日本郵便とKDDI、郵便局をドローンポート拠点に|珠洲市で実証開始

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全国のすべての市町村に、約2万4000局。日本郵便が築いてきたこの網が、ドローンの「置き場所」になろうとしています。1人で10機を動かす実証まで進んだKDDIが、次に確かめたかったことは何か。石川県珠洲市の郵便局の屋上で、その答えを探る1週間が始まりました。


日本郵便とKDDIは2026年9月28日から10月4日まで、石川県珠洲市の珠洲郵便局の屋上にドローンポート「Skydio Dock for X10」を1台設置し、郵便局を拠点とする実証を行う。両社が2026年6月に締結した基本合意書に基づく取り組みである。平時は通学路の安全確認、災害時は道路寸断を想定した配送ルートの把握に加え、市内の既存ドローンポートと連携した複数のAIドローンで被災状況と住民の安否の把握を検証する。

10月4日の珠洲市総合防災訓練にも参画する。両社は全国の郵便局を活用したドローンポートの常設化とドローン物流の社会実装を検討し、2027年度以降の本格的な協業を目指す。

From: 文献リンク日本郵便とKDDI、ドローン社会基盤化へ基本合意書を締結し、郵便局をドローンポート拠点とする実証を開始

【編集部解説】

今回の発表を「郵便局にドローンが置かれる話」と受け取ると、半分しか見えません。ZDNET Japanの記事によると、KDDIスマートドローンは、ドローンを全国に広げるために必要な要素を「機体」「通信」「遠隔運航体制」「設置場所」「制度」の5つと説明しています。機体と遠隔運航では実証が進み、5月には1人の遠隔操縦者が全国の複数地域のドローンポートから10機を同時に運航する実証に成功したと発表されています。同記事は、全国展開に向けた残る課題として、ポートを継続的に運用できる設置場所の確保と、多数機を安全に飛ばすための制度を挙げています。郵便局という「場所」を得ることが、この発表の核心です。

役割分担もはっきりしています。ドローンポートはKDDIが保有・管理し、日本郵便は設置場所と、地域や関係機関とのつながりを担います。合意書の図では、日本郵便の側に「局舎」「配送網」「自治体リレーション」が並びます。ドローンの側から見れば、拠点を一から建てるのではなく、すでに暮らしの中にある拠点へ載せていくという発想です。郵便局が全国のすべての市町村にあることが、その土台になります。

舞台が石川県珠洲市であることにも意味があります。KDDIは2024年10月に石川県と包括連携協定を結び、県内でドローンの配備を進めてきました。2026年4月22日時点で、石川県内は12拠点です。珠洲での実証は、石川県で積み上げてきた運航の基盤に、郵便局という新しい種類の拠点をつなぐ試みと言えます。平時は通学路の安全確認、災害時は道路の寸断を想定して配送ルートの状況を把握し、集配社員などの安全確保に役立てられるかを確かめます。同じ設備を日常と非常時の両方で使えるかが問われます。

KDDIは、平時と有事を区別せずに使う「フェーズフリー」を掲げています。4月の発表では、この事業モデルは国内に前例がないと述べています。総務省の事例紹介では、有事だけの利用では維持・管理のコストが膨らみやすいことが背景に挙げられています。リリースの図には、平時のインフラ点検・測量、夜間警備、鳥獣害対策、報道カメラ、有事の災害状況の一次確認、搭載スピーカーによる避難の呼びかけなど、8つの使い道が描かれています。郵便局は、郵便・物流サービスを通じて地域住民との接点を持つ拠点です。住民との接点がある場所に置かれることは、こうした使い方を根づかせやすい条件になると見ています。

もうひとつの柱がドローン物流です。日本郵便は2023年度から兵庫県豊岡市と連携し、中山間地のドローン配送を重ねてきました。合意書の図には、KDDI側の資源として「Starlink」「遠隔運航」「高精細3D化技術」が並び、配送エリアはモバイル圏内と圏外に分けて描かれています。KDDIは4月の発表で、国土の40%がモバイル通信の圏外だと説明しており、圏外でも遠隔運航できるようにするための検証を進めています。郵便局を起点にした配送網と、空の運航網が重なっていくわけです。制度の面では、合意書にドローン物流の社会実装に関する政策提言の検討・実施が盛り込まれました。2社が現場の知見をもって、制度の議論にも向き合う構えです。

