毎晩どれくらい深く眠れているか、自分の心拍がいつ乱れているか——指輪をはめるだけで、そんな体のサインが数値で見えてくる。シャープが同社初のスマートリング「からだメイト Ring」を7月9日に発売します。横浜発のヘルステック企業SOXAIの技術を取り込み、大手家電ならではの安心感と流通網で、スマートリングをぐっと身近な存在に変えようとしています。
シャープは2026年6月16日、同社初のスマートリング「からだメイト Ring」(形名MH-R01)を2026年7月9日に発売すると発表した。希望小売価格はオープン価格。本機は株式会社SOXAIのセンシング技術を活用して開発され、加速度、心拍、血中酸素レベル用の赤色/赤外線、皮膚温度の4種類のセンサーを搭載する。バイタルデータや歩数を含む活動量、睡眠の状態などを計測し、スマートフォンアプリ「からだメイト」で表示する。
アプリの有料プランは月額600円(税込)で、管理栄養士監修のアドバイスを提供する。本体は幅6.7mm、厚み2.8mm、質量2.1〜3.1gで、外側にチタニウムを採用する。防水性能はIPX8、連続使用時間は最大14日間。リングサイズは4号から13号(USサイズ)まで全10種類。カラーはゴールドとシルバーの2色。対応OSはAndroid 14以上、iOS 17以上である。
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スマートリング「からだメイト Ring」を発売|ニュースリリース:シャープ
【編集部解説】
シャープが「自社初」と謳うスマートリングですが、その心臓部を支えるのは外部企業の技術です。センシングを担うのは横浜市のスタートアップ、株式会社SOXAI。同社は「国内シェアNo.1・日本製」を掲げる日本発のスマートリングメーカーで、本機にはSOXAIのセンシング技術と技術基盤「SOXAI OS」が採用されています。つまり、これはシャープの完全独自開発というより、実績ある国産センシング技術にシャープのブランド力・流通網・品質管理が掛け合わされた製品だと捉えるのが正確です。
innovaTopiaがこのニュースに注目する理由は、ここにあります。スマートリング市場はこれまで、米Oura(Oura Ring)が代表的な先行ブランドとして認知を広げ、国内では新興のSOXAIが続く構図でした。そこへ110年超の歴史を持つ大手家電メーカーが、通信キャリアauの販路(au +1 collection)を軸に参入します。報道によれば、家電量販店や自社ECなど複数の販路も予定されているとされ、ニッチなガジェットだった指輪型デバイスが、より身近な消費財へと広がっていく節目を示す動きといえます。
価格にも触れておきます。希望小売価格はオープン価格ですが、シャープ直販のCOCORO STOREでは税込4万1800円とされています。報道によっては異なる価格表記も見られたため、購入時は各店の最新価格を確認するのが確実です。参考までに技術提供元のSOXAI RING 2は通常価格39,980円(税込)、先行するOura Ring 4は52,800円(税込)からとされ、本機は国産勢の価格帯に大手の安心感を乗せた、中間的な立ち位置を狙ったとみられます。
技術面で着目したいのは、計測部位が「指」である点です。SOXAIは、指輪型でも高精度にバイタルデータを取得できる技術を実現したと説明しており、睡眠中の装着負担が小さいことも利点です。本機が睡眠の状態(浅い/深い/覚醒)を時系列で可視化できる背景には、こうした装着部位の特性とSOXAIのアルゴリズムがあります。SOXAIは東京大学などとの共同研究で睡眠ステージ推定の精度を検証したとしており、リング型が単なる歩数計を超えた健康指標の取得手段になりつつあることがうかがえます。
一方で、同時発表された「からだメイト Watch」がもつ摂取カロリーの自動測定機能は、本リングには搭載されていません。Watchは米HEALBEの「FLOWテクノロジー」と生体電気インピーダンスセンサーを使う仕組みで、報道によればこのセンサーが指輪サイズに収まらないことが理由とされます。小型化と機能のトレードオフは、ウェアラブルが宿命的に抱える制約であり、リング型の「できること」の輪郭を理解するうえで重要なポイントです。
ビジネスモデルにも注目したい点があります。本機のアプリ「からだメイト」は基本機能を無料で使え、管理栄養士監修のアドバイスは月額600円(税込)の「Plusプラン」で提供されます。これは買い切り・サブスク不要を売りにしてきた本家SOXAIとは異なる方向性です。競合のOura Ringが詳細機能に月額課金を求める中、シャープは「ハードの販売+ソフトの継続課金」という、ヘルスケア領域で広がりつつある収益構造を取り入れたことになります(無料でも基本機能は使える点は補足しておきます)。
潜在的なリスクとして見落とせないのが、健康データの取り扱いです。心拍や皮膚温度、睡眠といった生体情報は極めてセンシティブで、誰がどこまでアクセスし、どう保管・活用するのかは利用者が事前に把握しておきたい領域です。実際の保存先や第三者提供の条件は各サービスのプライバシーポリシーで確認する必要があります。またシャープ自身が注記する通り、本機は医療機器ではなく、計測値はあくまで参考情報。診断や治療の代わりにはならない点も、繰り返し強調しておきます。
