中国のトリウム発見:60,000年分のエネルギー源が世界のパワーバランスを変える可能性

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中国が内モンゴル自治区のバヤンオボ鉱山複合施設で、国家を最大60,000年間支えられる可能性のあるトリウム資源を発見したと報じられています。2025年3月3日の報道によると、この埋蔵量は米国の全世帯の1,000年以上のエネルギー需要を賄えるほどだとされています。

中国は2021年9月にゴビ砂漠で世界初の実験用トリウム溶融塩炉(TMSR)を稼働させました。この2MWの実験炉は、トリウムを主要エネルギー源として利用する実現可能性を検証するためのものです。

さらに、中国は2030年までに商業用トリウム溶融塩炉の建設を計画しています。同時に、第14次5カ年計画(2021-2025年)で、2035年までに200GWの原子力発電容量を目指し、新規原子炉建設を進めています。

一方で、中国の石炭消費量は2025年に緩やかに増加すると予測されており、エネルギー構造の転換には時間がかかると見られています。

from:China Uncovers ‘Limitless’ Energy Source That Could Power the Country for the Next 60,000 Years

【編集部解説】

この発見の規模については、慎重に見る必要があります。60,000年分のエネルギー供給という数字は理論上の最大値であり、実際の利用可能性はさまざまな要因に左右されます。

トリウムは確かに豊富な資源ですが、その実用化にはまだ技術的な課題があります。中国が2021年に世界初の実験用トリウム溶融塩炉(TMSR)を稼働させたことは大きな一歩ですが、商業規模での実用化にはまだ時間がかかるでしょう。

トリウム原子力発電の利点は、ウラン基盤の従来型原子力発電と比べて、より安全で廃棄物が少ないことです。また、核兵器への転用リスクも低いとされています。これらの特徴は、原子力発電に対する公衆の懸念を和らげる可能性があります。

一方で、トリウム技術の実用化には大規模なインフラ投資が必要です。既存の原子力発電所はウラン用に設計されているため、トリウムへの移行には多大なコストと時間がかかります。

中国のこの発見は、世界のエネルギー地図を塗り替える可能性を秘めています。しかし、その実現には国際協力と持続的な研究開発投資が不可欠です。

また、この技術が普及すれば、エネルギー安全保障の観点から国際関係にも影響を与える可能性があります。化石燃料への依存度が下がれば、エネルギー資源をめぐる国際的な緊張が緩和されるかもしれません。

環境面では、トリウム原子力発電の実用化は温室効果ガス排出削減に大きく貢献する可能性があります。しかし、放射性廃棄物の管理など、新たな環境課題も生じる可能性があることを忘れてはいけません。

最後に、この技術の発展は、エネルギー産業だけでなく、材料科学や原子力工学など、関連分野の技術革新も促進する可能性があります。

トリウムエネルギーの未来は明るい可能性を秘めていますが、その実現には慎重かつ持続的なアプローチが必要です。

【用語解説】

  • トリウム
    ウランに次ぐ放射性元素で、地殻中に比較的豊富に存在します。核分裂性ではありませんが、中性子を吸収してウラン233に変換され、核分裂の燃料となります。
  • 溶融塩炉
    核燃料を溶かした塩(溶融塩)を使用する原子炉です。従来の固体燃料棒を使用する原子炉と比べ、安全性が高いとされています。
  • バヤンオボ鉱山
    中国内モンゴル自治区にある世界最大級のレアアース鉱山です。トリウムの大規模な埋蔵が確認されています。

【参考リンク】

  • 中国核工業集団公司(CNNC)(外部)
    中国の原子力産業の中心的な国有企業。トリウム溶融塩炉の開発にも取り組んでいます。
  • 国際原子力機関(IAEA)(外部)原子力の平和利用を促進する国際機関。トリウム燃料サイクルに関する情報も提供しています。

【参考動画】

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