管理画面に並ぶ6行の一覧表に、エアロセンスのVTOLとSkydioのX10が、パトロールカーの車載カメラや作業員のウェアラブルカメラと同じ書式で収まっています。首都高速道路など4社の実証で起きたのは、ドローンが道路管理の画面へ、特別扱いなしで組み込まれたことでした。
首都高速道路、首都高技術、エアロセンス、KDDIスマートドローンの4社は2026年8月25日、道路点検に関わる複数の点検機器を、首都高速道路の総合防災情報システムの一部を構成するリアルタイム動画配信システムへ接続し、遠隔から映像と位置情報を一元的に取得・管理する実証実験を実施したと発表した。
実証は2026年3月30日14時頃、大橋ジャンクション、千葉県君津市、茨城県守谷市、埼玉県川口市の各拠点で行われた。VTOLが広域点検、マルチコプタ型ドローンが構造物点検、パトロールカーが異常対処、ウェアラブルカメラが現場把握を担い、4社は統合管理を確認し、統合運用時の運航管理やオペレーションフロー上の課題を整理した。
本実証は2024年1月採択の国土交通省中小企業イノベーション創出推進事業の一環である。
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ドローンと道路パトロールカーの連携により広域点検から現場対応までの遠隔・リアルタイム一元管理を実証|首都高速道路株式会社

【参考動画】
【編集部解説】
今回の発表で私がいちばん長く眺めたのは、飛んでいるドローンの写真ではなく、別添資料に載った管理画面の左側にある、そっけない一覧表でした。名称・状態・種別の3列に、6つの行が並んでいます。Aerosense VTOL、Skydio X10、車載カメラ、ウェアラブルカメラ、Skydio Dock for X10、そしてもう1台のウェアラブルカメラ。それぞれに「稼働中」「停止中」の状態と、「ドローン」「車両」といった種別が振られています。
メーカーの異なる2種類の機体と、道路を走る車と、人が身につけたカメラが、まったく同じ書式の行として、同じ表に収まっている。空を飛ぶ機械が、画面の中で特別な席を用意されていないのです。
接続の向きに注目すると、この実証の性格がはっきりします。リアルタイム動画配信システム自体は、今回のために新設されたものではありません。首都高技術がすでに、パトロールカーの車載器映像やウェアラブルカメラの映像をリアルタイムに確認する仕組みを持っており、今回の実証では、その既存システム側へドローンを含む複数機器の映像と位置情報を接続して一元管理しました。
少なくとも、映像と位置情報を受け取る道路管理側については、ドローン専用の閉じた仕組みを作るのではなく、すでに使われているシステムのほうへドローンが合流していく。社会実装という言葉が実際に意味するのは、たいていこういう地味な合流のことだと思います。
一元管理を検証する試み自体は、今回が初めてではありません。2025年2月にレインボーブリッジで行われた夜間の実証では、検証項目の一つに「同時に飛行している機体の飛行情報、映像をリアルタイムに取得及び一元管理」が挙げられ、各機体のクラウドから一元管理する他のシステムへ伝送できることが確認されました。発表資料は同時に、一部映像の途絶・遅延が見られたことも記しています。ただしこのときの対象は、飛んでいる機体どうしでした。今回は一元管理の対象がパトロールカーやウェアラブルカメラまで広がり、接続先として首都高技術の既存のリアルタイム動画配信システムが使われています。
首都高速道路をめぐる一連のドローン実証を並べると、検証テーマの重心が移ってきたことが見えてきます。首都高速道路の資料は、継続的な実証の一つとして2023年1月の往復14kmの長距離自動飛行を挙げています。このときエアロセンスが担当したVTOL型ドローンは、荒川下流河川事務所による河川上空利用ルールの策定を目的とした実証のなかで、葛西ジャンクション付近の船着き場から小松川ジャンクション付近まで、首都高速道路の上空を避けて荒川の河川上を飛びました。2025年2月にはレインボーブリッジで往復約2.8kmの夜間飛行、2026年2月には八重洲線のトンネル換気ダクト内という非GNSS・暗所・電波不感の狭小空間での飛行が続きます。長距離飛行と、夜間・暗所・非GNSS・電波不感といった条件への対応が、点検手法の確立と並ぶ主要なテーマでした。
今回、成果の中核に置かれているのは、複数拠点の位置情報とリアルタイム映像を一元管理できたことです。あわせて、統合運用時の運航管理やオペレーションフロー上の課題も整理されました。飛行距離や飛行時間は、成果としては前面に出ていません。
