iPhone Duo登場にSamsungが皮肉連発|「3つ折りで待ってる」の裏で進んでいた生産終了

[最終更新]

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AppleとSamsungのようなライバル企業同士がSNS上で軽口を叩き合う光景は、もはや製品発表イベントの風物詩といっていいかもしれません。ただ、今回のiPhone Duo発表をめぐるSamsungの応酬には、笑って済ませるにはやや据わりの悪い背景がありました。「3つ折りで待っている」という強気の一言の裏側で、実際に何が起きていたのかを追ってみます。


2026年9月9日、Appleは「Surprise and Shine」イベントで初の折りたたみiPhone「iPhone Duo」と「iPhone 18 Pro」を発表した。Samsung Mobile US公式Xアカウントはイベント中「So far, so same」「reheating our leftovers」(=残り物の温め直し、の意)と投稿し、iPhone Duo発表前には「Making us wait? Fine. We’ll be over here, folding 3 ways」と自社の3つ折り技術に触れた。Duolingo公式Xアカウントも「They named a phone after me and made it bend over」と投稿し応酬に加わった。

From: 文献リンクSamsung reacts to Apple’s foldable iPhone Duo; ‘reheating our leftovers’

【編集部解説】

煽り文句と生産終了のタイムライン

Samsungが「Making us wait? Fine. We’ll be over here, folding 3 ways.」(=待たせるならそれでいい、こちらは3つ折りで待っている、の意)と投稿した際に念頭に置いていたのは、間違いなく自社の3つ折りスマートフォン「Galaxy Z TriFold」です。ただ、このTriFoldの状況を確認すると、この一言にはやや込み入った事情があることが分かります。

TriFoldは2025年12月に韓国で発売され、2026年1月には米国でも発売されました。価格は2,899ドルと、Samsungのフォルダブルラインナップの中でも突出した高価格帯の製品でした。ところが発売から3ヶ月足らずの2026年3月中旬、Samsungの広報担当者がBloombergに対し、TriFoldの生産を終了し、韓国では販売を即座に停止、米国でも在庫がなくなり次第販売を終了することを認めています。つまり、今回のSNS投稿がなされた2026年9月時点で、Samsungが「待っていてほしい」と胸を張った3つ折り機は、すでに市場からほぼ姿を消していたことになります。

「象徴的製品」という位置づけの功罪

複数の海外メディアは、TriFoldがもともと量産による収益化を目的とした製品ではなく、Samsungの技術力を示す「象徴的製品」として位置づけられていたと伝えています。だとすれば、短命に終わったこと自体は、Samsungの計画の範囲内だったとも読めます。ただ、それでもなお「3つ折りで待ってるよ」という一言をイベント当日にわざわざ選んだことには、注意が必要です。SNS上の一言は、多くの読者やメディアにとって、その会社の「現在の実力」を示すものとして受け取られます。実力の象徴として掲げた製品が、すでに店頭からほぼ姿を消しているという事実は、言葉の勢いほどにはその技術が量産・普及の段階に到達していないことを、同時に示してしまっているようにも見えます。

なお、Samsungは後継機(TriFold 2)の開発について、生産終了当時は「未定」としていました。その後、韓国のリーク情報として2027年半ばの投入観測が浮上していますが、Samsung公式による確認はまだありません。「待っている」の中身は、今のところ未確認のリーク情報の域を出ていないのです。

反応の速さの非対称

この「象徴的製品」をめぐる議論とは別に、もう一つ気になる点があります。強気な言葉でAppleを迎え撃つ一方、Samsungの対応の速さには、ある種のムラが見られます。同社の主力フォルダブル最新機「Galaxy Z Fold8」では、iPhone Duo発表の前日にあたる9月8日、内側ディスプレイの角がたわむとの報告を受け、Samsungは韓国メディアBusiness Post経由で「異物の混入からディスプレイを守るための意図的なクッション構造」であるとする公式説明を、報告の広がりからわずか1日程度で発信しています。当編集部でも9月7日時点でこの件を取り上げていますが、その後Samsungの説明が公式に出た形です。品質への懸念に対しては、迅速に「仕様です」と説明する体制が、この時点では機能していたことになります。