「約10分で駆けつける」という姿は、全国にポートが行き渡った先で目指す想定として示されたものです。今回の実証は珠洲郵便局1か所、期間は約1週間です。全国での設置箇所数は検討中と報じられており、費用の分担などは今回の発表の時点では公表されていません。両社は事業モデルの検討を進め、2027年度以降の本格協業を目指す段階にあります。

10月4日には珠洲市の総合防災訓練に参画し、自治体と連携した運用モデルの実現可能性を探ります。ここで得られる結果が、両社が郵便局をドローンポート拠点として活用していくための材料になります。どの町にもある郵便局が、空の目の発着点にもなる。その可能性を確かめる1週間が、始まっています。

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【編集部後記】

図の左下に、小さく「依頼」という文字があります。地方公共団体が依頼を出し、離れた場所の運航担当が複数のドローンを動かして見守る。ドローンを買って抱え込むのではなく、必要なときに頼む形が描かれています。既存の遠隔運航サービスでは、KDDIスマートドローンが日々の運航を代行しています。

自治体と事業者のあいだの「依頼」は、有事の慌ただしさの中で、どんな形になっていくのでしょうか。珠洲市の防災訓練で探られる運用モデルの、いちばん人間くさい部分だと考えています。


【用語解説】

ドローンポート:ドローンの離着陸、充電、格納を自動で行う設備。遠隔から運用でき、現地に操縦者がいなくても飛ばせる。今回設置される「Skydio Dock for X10」は、Skydio X10専用のポートである。

AIドローン:機体に搭載したAIとカメラで周囲の障害物を検知し、自律飛行するドローン。今回使うSkydio X10は6基のカメラで周囲360度を見渡し、GPSが使えない場所や暗所でも飛行に対応する。

フェーズフリー:平時と有事を区別せず、日常の用途と災害対応の両方で同じ設備を活用する考え方。KDDIはドローンをこの形で活用する事業モデルを進めており、国内に前例がないとしている。

遠隔運航:現地に操縦者を置かず、離れた場所からドローンを運航すること。KDDIとKDDIスマートドローンは、東京の拠点にいる1人の操縦者が全国の複数地域のポートから10機を同時に運航する実証に成功したと発表している。

【参考リンク】

KDDIスマートドローン「Skydio Dock for X10」(外部)
Skydio X10専用のドローンポートの紹介ページ。自動離着陸や自動充電、映像のリアルタイム配信、運航サポートの内容を解説している。

KDDI(外部)
KDDI株式会社の公式サイト。サービスの案内、企業情報、ニュースリリースのほか、事業や取り組みに関する情報を掲載している。

日本郵便(外部)
日本郵便株式会社の公式サイト。郵便や荷物のサービス、郵便局・ATMの検索、企業情報や経営理念、事業計画などを掲載している。

Skydio Dock(日本語)(外部)
米Skydioによるドローンポート「Skydio Dock」の製品ページ。ドローンを遠隔から自動で運用する仕組みを紹介している。

Starlink(外部)
SpaceXが提供する衛星インターネットサービスの公式サイト。山間部や離島など通信が届きにくい地域でも使える点を紹介している。

【参考記事】

総務省のDX推進パッケージ事業のシンボルプロジェクトに採択(KDDI)(外部)
国土の40%がモバイル圏外とし、衛星直接通信でのドローン遠隔運航を全国5エリアで検証。配備は石川県12拠点など計13拠点。

遠隔操縦者1人で多拠点のドローン10機同時運航に成功 KDDIグループ(BUILT)(外部)
東京の拠点の1人の遠隔操縦者が、北海道や石川県など複数拠点のポートから10機を同時に運航した実証を伝える。運航管理の仕組みにも触れる。

どんな所へもドローンを10分で。全国配備へ、能登で実証中(総務省DXナビ)(外部)
KDDIが全国1000か所の常設を目標に、ポートの地域防災拠点化を進める能登の取り組みを紹介。2026年3月末で12か所。

KDDI、ドローンの社会基盤化へ日本郵便と連携–郵便局をドローンポートに(ZDNET Japan)(外部)
KDDIスマートドローンの博野社長が掲げる10分以内の駆け付けと、全国展開に必要な5要素を整理し、日本郵便との連携を位置づける。

KDDI、日本郵便とドローン事業で連携 全国の郵便局に発着拠点(日本経済新聞)(外部)
全国の郵便局に発着拠点を設け2027年度以降に本格協業する方針を報道。設置箇所数は検討中で、日本郵便は局舎などを拠点にする。有料記事。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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