その複数拠点というのが、また示唆的です。実施場所は大橋ジャンクション、千葉県君津市、茨城県守谷市、埼玉県川口市。大橋ジャンクションは首都高速道路の路線上にあり、川口市には江北ジャンクションから川口ジャンクションへ至る川口線が通っています。一方で千葉県君津市と茨城県守谷市は、首都高速道路のネットワークからは離れています。別添の地図もGoogle Earthの関東広域図で、4つのマーカーが東京湾を囲むように散っています。
同じ現場に機器を集めれば「連携」の絵は作りやすい。それを都県をまたいで散らした構成は、広域での遠隔一元管理を想定したものと読めます。今回確認されたのは、道路管理者が複数拠点の状況を遠隔からリアルタイムに把握できることです。道路管理者が座っている場所と、機器が動いている場所を切り離す。その形が実際に動いたことになります。
そしてもう一枚、別添には「ドローン広域点検の将来像」と題した循環図があります。運航管理システムがドローンポートへフライト指示を出し、機体が離発着して高架を飛び、損傷・落下物データがデータ管理システムへ渡り、道路点検AIシステムが損傷を判定して異常を発見し、道路管理システムを経て補修指示が出て、パトロールカーが緊急出動する。ここまでが一つの輪として描かれています。
この図と今回の成果を重ねると、現在地が見えてきます。輪のうち、複数機器の映像と位置情報を道路管理側で一元管理し、複数拠点の状況を遠隔・リアルタイムに把握できることは、今回確認されました。一方、損傷データの受け渡しから、AIによる損傷判定、そこから補修指示までを本実証で確認したとは、今回の発表資料には示されていません。4社が成果として挙げているのは、統合管理の確認と、統合運用時の運航管理やオペレーションフロー上の課題の整理という2点です。
この将来像を構成する要素は、今回はじめて出てきたものではありません。エアロセンス、KDDIスマートドローン、首都高速道路の共同提案が国土交通省の中小企業イノベーション創出推進事業に採択されたのは2024年1月30日で、事業計画名は「災害に屈しない国土づくり、広域的・戦略的なインフラマネジメント技術の開発・実証」。そのとき示された事業内容は5項目で、第一種型式認証に対応した長距離飛行が可能な小型VTOL機体の開発、点群データによる道路三次元モデルの生成と点検AIによる異常検出、セルラー通信と低軌道衛星のハイブリッド通信、4番目に「道路・交通状況モデル/点検結果を道路管理システムに連携し、道路管理システムによる一括管理」、そしてドローンポートの開発が並んでいました。
今回の実証は、この4番目の項目に正面から対応しています。将来像に並ぶ主要なシステムブロックの多くも、2024年に示された3社の役割分担と対応しています。道路管理システムの開発は首都高速道路、運航管理システムと道路点検AIシステムの開発はKDDIスマートドローン、機体開発と型式認証取得、データ管理・3次元化はエアロセンス。図を見ながら役割分担の表を読むと、輪のどこを誰が担っているかが重なって見えてきます。
事業期間は2027年度末までです。2024年の採択発表では、この期間における国土交通省からの交付額の上限を8.6億円と予定しているとされました。実証が行われたのは2026年3月30日の14時頃で、発表は約5か月後の8月25日。事業のほぼ中間地点で、輪の一区間が閉じたことになります。
日本の制度の話も、正確に押さえておきたいところです。道路の上空を飛ぶこと自体が、直ちに第三者上空の飛行になるわけではありません。飛行経路下で第三者の立入りを制限する立入管理措置を講じずに特定飛行を行う場合がカテゴリーIIIで、そのうち有人地帯における補助者なし目視外飛行がレベル4です。実施には、第一種機体認証を受けた機体と、一等無人航空機操縦士の技能証明、そして国土交通大臣の許可・承認が必要になります。今回の事業が第一種型式認証に対応した機体の開発を項目に掲げているのは、その先を見据えてのことです。
機体も、通信も、制度への適合も、それぞれに時間のかかる開発です。プロジェクト全体が続くなかで、今回の実証では、映像を受け取る道路管理側の統合運用が検証の対象になりました。
道路インフラの維持管理では、人材不足への対応と業務効率化が、すでに課題として挙げられています。いずれ道路管理者は、上空にいる機体と、地上を走る車と、現場に立つ人からの映像を、同時に見ることになるでしょう。そのとき画面の中で、ドローンは主役ではなく一覧表の1行であるほうがいい。今回の実証が確認したのは、その1行を含む複数の点検機器の位置情報とリアルタイム映像を、同じシステム上で一元管理できることでした。派手さはありませんが、実装というのは本来こういう形で始まります。
