画面に触れるMacは、従来のMacを置き換えませんでした。同じM5 Proの14インチで、非タッチ機は42万9800円から、タッチ対応のPROLED XDR機は49万9800円から。Appleは両方を並べて売っています。10月21日に問うた「なぜいま触れるMacなのか」への答えは、選べる形で届きました。
Appleは米国時間2026年10月26日から28日にかけて、新しいMacBook Pro、iMac、iPad miniを発表した。PROLED XDRディスプレイ搭載のMacBook Proは、Macで初めて画面へのタッチ操作に対応し、タンデムOLEDとM5 Pro/M5 Maxを備える。14インチは49万9800円から、16インチは59万9800円から。M6搭載の14インチMacBook Proは33万9800円から、M6搭載のiMacは24万9800円から。
iPad miniは8.5インチのOLEDとA20 Proを搭載し、IP67に対応して、Wi-Fiモデルは11万9800円から。日本ではいずれも10月29日に予約を始め、11月6日に発売する。
From:
Apple、PROLED XDRディスプレイを搭載し、Macで初めてタッチ操作に対応した画期的なMacBook Proを発表
【参考動画】
クリストファー・ローリー氏のチャンネル(https://www.youtube.com/@ChrisLawley)で公開された、Appleのデイブ・パクラ氏へのインタビュー「Apple Explains Its Biggest iPad mini Update」。
【編集部解説】
10月21日の記事で、タッチ対応のMacBook Proが出るなら、発表当日に最初に確かめたいのは「なぜいま触れるMacなのか」をAppleがどう説明するかだ、と書きました。答えは3日間に分かれて届きました。米国時間10月26日にiPad mini、27日にM6を積んだ14インチMacBook ProとiMac、28日にPROLED XDRディスプレイのMacBook Proです。日本も最初の発売国に入り、どれも10月29日に予約が始まって、11月6日に店頭に並びます。
事前の観測は、大筋で当たっていました。タッチとOLEDは14インチと16インチの両方に入り、チップはM6 ProではなくM5 Pro/M5 Maxでした。iMacはタッチに対応していません。ここでは、観測では見えなかった部分、つまりAppleが実際にどう作り、どう値付けしたかを見ていきます。
タッチは「置き換え」ではなく「足し算」だった
Appleのプレスリリースは、タッチを新しい操作の主役としては描いていません。例に挙がるのは、スワイプでのスクロール、ピンチでの写真の拡大、スライドのドラッグ&ドロップ、ダブルタップでのウインドウの全画面化、フリックでのタイル表示です。キーボードショートカットとトラックパッドのジェスチャーと「連係」するもの、と位置づけられています。報道で使われた「タッチファーストではなくタッチフレンドリー」という言い方に近い作りです。
作り方で目を引くのは3点です。
1つ目は、タッチセンサーをパネルの上に重ねず、ディスプレイパネルに直接組み込んだことです。Appleはこれで遅延を減らしたと説明しています。
2つ目は、macOSがタッチを自動的にクリックに変換することです。タッチに合わせて作り直していない既存の多くのアプリも、すぐに指で操作できます。タッチに特化した操作を作りたい開発者には、新しくなったシステムジェスチャーAPIが用意されました。Notion、Canva、Zoom、Microsoft Word・Excel・PowerPoint・Outlook、Adobe Lightroom、DaVinci Resolve、Blender、Maxon Cinema 4Dなども対応し、Appleは年内に利用できるようになるとしています。
3つ目は、腕を伸ばして画面を押したときの揺れへの手当てです。ヒンジを新たに設計してタッチ時の安定感を高め、ビデオ通話中に画面に触れても映像がぶれないよう、カメラ映像の手ぶれ補正をかけるとしています。
2010年にスティーブ・ジョブズ氏が退けた理由の一つは、縦に立てた画面に手を伸ばす姿勢でした。2016年のTouch Barのころにも、フィル・シラー氏が、社内でタッチ画面のMacを繰り返し試したと明かし、27インチのiMacに腕を伸ばして触れるのは理にかなわないと説明していました。今回のヒンジと手ぶれ補正は、その「腕と画面」の問題のうち、触れたときの安定性に、ハードウェアの側から手を打った部分と読めます。腕を伸ばす姿勢の負担まで変わるかは、実機で確かめることになります。
