Last Updated on 2025-06-06 13:38 by admin
2025年6月5日(現地時間、日本時間6月6日)、米国下院議員エリーゼ・ステファニクは、ジョン・ムーレナ―委員長、ダリン・ラフッド議員、ロブ・ウィットマン議員とともに「第一救護者向けドローン法案(DFR法案)」を再提出した。
この法案は、米国のドローン産業を強化し、中国製ドローンへの依存を低減することを目的としている。法案の主な内容は、中国で製造または管理されているドローン(特にDJIなど)に対し30%から始まり毎年5%ずつ増加する関税を課すこと、関税収入を財源とした助成金プログラムを設け、第一救護者や重要インフラ事業者、農業従事者が米国や同盟国製ドローンへ移行する際の費用を補助すること、2030年までに米国に輸入されるドローンの重要部品が中国から調達されていないことを義務付ける原産地規則の強化などである。2025年4月時点で米国の中国製ドローン関税は累積170%に達しており、今回の法案はこれをさらに制度化・恒久化する狙いがある。国土安全保障省と商務省が監督し、助成金対象ドローンにはNDAA準拠や中国製部品の使用禁止などの要件が定められている。
from:Congresswoman Elise Stefanik Reintroduces Drones for First Responders Act | DRONELIFE
【編集部解説】
「第一救護者向けドローン法案」再提出は、米国が中国製ドローンへの依存を抜本的に見直すための重要な政策転換です。米国の第一救護者市場では中国製ドローン(特にDJI)が約90%を占めており、国家安全保障やサプライチェーンの観点から大きなリスクと認識されています。2025年4月時点で中国製ドローンへの関税は累積170%に達し、消費者や事業者のコスト負担は大幅に増加しています。今回の法案は、関税による価格調整と助成金による現場負担の軽減を両立させ、段階的な移行を促進する現実的なアプローチです。
助成金プログラムが現場の負担をどこまで補えるか、また米国や同盟国メーカーが現場ニーズに応える製品を十分に供給できるかが今後の焦点となります。法案は即時の全面禁止ではなく、2030年までの段階的な規制強化を選択しているため、現場の混乱を最小限に抑えつつ国内産業の育成や技術革新を促進する狙いがあります。一方で、国際的には中国側の反発やサプライチェーン再編、グローバルなドローン市場やAI・自律飛行技術への影響も注視が必要です。今後、米国製や同盟国製ドローンの競争力強化と現場の声の政策反映が業界の動向を左右するでしょう。
【用語解説】
第一救護者:
災害や事故、緊急事態発生時に最初に現場対応する警察・消防・救急・学校教職員などの公的機関や担当者。
NDAA(National Defense Authorization Act):
米国の国防権限法。特定の外国製無人航空機や部品の政府調達制限などを含む。
サプライチェーン:
製品やサービスが消費者に届くまでの一連の流通・生産・調達の仕組み。
CCP(中国共産党):
中国の唯一の与党で、国家政策や経済活動に強い影響力を持つ。
CISA(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency):
米国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティ・インフラ防衛機関。
【参考リンク】
DJI公式ストア(外部)
世界最大手のドローンメーカー。民生用から産業用まで幅広いドローンやジンバル製品を展開している。
DJI公式サイト(外部)
DJIの最新ドローン製品一覧やスペック、用途別のソリューションを紹介している。
エリーゼ・ステファニク議員(外部)
ニューヨーク州選出の米国下院議員。2025年時点で同党下院会議議長を務めた。
ジョン・ムーレナ―議員(外部)
ミシガン州選出の米国下院議員。中国問題特別委員長も務める。
ダリン・ラフッド議員(外部)
イリノイ州選出の米国下院議員。
ロブ・ウィットマン議員(外部)
バージニア州選出の米国下院議員。
【参考記事】
Congress Introduces Bipartisan Legislation to Expand Drone Funding for Law Enforcement | DRONELIFE
米議会が警察・公共安全機関向けのドローン補助金拡大法案を提出した背景と内容を詳しく解説。
AUVSI Applauds Legislation Supporting Drones Grants for Law Enforcement | AUVSI
無人システム業界団体AUVSIによる、議会提出のドローン補助金法案支持声明と業界の反応。
The Future of Drone as First Responder (DFR) Programs: Insights from the National Public Safety UAS Conference | DRONELIFE
米国におけるDFR(ドローン・アズ・ファーストレスポンダー)プログラムの最新動向や政策課題を解説。
【編集部後記】
今回の法案再提出により米国のドローン政策と経済状況にどう影響を与えていくのか。中国製ドローンの輸入を中止することにより機材調達や製造における人材の確保など新たな課題こそありますが、国内産業の成長や技術革新につながる可能性を感じました。米国だけではなく、同盟国メーカーとの技術提携、生産体制による関わりにも期待が持てると考えられるため、今後も動向や現場の声にに注目していきたいと考えております。