ところが、その翌日にSamsung自身がSNSで持ち出した「3つ折りで待ってるよ」という一言については、同じような説明責任の意識は働いていません。先述の通り、挑発材料に使ったTriFoldはすでに生産を終えた製品です。その生産終了そのものについては、2026年3月にBloombergへのコメントという形で一応の説明がなされていますが、「なぜ、既に売っていない技術を挑発の材料に使うのか」という点は、そもそも誰からも問われておらず、Samsung自身が触れる機会もありませんでした。

つまりSamsungは、消費者から直接指摘された品質面の懸念には1日で応答する一方、自らの発言の一貫性が問われるような「語られていない矛盾」には、外部から問われない限り向き合わない、という非対称な姿勢を見せていることになります。フォルダブル市場を7年前に切り拓いた当事者であっても、「説明する」という行為の優先順位は、常にユーザーの不安の大きさによって決まる、ということなのかもしれません。

この先、まだ分からないこと

Appleがこれから折りたたみ市場でどのような課題に直面するのか、あるいはSamsungが積み重ねてきた経験から利益を得て回避できるのかは、現時点では判断できません。TriFold 2の実在や投入時期は、今のところ未確認のリーク情報にとどまっています。また、Samsungが「仕様」と説明したFold8のたわみについても、個体差の大きさを報じるメディアがあり、この説明で実際にユーザーの不安が解消されるのかどうかは、まだ見えていません。

SNS上の応酬は、企業同士の距離感を測るには面白い材料です。ただ、その言葉が指し示す製品の実態まで踏み込んで初めて、応酬の「賞味期限」が見えてくるように思います。

【関連記事】

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TriFold発売当時の詳細は、この記事で確認できます。

【編集部後記】

強気な言葉の応酬は、見ていて単純に楽しいものです。ただ、その言葉の足元を確かめてみると、勢いのある一言と実際の製品の状態との間に、思った以上の距離があることに気づかされます。私たちが今回のやりとりから受け取ったのは、笑いというより、ある種の居心地の悪さでした。フォルダブルという市場そのものが、まだ多くの宿題を抱えたまま走っている、ということなのかもしれません。

【参考リンク】

Samsung Newsroom(US)(外部)
Samsung製品の公式発表・広報情報を掲載する媒体。今回のSNS投稿の背景を確認する際の一次情報源。

Apple Newsroom(iPhone Duo発表資料)(外部)
iPhone Duoのスペック・価格・発売日を公式に発表したプレスリリース。

Duolingo(公式サイト)(外部)
語学学習アプリを提供する企業。今回のSNS応酬に自ら参加した当事者。

【用語解説】

フォルダブル(Foldable)
画面を折りたたむことができるスマートフォンの総称。ヒンジ部分の耐久性と、開閉部の折り目(クリース)の目立ちにくさが、各社共通の技術的な焦点になってきた。

クリース(Crease)
折りたたみディスプレイの開閉部分に生じる折り目。反射光の下で特に目立ちやすく、機種ごとの評価を左右する要素とされる。

象徴的製品(Halo Product)
収益性よりも、技術力や先進性を示すことを主目的に投入される製品。市場投入数が限定的で、短命に終わることも少なくない。

【参考記事】

New iPhone Duo foldable gets wild, cheeky responses — Android Central(外部)
Duolingoの先制投稿の原文と、iPhone Duoの主要スペックを詳しく伝える記事。

Samsung Brutally Roasts Apple’s iPhone 18 and iPhone Duo — IBTimes UK(外部)
Samsungの投稿を時系列で網羅的に整理。iPhone 18 Proへの言及も含む記事。

Samsung confirms the Galaxy Z TriFold is being discontinued — SamMobile(外部)
TriFold生産終了について、Bloombergへの広報コメントを引用して伝えた記事。

Samsung officially kills Galaxy Z TriFold after just 3 months — Tom’s Guide(外部)
TriFold生産終了を独立して裏付けた記事。韓国メディアDongaの報道にも言及。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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