あわせて、iPhoneのDynamic IslandがMacに来ました。ライブアクティビティやSiri AIの表示をここにまとめ、Siri AIが利用可能で有効になっている場合は、Spotlightもここに移ります(Siri AIはmacOS 27.2でベータ版として提供)。リリースはDynamic Islandをタップして操作する例も挙げており、タッチをmacOSの画面設計そのものに取り込もうとする動きと読めます。
同じM5 Proの14インチで、開始価格の差は7万円
価格を見ると、Appleの考え方がもう一段はっきりします。PROLED XDRディスプレイのMacBook Proは、M5 Pro搭載の14インチが49万9800円から、16インチが59万9800円からです。M5 Max搭載では14インチが76万9800円から、16インチが82万9800円からになります。
一方で、従来のLiquid Retina XDRディスプレイを使う非タッチのM5 Pro/M5 Max機も、Apple Storeで売られ続けています。M5 Pro搭載の14インチは42万9800円から、16インチは51万9800円からです。同じM5 Proの14インチの最小構成で比べると、開始価格の差は7万円になります。16インチでは8万円です。
| 14インチ | 16インチ | |
|---|---|---|
| PROLED XDR(タッチ対応・タンデムOLED) | 49万9800円から | 59万9800円から |
| Liquid Retina XDR(非タッチ) | 42万9800円から | 51万9800円から |
| 差額 | 7万円 | 8万円 |
| 参考:M6搭載(非タッチ) | 33万9800円から | — |
7万円の差に含まれるのは、タッチ操作だけではありません。HDRコンテンツで最大2,000ニト、屋外のSDR表示でも最大2,000ニトのピーク輝度(フルスクリーンの持続輝度は最大1,000ニト)、10,000,000:1のコントラスト、P3に加えてAdobe RGBを覆う色域、そしてM5 Pro搭載の非タッチ機と比べて、14インチで0.22kg、16インチで0.32kgの軽量化です。14インチのM5 Pro搭載モデルは1.38kgになりました。外出先でリファレンス品質の画面がほしい写真家や映像の編集者にとっては、タッチよりも画面と重さのほうが、差額の主な理由になりそうです。
タッチが不要な人には非タッチ機が、画面に投資したい人にはPROLED XDR機が残る。Appleはタッチを全員に求めるのではなく、選べる形で出しました。
M6搭載の14インチMacBook Proは33万9800円からです。PC Watchなどの報道によると、M5搭載の14インチは6月25日の価格改定で27万9800円から33万9800円になっており、M6はその改定後の価格を引き継ぎました。据え置きとはいえ、改定前より高い水準での据え置きである点には注意が要ります。中身はCPU・GPUがそれぞれ2コア増えて12コアになり、M5比でグラフィックスが最大30パーセント、AIのワークロードが最大25パーセント速くなりました。バッテリーは最大24時間(ビデオストリーミング時)で、Appleは「Mac史上最長」としています。
M6搭載のiMacは24万9800円からです。TechnoEdgeなどが伝えた「M4比で最大5倍」は、LM Studioでのプロンプト処理を、M4搭載の前世代iMacと比べた数字です。Excelなど日々の作業では最大1.5倍、写真編集のグラフィックスでは最大2倍とされています。5倍はAIモデルを手元で動かす場面での値として読むのが正確です。
iPad miniは「OLEDにしたが、120Hzは入れなかった」
iPad miniは、Appleが「史上最大のアップデート」と呼ぶ変わり方をしました。画面は8.3インチの液晶から8.5インチのOLEDになり、ベゼルを24パーセント細くして、ほぼ同じ大きさの本体に収めています(幅は2.2mm狭くなりました)。HDRコンテンツのピーク輝度は、Appleによれば前世代の2倍以上の1,200ニトで、最小は1ニトです。薄さは6.3mmから5.4mm、重さはWi-Fiモデルで293gから255gになり、iPad miniとして初めてIP67の防塵・耐水に対応しました。9月26日の記事で伝えたリークのとおり、チップはA20 Pro、前面カメラは長辺側に移っています。
| iPad mini(A17 Pro) | iPad mini(A20 Pro) | |
|---|---|---|
