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CyberAv3ngers、イラン軍事力弱体化で米国インフラへサイバー報復? 専門家が警告

CyberAv3ngers、イラン軍事力弱体化で米国インフラへサイバー報復? 専門家が警告 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-16 07:48 by admin

2025年6月13日、イスラエルがイランの核施設と軍司令官を攻撃し、その後14-15日にかけて攻撃が継続・拡大した。

イスラエルは14日にイラン南部ブシェール州の石油ガス施設をドローンで攻撃し、施設が爆発・炎上した。

イランも14日夜から15日にかけてミサイル攻撃で反撃し、イスラエル北部ハイファや中部バトヤムで子どもを含む11人が死亡、約200人が負傷した。

戦争専門家は、軍事力が弱体化したイランがサイバー攻撃で報復し、その標的が米国にまで拡大する可能性があると分析している。

元ホワイトハウス顧問でCyber Threat Alliance代表のマイケル・ダニエル氏は、イスラエルとイラン両国がDDoS攻撃からワイパー攻撃まで幅広いサイバー能力を保有していると述べた。

2023年にイランのCyberAv3ngersは複数の米国水道システムに侵入した実績があり、専門家は水道、電力、交通インフラへのワイパーやNotPetyaスタイルのランサムウェア攻撃を予測している。この状況を受けて米国・イラン間の核協議は中止となった。

From: 文献リンクCyber weapons in the Israel-Iran conflict may hit the US

【編集部解説】

今回のイスラエル・イラン軍事衝突は、わずか3日間で物理攻撃からサイバー戦争の脅威まで急速に拡大し、現代戦争の新たな局面を示す重要な転換点となっています。特に注目すべきは、攻撃対象が軍事施設からエネルギーインフラへと拡大し、民間への影響が深刻化していることです。

イランの反撃により、イスラエル側で13名の死者が発生したことで、紛争は新たな段階に入りました。これまでの限定的な軍事行動から、より広範囲な報復の連鎖へと発展する可能性が高まっています。特にイスラエルによるイラン南部ブシェール州の石油ガス施設への攻撃は、エネルギー安全保障という新たな戦線を開いたと言えるでしょう。

この物理的な攻撃の激化と並行して、サイバー戦争の脅威も増大しています。イランは従来から国家支援のサイバー攻撃グループを育成してきましたが、軍事的劣勢に陥った現在、サイバー攻撃への依存度がさらに高まることが予想されます。

特に懸念されるのは、攻撃対象が地理的境界を越えて米国にまで拡大する可能性です。2023年のCyberAv3ngersによる米国水道システムへの侵入事例では、攻撃者が自身の持つアクセス権限を十分に理解していなかったため大きな被害は発生しませんでしたが、今回は状況が異なります。

さらに深刻なのは、この紛争が国際的な外交プロセスにも影響を与えていることです。米国・イラン間の核協議中止は、地域の安定化に向けた外交努力が軍事的エスカレーションによって阻害されていることを示しています。

イランが中国やロシアとの同盟関係を活用する可能性も高まっており、地域紛争が大国間の代理戦争へと発展するリスクも無視できません。特に中国がイラン石油の最大輸入国であることを考慮すると、エネルギー施設への攻撃は中国の経済的利益に直接影響を与える可能性があります。

この状況は、現代のハイブリッド戦争がいかに迅速に拡大し、物理的・デジタル・外交的な複数の次元で同時に展開されるかを示す典型例となっています。

【用語解説】

ハイブリッド戦争
物理的な軍事攻撃とサイバー攻撃を組み合わせた現代の戦争形態。従来の軍事力に加えて、情報戦、サイバー攻撃、経済制裁などを統合的に活用する戦略である。

DDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃)
複数のコンピューターから同時に大量のアクセス要求を送信し、標的のサーバーやネットワークを過負荷状態にして正常なサービス提供を妨害するサイバー攻撃手法。

ワイパー攻撃
標的システムのデータを完全に削除・破壊することを目的とした破壊的サイバー攻撃。復旧が困難で、システムの機能を長期間停止させる効果がある。

プログラマブルロジックコントローラー(PLC)
産業用の固体コンピューターで、入力と出力を監視し、自動化されたプロセスや機械に対して論理ベースの決定を行う装置。水道、電力、製造業などの重要インフラで広く使用されている。

イスラム革命防衛隊(IRGC)
イランの軍事組織で、通常軍とは別に設立された精鋭部隊。国外での秘密作戦やサイバー攻撃活動も担当している。

APT(Advanced Persistent Threat)
高度で持続的な脅威を意味し、国家や組織が長期間にわたって標的に潜入し、情報収集や破壊活動を行う高度なサイバー攻撃手法。

ブシェール州
イラン南部のペルシャ湾に面する州で、同国最大のガス田や重要な石油関連施設が集中している。今回のイスラエル攻撃の標的となった。

【参考リンク】

Reuters Japan(外部)
国際的な通信社ロイターの日本語サイト。中東情勢やサイバーセキュリティに関する専門的な報道を行っている。

Cyber Threat Alliance(外部)
サイバー脅威情報の共有を目的とした非営利組織。マイケル・ダニエル氏が代表を務める。

Foundation for Defense of Democracies(外部)
2001年に設立された外交政策と国家安全保障に焦点を当てた非営利政策研究所。

【参考動画】

Cyber Threat Allianceの設立10周年を記念し、創設CEOたちが脅威情報共有の重要性と今後の展望について議論するパネルディスカッション。マイケル・ダニエル氏が司会を務める。

【参考記事】

イスラエルが”再び攻撃” イラン核施設内部では汚染発生か – NHK(外部)2025年6月13日のイスラエルによるイラン攻撃について、核施設での汚染発生の可能性も含めて詳細に報道。

イラン核施設被害は「限定的」、専門家がイスラエル攻撃後の画像分析 – Reuters(外部)衛星画像分析により、イランの主要核施設への被害は限定的であることを専門家が確認。

イランとイスラエル、紛争は拡大の一途 互いに攻撃姿勢崩さず – 毎日新聞(外部)6月14-15日の攻撃継続について詳細に報道。イスラエル側の死者13名、米国・イラン核協議の中止について包括的に解説。

Escalating Tensions Between Iran and Israel (June 2025) – Lansing Institute(外部)
2025年6月のイスラエル・イラン間の軍事的緊張の高まりについて分析。地域情勢の変化の背景を詳述。

Iran’s Cyber Strategy and the Israel-Iran Conflict – SecAlliance(外部)
2025年6月13日のイスラエルによるイラン攻撃を受けて、イランのサイバー戦略と報復の可能性について専門的に分析。

Israel’s strike against Iran: Chatham House experts offer early analysis(外部)
英国の著名シンクタンクChatham Houseの専門家による、イスラエルのイラン攻撃に関する即座の分析。

【編集部後記】

わずか3日間で物理攻撃からサイバー戦争の脅威まで急速に拡大したこの紛争は、私たちの日常にも直接影響を与える可能性があります。特にエネルギー価格の変動や、サイバー攻撃による重要インフラへの影響は、遠い中東の出来事として片付けられません。

皆さんの職場や生活圏でも、サイバーセキュリティ対策の見直しが急務となっているのではないでしょうか。また、このような地政学的リスクが技術業界やエネルギー市場に与える影響について、どのような変化を感じられているでしょうか。ぜひSNSで、現場での実感や対策についてお聞かせください。

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TaTsu
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