業の80%以上がマルチクラウド戦略を採用すると予測されており、Wizのソリューションはこうした複雑な環境に対応できる点が強みとなっています。

この買収がもたらす影響は多岐にわたります。まず、クラウドセキュリティ市場の競争構造が大きく変わる可能性があります。これまでPalo Alto Networks、CrowdStrike、Wiz、Orcaなどが競争していた市場に、Googleという巨大プレイヤーが本格参入することになります。特に注目すべきは、GoogleがWizのマルチクラウド機能を維持すると約束している点です。これにより、GoogleはAWSやAzureなど競合クラウドプラットフォーム上でも顧客にセキュリティサービスを提供できるようになります。

一方で、この買収には潜在的なリスクも存在します。Wizの顧客の多くは、AWS、Azure、Oracle Cloudなど複数のクラウドプラットフォームを利用しています。Googleは買収後もWizのサービスを他のクラウドプロバイダーでも利用可能にすると約束していますが、実際にどこまで中立性を維持できるかは不透明です。Wizの既存顧客が離れてしまう「顧客流出リスク」は、Googleが最も警戒すべき課題でしょう。

AIの急速な普及に伴い、クラウドセキュリティの重要性はますます高まっています。AIは新たなセキュリティリスクをもたらす一方で、セキュリティ対策自体もAIによって強化されています。GoogleはWizの技術とAI専門知識を組み合わせることで、次世代のクラウドセキュリティソリューションの開発を加速させる狙いがあるのでしょう。

この買収は2026年の完了を予定していますが、規制当局の審査が最大の関門となります。特に、マルチクラウド環境におけるGoogleの影響力拡大が競争を阻害しないかという点が焦点になるでしょう。

【用語解説】

CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)
クラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォームの略。マルチクラウド環境全体でアプリケーション、データ、インフラを保護するための統合セキュリティソリューションである。従来の個別のセキュリティツールを統合し、クラウド環境全体を一元的に監視・保護する。

マルチクラウド
複数のクラウドプロバイダーのサービスを同時に利用する戦略。例えば、AWSでデータ処理、Azureでアプリケーション実行、GCPでAI機能を利用するといった形態。単一のクラウドプロバイダーに依存するリスクを軽減し、各プロバイダーの強みを活かせるメリットがある。

Google Cloud Platform(GCP)
Googleが提供するクラウドコンピューティングサービス群。コンピューティング、データストレージ、データ分析、機械学習などのモジュラークラウドサービスを提供している。世界市場シェアでは約11%でAWS(31%)、Microsoft Azure(25%)に次ぐ第3位のポジションにある。

Google Security Operations
以前はGoogle Chronicleとして知られていたGoogleのAI駆動のセキュリティ運用プラットフォーム。セキュリティチームがセキュリティデータを収集・分析し、脅威を検出・調査・対応するのを支援する。

セキュリティオーケストレーション:
セキュリティツールやプロセスを統合的に管理・自動化する技術。

ゼロトラストアーキテクチャ:
信頼できるエンティティが存在しない前提で、すべてのアクセスを検証するセキュリティアプローチ。

クラウドセキュリティガバナンス:
クラウド環境におけるセキュリティポリシーとコンプライアンスを管理するための枠組み。

【参考リンク】

Wiz公式サイト(外部)
予防と対応機能を備えた統合クラウドセキュリティプラットフォームを提供するクラウドセキュリティ企業

Google Cloud公式サイト(外部)
コンピューティング、データストレージ、AI、機械学習などの幅広いクラウドサービスを提供するGoogleのクラウドプラットフォーム

Orca Security公式サイト(外部)
エージェントレスでクラウド環境のセキュリティリスクを可視化するクラウドセキュリティプラットフォーム

【編集部後記】

皆さんの組織ではクラウド環境のセキュリティ対策はどのように進めていますか?マルチクラウド戦略を採用している企業が増える中、GoogleによるWiz買収は今後のクラウドセキュリティの在り方を大きく変えるかもしれません。自社のクラウド環境を見直す良い機会かもしれませんね。クラウドセキュリティについて気になることや、この買収についてのご意見があれば、ぜひSNSでお聞かせください。皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

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TaTsu
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