| 画面 | 8.3インチ 液晶(Liquid Retina) | 8.5インチ OLED(Super Retina XDR) |
| 輝度 | 500ニト | SDR 最大600ニト、HDRのピーク1,200ニト |
| 薄さ | 6.3mm | 5.4mm |
| 重さ | 293g | 255g |
| 防塵・防水 | — | IP67 |
| バッテリー | 19.3Wh、最大10時間 | 18.9Wh、最大10時間 |
| 価格(税込) | 7万8800円から(2024年の発売時)、9万9800円から(2026年6月の改定後) | 11万9800円から |
一方で、Appleの仕様ページにはリフレッシュレートの項目がなく、ProMotionの記載もありません。報道では、表示の書き換えは毎秒60回で、120回への対応は見送られました。ProMotionは引き続きiPad Proだけの機能です。
この点について、MacRumorsによると、ハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントのデイブ・パクラ氏は、YouTubeで公開されたクリストファー・ローリー氏のインタビューで、ディスプレイの体験は一つの仕様だけで決まるものではないと語りました。OLEDは画素の応答が液晶より一桁以上速く、動きのぼけが大きく減る、という説明です。同記事が引用した発言には、60Hzを選んだ具体的な理由は示されていません。
電池にも小さな変化があります。容量は前モデルの19.3Whから18.9Whへわずかに減りましたが、Appleが示す駆動時間はどちらもWi-Fiでのインターネット利用やビデオ再生で最大10時間です。本体を0.9mm薄く、38g軽くしながら、駆動時間の表示は同じに保ったことになります。
価格はWi-Fiモデルが11万9800円からです。2024年の前モデルは128GBのWi-Fiモデルが7万8800円から始まり、6月25日の改定で9万9800円になったと報じられていました。改定後の価格と比べても2万円高く、iPad miniは「手頃な小型iPad」から、OLED・防水・最新チップをまとめた小型の上位機へと性格を変えつつあります。
次の一手:2027年、上位はタッチへ一本化か
発表から5日後の11月2日、TechnoEdgeは、Bloombergのマーク・ガーマン氏の観測として、2027年にM7 Pro/M7 Maxを積むMacBook Proの上位モデルをタッチ対応に一本化する見通しを伝えました。非タッチの上位機には後継が用意されず、2027年のMacBook Proは、M7を積む非タッチの入門機と、M7 Pro/M7 Maxを積むタッチ対応の上位機の2系統になるという内容です。Appleは発表していません。
この観測が当たるなら、今回の「足し算」は移行の第一段だったと見ることもできます。いまは非タッチ機を並べて7万円の差を選ばせ、次の世代で上位をタッチに寄せる。段階を踏めば、タッチを使わない人や法人の顧客にも、乗り換えの時間を残す形になります。
ジョブズ氏が、タッチ面は縦に置くものではないとして画面に触れるMacを退けた2010年から、16年がたちました。今回の製品と併売の形からは、Appleの答えは、触れることを強制するのではなく、触れたくなる画面と、触れたときの安定感を高める構造を先に用意することだったと読めます。腕を伸ばす姿勢がどこまで気にならなくなるのか。11月6日からは、実際に手に取った人たちの使い方が、この読みを確かめていくことになります。
【関連記事】
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発表前の観測をまとめた記事。2010年のジョブズ氏の発言やTouch Barの経緯から、タッチ対応のMacの前提を整理した。
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【編集部後記】
同じ週にM6を載せて出たiMacは、タッチに対応しませんでした。2016年にシラー氏が、腕を伸ばして触れるのは理にかなわないと例に挙げたのは、ノートではなく27インチのiMacでした。
腕の問題がいちばん重いのは、机の奥に立つ画面です。ヒンジで安定感を高められるノートから先に触れるようにした順番は、その問題の重さの順でもあるように見えます。据え置きのMacに指が届く日は来るのか。次に確かめたいのは、そこです。
【用語解説】
PROLED XDRディスプレイ
Appleが新しいMacBook Proに採用したディスプレイの名称。タンデムOLEDを使い、Macで初めて画面へのタッチ操作に対応する。