長期的な視座でいえば、この製品は「予防医療」や「セルフケア」の日常化に向けた一歩と位置づけられそうです。常時装着で蓄積される生体データは、将来的に医療や保険、フィットネスサービスと連携する可能性も考えられます。指輪一つが個人の健康データのハブになる未来は、利便性と引き換えに、データ主権をめぐる新たな論点を私たちに投げかけることになるかもしれません。
【用語解説】
スマートリング
指輪型のウェアラブルデバイス。手首に着けるスマートウォッチと異なり、指で脈波や体温を計測する。睡眠中も装着の負担が小さいことが特徴で、心拍・睡眠・活動量などを取得できる。
バイタルデータ
心拍数、皮膚温度、血中酸素レベルなど、体の状態を示す生体情報の総称。健康状態を客観的な数値として把握するための基礎データとなる。
IPX8 / IP6X
機器の防水・防塵性能を示す国際的な等級。IPX8は継続的な水没に対する高い防水等級で、本機は水深100m相当の条件で試験している。IP6Xは粉塵が内部に侵入しない最高レベルの防塵性能を意味する。
デュラテクト
シチズン時計が開発した表面硬化処理技術。金属表面を傷や色落ちに強くする加工で、もともと腕時計のケースやバンドに使われている。
SOXAI OS
SOXAIが開発した技術基盤。センサー設計やファームウェア、生体信号処理、データ処理を統合したもので、本機にはこのSOXAI OSが搭載されている。
FLOWテクノロジー
米HEALBEが持つ特許技術。生体電気インピーダンスセンサーで体内の水分や糖の変化を捉え、摂取カロリーを推定する。「からだメイト Watch」に採用されており、本リングには非搭載。
管理栄養士
栄養指導や食事管理を行う国家資格の専門職。本機の有料プランでは、この専門職が監修した食事・生活習慣のアドバイスが提供される。
Bluetooth Core 5.0
近距離無線通信規格Bluetoothのバージョンの一つ。本機はこの規格に準拠してスマートフォンとデータを同期する。
【参考リンク】
株式会社SOXAI 公式サイト(外部)
本機のセンシング技術を提供した横浜のヘルステック企業。SOXAI RINGの開発・販売を行う。
シチズン時計株式会社 公式サイト(外部)
本機が採用する表面コーティング「デュラテクト」を持つ時計メーカーの公式サイト。
シャープ COCORO STORE(からだメイト Ring)(外部)
シャープ公式の直販ECサイト内の製品ページ。販売価格はここで確認できる。
au +1 collection 発売案内(外部)
KDDI・沖縄セルラーによる発売告知。au Online Shopでの取り扱いを案内している。
【参考記事】
シャープがウェアラブルに本格参入 摂取カロリー計測ウォッチと2.1gの超軽量リング「からだメイト」の真価(ITmedia Mobile)(外部)
COCORO STORE税込価格をWatch 5万9400円、Ring 4万1800円と記載。販路の広さにも触れている。
シャープが初のスマートリング「からだメイト Ring」発表、IPX8防水で最大14日駆動(ケータイ Watch)(外部)
本体は幅6.7mm・厚み2.8mm、質量約2.1〜3.1g。Watch版との機能差やauでの取り扱い予定にも言及している。
スマートリング「Oura Ring 4」ついに日本発売 52800円から(Impress Watch)(外部)
比較対象となるOura Ring 4の日本発売を報道。本体価格は52,800円からとされている。
SOXAI RING 2 レビュー|Oura Ringと比較して実際に買った正直な評価(本能ブログ)(外部)
技術基盤のSOXAI RING 2の仕様を詳述。通常価格39,980円、サブスク不要の買い切り型と評価。
SOXAI RINGとOura Ringを比較!違いやどっちにするかの決め手(MiraLabAI)(外部)
SOXAIの自社製品とOura Ringを比較。SOXAIが国内シェアNo.1・日本製を訴求している点にも触れる。
【関連記事】
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本記事で触れたSOXAIと東京大学の睡眠ステージ推定研究を詳述。計測精度のエビデンスを知るのに最適。
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【編集部後記】
指輪ひとつで、自分の眠りや心拍が数値として見えてくる。そんな時代が、いよいよ身近なお店の店頭から始まろうとしています。みなさんは、自分の体のデータをどこまで知りたいと思いますか。便利さに惹かれる一方で、心拍や睡眠といった繊細な情報を預けることに、ためらいを感じる方もいるかもしれません。
どちらの感覚も、きっと正解です。健康データとの付き合い方に、唯一の正解はまだありません。だからこそ、この小さな指輪が開く未来を、みなさんと一緒に考えていけたらうれしいです。












