スマートゴーグルは、泳いでいる最中に情報を見せるほど便利なのでしょうか。Speedo iQはあえて視界内ディスプレイを持たず、呼吸や頭部位置、ターンまで記録して後から分析する道を選びました。その設計から、水泳向けウェアラブルの別の方向性を読み解きます。
2026年8月27日、英国でSpeedoのスマート水泳技術「Speedo iQ」を搭載したVanquisher 3.0ゴーグルの販売が始まった。
取り外し可能なモジュールでペース、距離、頭部位置、呼吸、ターンを記録し、平泳ぎ、クロール、背泳ぎ、バタフライの4泳法に対応する。FORMのような視界内ディスプレイは搭載せず、専用アプリで泳いだ後に分析する方式を採用。World Aquaticsの競技使用承認を取得しており、英国価格は149ポンドである。
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Speedo makes its goggles smarter with new iQ swim technology
【編集部解説】
「見る」スマートゴーグルではなく、「記録する」スマートゴーグル
Speedo iQの特徴は、スマートゴーグルでありながら、泳いでいる最中にデータを表示するディスプレイを搭載していないことです。FORMのスマートゴーグルが視界内にペースなどの情報を表示するのに対し、Speedo iQはデータをバックグラウンドで記録し、泳ぎ終わってからアプリで確認する方式を採用しています。
Speedo自身も製品ページで「Post-swim analysis」を特徴として掲げ、ゴーグル内ディスプレイを搭載せず、水中では泳ぎに集中し、分析はセッション後に行う設計だと説明しています。
つまり、Speedo iQは、泳ぎ方の細部をあとから確認できるデータとして可視化することに重点を置いた製品だと考えられます。
距離やペースだけでなく「どう泳いだか」を残す
記録対象も、この設計思想をよく表しています。
Speedo iQは自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライの4泳法に対応し、一般的なパフォーマンス情報だけでなく、頭の位置、呼吸角度、ターンなどの技術データを取得します。
ランニングであればGPSウォッチだけでもペースや距離を把握できますが、水泳では同じタイムでも、頭の位置や呼吸、ターンの動作によって泳ぎ方は大きく異なります。Speedo iQは単純な「何メートルを何秒で泳いだか」だけでなく、「そのタイムをどのような動きで出したのか」を振り返るためのデータを増やした製品と整理できます。
公式サイトでは、記録したデータをSpeedo iQアプリへ同期し、セッションごとの分析だけでなく、時間経過に伴う進捗確認や改善提案にも利用できるとしています。
モジュールを外せることも実用品として重要
もう一つ注目したいのが、センサーを含むトラッキングモジュールをゴーグル本体から取り外せることです。ゴーグルが劣化した場合でも、電子モジュールまで買い替える必要はなく、新しい対応ゴーグルへ移せる設計になっています。
またSpeedoは、Speedo iQ Trackの機能を利用するための追加サブスクリプションは不要と明記しています。
英国での価格は149ポンドで、米国のSpeedo公式サイトでは189ドルに設定されています。2026年8月28日時点、日本のSpeedo公式サイトではSpeedo iQの国内価格や発売時期を確認できていません。
競技中にも「計測だけ」を続けられる
SpeedoはSpeedo iQ Vanquisher 3.0 Trackについて、World Aquaticsの競技使用承認を取得しており、トレーニングだけでなくレースでもデータを取得できると説明しています。
ここでも、ディスプレイを持たないことが意味を持ちます。レース中に選手へリアルタイム情報を提示する道具ではなく、競技そのものにはできるだけ介入せず、動きを記録して後から分析する道具として成立させています。
スマートゴーグルというと「目の前に情報が浮かぶ」方向へ機能を増やす発想が目立ちますが、Speedo iQは逆に表示機能を持たせず、計測と分析へ機能を絞りました。水泳中の体験をデジタル化するのではなく、泳ぎ終わった後の振り返りをデジタル化する。この割り切りが、Speedo iQを理解するうえで最も重要なポイントです。
【関連記事】
水泳トレーニング革新!Formが拡張現実ビジュアライズ搭載のスマートゴーグル発売
2024年4月にinnovaTopiaで掲載したFORM Smart Swim 2の記事。FORMはゴーグル内でリアルタイムの視覚フィードバックを提供するのに対し、今回のSpeedo iQはディスプレイを搭載せず、泳いだ後の分析を重視している点が大きく異なる。
水泳用スマートゴーグルでは、視界内にリアルタイム情報を表示するFORM Smart Swim 2も登場しています。Speedo iQとは異なるアプローチを採る製品として、こちらの記事もあわせてご覧ください。
【編集部後記】
個人的には、泳いでいる最中に情報を表示せず、終わってから振り返るという設計はかなり好みです。水泳中まで数字を追いかけるより、まずは泳ぐことに集中できる方が使いやすそうに感じます。一方で、呼吸や頭の位置まで数値化されると、自分では気づけなかった癖を発見できるのは面白そうです。149ポンドという価格は気軽に試せるほど安くはありませんが、フォーム改善を目的に継続して泳いでいる人には魅力がありそうです。スポーツのあらゆる動きがデータになっていくなかで、数字をどこまで参考にし、どこから自分の感覚を信じるのかも考えてしまいます。
個人的には、一度実際に泳いで、自分のフォームがどのように分析されるのか見てみたい製品です。
【参考リンク】
Speedo iQ|Speedo公式(外部)
Speedo iQの機能、対応する泳法、取得できるデータ、アプリによる分析、World Aquatics承認などをまとめた公式ページ。
World Aquatics Wearables – Swimming|World Aquatics(外部)
競泳で使用できるウェアラブルの規則、承認制度、競技時の申告方法などを案内するWorld Aquatics公式ページ。
FORM Smart Swim Goggles|FORM(外部)
視界内のリアルタイムフィードバックを特徴とするFORMのスマート水泳ゴーグル公式サイト。Speedo iQとの設計思想の違いを確認できる。
【参考記事】
Speedo iQ Vanquisher 3.0 Track White|Speedo(外部)
米国向け製品ページ。189ドルの価格、4泳法への対応、取り外し可能なトラッキングモジュール、追加サブスクリプション不要、事後分析型の設計を確認できる。
Wearables – Swimming|World Aquatics(外部)
World Aquaticsにおける競泳用ウェアラブルの承認制度と使用規則を掲載。承認済み製品を競技で使用する場合にも申告が必要であることを確認できる。
FORM Smart Swim 2|FORM(外部)
リアルタイムの水泳情報を視界に表示する拡張現実ディスプレイや心拍センサーを備える競合製品の公式ページ。Speedo iQが表示機能を持たない点との比較材料。
【用語解説】
スマートゴーグル
センサーや通信機能などを組み込んだゴーグル。Speedo iQでは泳法、ペース、呼吸、頭部の動き、ターンなどを記録し、セッション後にアプリで分析する。
視界内ディスプレイ
ゴーグルを装着したまま、レンズ越しにペースや時間などの情報を表示する仕組み。競合するFORM Smart Swim 2は拡張現実ディスプレイによるリアルタイム表示に対応する一方、Speedo iQはディスプレイを搭載せず、事後分析に特化している。
World Aquatics
世界の水泳競技を統括する国際競技連盟。競技で使用するウェアラブルの承認制度を設けており、承認済みデバイスをWorld Aquatics競技で使用する場合は申告が必要。


