タンデムOLED
光る層を2段に重ねた有機EL。1段のものより明るさを出しやすく、パネルの寿命も延ばしやすい。
Liquid Retina XDRディスプレイ
従来のMacBook Proが使ってきた、ミニLEDのバックライトを持つ液晶ディスプレイ。M6搭載機と非タッチのM5 Pro/M5 Max機が採用する。
ProMotion
表示する内容に合わせて、画面の書き換え回数(リフレッシュレート)を変えるAppleの技術。PROLED XDRディスプレイは10〜120Hzで動く。iPadではiPad Proだけが対応する。
リフレッシュレート
画面を1秒間に何回書き換えるかを示す値。単位はHz。60Hzなら毎秒60回、120Hzなら毎秒120回で、高いほどスクロールなどの動きがなめらかに見える。
Dynamic Island
iPhoneから来た、画面上部の表示領域。通知や再生中の音楽、Siri AIなどの情報をまとめて表示し、タップして操作できる。
Touch Bar
2016年にMacBook Proのキーボード上部に加えられた、細長いタッチ式の表示部。2021年の14インチ・16インチモデルで物理キーに戻り、2023年に搭載機の販売を終えた。
IP67
防塵・防水の等級。iPad miniは、最大水深1mで最大30分の条件で試験されている。
Wh(ワット時)
電池にためられる電力量の単位。電圧の違いも含めて比べられるため、機種の間で電池の大きさを比べるのに向く。
【参考リンク】
MacBook Pro(外部)
Apple(日本)のMacBook Proの製品ページ。PROLED XDR搭載機とLiquid Retina XDR搭載機を案内する。
MacBook Pro(PROLED XDRディスプレイ)技術仕様(外部)
PROLED XDRディスプレイ搭載MacBook Proの仕様。HDRのピーク輝度や持続輝度の条件、構成ごとの重量を載せている。
MacBook Proを購入(外部)
Apple Storeの購入ページ。M6搭載機と、非タッチのM5 Pro/M5 Max搭載機の構成ごとの価格を確かめられる。
iMac(外部)
Apple(日本)のiMacの製品ページ。M6を搭載した新しいiMacの仕様と、ブルーやグリーンなど7色のカラーを案内している。
iPad mini 技術仕様(外部)
A20 Pro搭載のiPad miniの仕様。画面の輝度の条件、寸法、重量、18.9Whのバッテリーと駆動時間を載せている。
Apple、M6を搭載した新しい14インチMacBook Proを発表(外部)
2026年10月27日のAppleの発表。M6の性能、最大24時間のバッテリー駆動、33万9800円からの価格を伝える。
Apple、パフォーマンスとAI機能を大幅に向上させる、M6搭載の新しいiMacを発表(外部)
2026年10月27日のAppleの発表。M4搭載の前世代iMacと比べた性能の数字と、その比較の条件を脚注で示している。
Apple、iPad miniに史上最大のアップデートを導入(外部)
2026年10月26日のAppleの発表。8.5インチのOLED、A20 Pro、IP67への対応と、11万9800円からの価格を伝える。
【参考記事】
MacとiPadが値上げ。MacBook Neoは11万9,800円からに(外部)
PC Watch、2026年6月25日。MacBook Pro 14インチは33万9800円から、iPad miniは9万9800円に。
アップル、MacBook Pro上位モデルをタッチ対応に一本化か? M7 Pro/M7 Max搭載の2027年モデルで転換との見込み(外部)
テクノエッジ、2026年11月2日。ガーマン氏の観測として、2027年にMacBook Proの上位機をタッチ対応へ一本化と伝える。
Apple Executive Comments on New iPad Mini Lacking 120Hz Display(外部)
MacRumors、2026年10月29日。iPad miniの60Hzについて、パクラ氏がOLEDの画素の応答の速さを語った発言を伝える。
Apple Goes Part Time on Touch(外部)
Backchannel(現在はWIREDに掲載)、2016年11月。シラー氏が、タッチ画面のMacを採らなかった理由を語った。
【速報】M6チップ搭載の新型MacBook Proが登場。タスクは高速に、お値段は据え置きで(外部)
ギズモード・ジャパン、2026年10月27日。M6搭載の14インチMacBook Proが、前モデルの改定後の価格に据え置かれたと伝える。



