OpenAI新デバイスは「ドーナツ型」|300〜400ドルのスマートスピーカー

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スマートスピーカーの外見といえば、円柱形や球体形が定番として定着して久しいものです。そんな市場に、OpenAIがディスプレイなしの「ドーナツ型」という異色のフォルムを持ち込もうとしています。


Bloombergの新たな報道によると、OpenAIが開発を進める初のハードウェア製品は、ディスプレイを持たないスマートスピーカーで、ホッケーパックほどの大きさのドーナツ型になるという。

想定価格は300〜400ドルで、高品質な金属を含む上質な素材を用いた「プレミアムな見た目」を目指すとされる。手に持つほか、家具の上に置くなど複数の使い方を想定した設計で、自律的に動く可動部分を備え、生きているような感覚を演出する。音声対話にはChatGPTの刷新された音声モードに近い、より高度なAIモデルが搭載される見込みだ。OpenAIはこの製品を含む複数のハードウェア製品を開発中とされ、2026年中の発表、2027年の発売を目指しているという。この報道と同日、OpenAIはApple提訴に対する却下申立てを提出している。

From: 文献リンクReport shares new pricing and design details about OpenAI’s first device

【編集部解説】

なぜ、ドーナツ型なのか

まず気になるのは形状そのものです。Bloombergの報道によれば、この形は手に持って家中を移動させたり、家具の上に置いたりと、複数の使われ方を想定した結果だとされています。

もう一つ手がかりになりそうなのが、スマートスピーカーの構造的な事情です。Amazon Echoは円形に配置された7つのマイクアレイで360度の音を拾う設計を採用しており、円形・環状のフォルムは音声デバイスにとって単なる意匠ではなく、聞き取り性能に直結する選択でもあります。ドーナツという形は、この「円形の論理」を保ちながら、中央に穴を開けることで既存の円柱型・球体型のスピーカーとはっきり違うシルエットを手に入れています。

背景には、LoveFromを率いるジョニー・アイブ氏が語ってきた「画面のないコンピュータ」という設計思想もありそうです。メニューやアプリのグリッドに頼らない対話型インターフェースを目指す以上、外見そのもので既存のスピーカーと一線を画す必要があった、とも読み取れます。

「新しい形」を選ばなかった、という選択

ここで見落とせないのは、OpenAIが今回、あえて「見慣れたカテゴリー」にとどまっている点です。ここ数年、AIネイティブなハードウェアを掲げたHumane AI PinやRabbit R1は、スマートフォンとは全く異なる形状・操作体系を持ち込みましたが、いずれも短期間で市場からの評価を得られませんでした。

その教訓を踏まえるなら、OpenAIの選択は「スマートスピーカーという枠組みは維持しつつ、シルエットだけで差別化する」という、比較的手堅い賭け方に見えます。Amazon・Googleが占めてきた市場に対して、真新しい操作体系を強いるのではなく、置き方・持ち方の自由度と「生きているような」動きで存在感を出す狙いです。

もっとも、300〜400ドルという価格は既存のスマートスピーカーより高めです。見た目の差別化が、その価格差を納得させるだけの体験に結びつくかどうかは、現時点では未知数です。

なお、この報道と同じ日にOpenAIはApple提訴への却下申立てを提出しています。Bloombergは、報じられた形状自体はApple製品と重ならないと指摘する一方、使用素材については訴訟内の主張と関係し得る余地も残していますが、詳細はまだ明らかになっていません。

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今回の報道と同日、OpenAIはApple提訴に対する却下申立てを提出しています。訴訟の詳しい経緯はこちらの記事で取り上げています。

【編集部後記】

かつて優れたAIハードウェアは、目新しい形をまとうことで注目を集めようとしてきました。けれど画面のない対話型デバイスが実際に生活の中に根付くかどうかは、シルエットの奇抜さだけでは決まらないのかもしれません。手のひらに収まる大きさで、動きながら「生きているように」感じさせる工夫は、便利さとは別の、道具との距離感そのものを問い直す試みのようにも映ります。ドーナツという形に込められた狙いが、実物として手に取れる日には、また違って見えてくるのではないでしょうか。


【用語解説】

マイクアレイ(Microphone Array)
複数のマイクを円形などに配置し、音の方向を判別したり特定方向の音声を強調したりする仕組み。Amazon Echoなど円柱型スマートスピーカーで広く採用されている技術。

【参考リンク】

OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPTをはじめとするOpenAI公式の製品・技術情報。

LoveFrom公式サイト(外部)
OpenAIのハードウェア開発を担う、ジョニー・アイブ氏らのデザインファーム。

Bloomberg(元記事・有料)(外部)
今回の一連の報道の原典。購読者向け有料記事。

【参考記事】

OpenAI’s First Device: Jony Ive’s Screenless AI Speaker — Pursuitist(外部)
ジョニー・アイブ氏の「画面のないコンピュータ」という設計思想を解説する記事。

AI Product Failures 2026: Sora, Humane & Rabbit R1 — DigitalApplied(外部)
Humane AI PinやRabbit R1など、AIハードウェアが短期間で失敗した教訓をまとめた記事。

Microphone Array Ultimate Guide — DusunIoT(外部)
Amazon Echoが採用する円形マイクアレイの仕組みを解説した記事。

What Is OpenAI’s Device? A Doughnut-Shaped Speaker That Costs Over $300 — Bloomberg(外部)
ドーナツ型デバイスの価格帯・形状の詳細を報じた、一連の報道の原典記事。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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