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【編集部後記】
首都高の資料は、2023年1月の往復14km飛行を高速上点検の実証として要約しています。ところがエアロセンスの発表をたどると、この機体は葛西JCT付近の船着き場から小松川JCT付近まで、首都高の上空を避けて荒川の河川上を飛んでいました。
道路の上を飛ぶという当たり前が、3年前にはまだ当たり前ではなかったわけです。今回、映像が集まる先が道路管理の画面になったことの意味も、そこから測ると少し違って見えてきます。
【用語解説】
VTOL(垂直離着陸型固定翼ドローン)
Vertical Take-Off and Landingの略。ヘリコプターのように垂直に離着陸し、上空では固定翼機として水平飛行する機体を指す。滑走路を必要とせず、長距離の飛行に向く。
リアルタイム動画配信システム
首都高速道路の総合防災情報システムの一部を構成する仕組み。道路を巡回するパトロールカーの車載器映像やウェアラブルカメラの映像を、離れた場所からリアルタイムに確認できる。今回の実証では、ここへドローンの映像と位置情報が接続された。
総合防災情報システム
首都高速道路が災害時などの情報を集約する基幹システム。リアルタイム動画配信システムはその一部にあたる。
運航管理システム
複数のドローンの飛行計画や位置情報を管理する仕組み。今回の実証では、リアルタイム動画配信システムとあわせて使用された。
ドローンポート
ドローンの自動離着陸と充電が可能な設備。人が現地にいなくても、遠隔から機体を運用できる。
中小企業イノベーション創出推進事業
高い技術力を持つ国内企業による先端技術の社会実装を国が支援する制度。通称SBIR制度。本実証は、国土交通省の同事業に2024年1月に採択された案件の一環である。
特定飛行と立入管理措置
特定飛行は、航空法で許可・承認などの手続きが求められる飛行の総称。立入管理措置は、飛行経路の下に第三者が立ち入らないよう制限することを指す。この措置の有無で飛行カテゴリーが変わる。
カテゴリーIII飛行とレベル4
立入管理措置を講じずに特定飛行を行う場合がカテゴリーIIIで、そのうち有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行がレベル4と呼ばれる。実施には第一種機体認証を受けた機体、一等無人航空機操縦士の技能証明、国土交通大臣の許可・承認が必要となる。
第一種型式認証と第一種機体認証
型式認証は機体の設計・製造過程をメーカー単位で認証する制度、機体認証は個々の機体の安全性を認証する制度で、両者は別の枠組みである。型式認証を受けた型式の機体は、機体認証の検査の全部または一部が省略される。
GNSS
人工衛星から位置情報を得る仕組みの総称。トンネル内など電波が届かない環境は「非GNSS」と呼ばれ、ドローンの自律飛行にとって難条件となる。
【参考リンク】
首都高速道路株式会社(外部)
首都圏の都市高速道路を管理・運営する事業者。今回の実証では全体の統括を担い、将来像では道路管理システムの開発を担当している
首都高技術株式会社 社会インフラを支える次世代技術(外部)
首都高グループの技術会社。パトロールカーの車載カメラやウェアラブルカメラの映像を、遠隔からリアルタイムに確認する技術を提供している
エアロセンス株式会社(外部)
国産の産業用ドローンメーカー。VTOL型固定翼ドローン「エアロボウイング」シリーズを自社で開発・製造・販売し、点検や測量に展開する
KDDIスマートドローン株式会社(外部)
モバイル通信を用いてドローンの遠隔飛行を支えるKDDIの子会社。本事業では運航管理システムと道路点検AIシステムの開発を担当する
国土交通省 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト(外部)
機体認証、操縦者技能証明、レベル4飛行に関する制度の概要をまとめた、国土交通省の公式ポータルサイトである。制度の全体像を確認できる
国土交通省 無人航空機の飛行許可・承認手続(外部)
飛行カテゴリーの決定フローと、カテゴリーごとに必要となる手続きを解説する、国土交通省航空局の公式ページである。立入管理措置の定義も載る
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ドローンと道路パトロールカーの連携により広域点検から現場対応までの遠隔・リアルタイム一元管理を実証(エアロセンス)(外部)
同じ発表のエアロセンス側の掲載ページ。機体メーカーの視点から、本実証の内容と関連する過去のリリースをあわせて確認することができる


















