OPPO Find X9 Ultra|200MPカメラ×2基、10倍光学ズーム復活──「撮ることへの哲学」が戻ってきた

[更新]2026年4月27日

スマートフォンのカメラ競争が「終わった」と感じている方は多いかもしれません。主要メーカーは手堅い改良を重ね、AIによる画像処理が差別化の主戦場になって久しいです。しかしOPPOは2026年、まったく別の答えを持ってきました。200MPカメラ2基、世界初の10倍光学ズーム、そしてHasselblad製テレコンバーターまで用意した「Find X9 Ultra」は、まるでカメラ業界の設計思想をスマートフォンに持ち込んだような一台です。この端末が示すのは、ハードウェアへの過剰なまでの執着——そして、そこにしかない写真体験の可能性です。


2026年4月21日に中国で発表され、英国・欧州では5月8日より順次販売が開始されたOPPO Find X9 Ultraは、スマートフォンカメラの常識を問い直す構成を持つ。リアには計5基のカメラを搭載し、200MPメインカメラ(Sony LYTIA 901・1/1.12インチセンサー)と200MPの3倍ペリスコープ望遠(1/1.28インチ)を中核に据える。さらにスマートフォン世界初となる50MPの10倍光学望遠カメラと50MPの超広角カメラ、そして色再現精度向上のための分光センサーを加え、Hasselblad Master Camera Systemと称するシステム全体で一体的に制御される。

10倍光学ズームの復活はSamsung Galaxy S23 Ultra以来で、近距離の200MP 3倍望遠と遠距離の50MP 10倍望遠を組み合わせた構成は、短中長望遠すべての距離帯を高解像度でカバーする。オプションのHasselblad 300mm Explorer Teleconverterを装着すると、3倍望遠は約13倍相当に延長される。本体価格は256GBモデルで7,499人民元(約1,099ドル)と、Samsung Galaxy S26 Ultraの発売時定価を約200ドル下回る。

From: 文献リンクOppo is building camera phones like the smartphone race never ended

【編集部解説】

Find X9 Ultraの背中には、「Hasselblad」という6文字が刻まれています。カメラに詳しい人ほど、この刻印に何かしらの感情を持つはずです。月面に最初に立ったカメラを作り、20世紀の写真史を象徴してきたスウェーデンのブランド。それがいま、中国メーカーのスマートフォンの背面に堂々と居場所を持っている——この光景が「普通」になったのは、実はここ数年のことです。

そしてHasselbladは、OPPOだけが手に入れたパートナーではありません。スマートフォン業界では、過去10年ほどの間に、老舗カメラブランドとの提携が一つの「陣営」を形成してきました。私たちは、Find X9 Ultraという一台を起点に、その地図を眺めてみたいと思います。

スマートフォンとカメラブランドの提携、現在地

主要な提携を整理すると、構図がはっきり見えてきます。

カメラブランド提携先(現行)提携開始主な対象モデル
HasselbladOPPO2022年Find Xシリーズ
LeicaXiaomi2022年Xiaomi Ultraシリーズ
LeicaSharp2021年AQUOS Rシリーズ
ZeissVivo2020年Vivo Xシリーズ
ZeissSony長年Xperiaシリーズ
RicohRealme2025年Realme GT 8 Pro以降

過去には、HuaweiがLeicaと組み、P9を皮切りに約6年にわたって「Leica監修カメラ」をフラッグシップの代名詞にしてきました。この提携は2022年3月末に終わり、Leicaはわずか2か月後にXiaomiとの新たな関係を発表します。米中対立がHuaweiのスマートフォン事業を直撃したことで、Leicaは新たなパートナーに乗り換えた——という、極めて現実的な事業判断の結果でした。

OnePlusも2021年からHasselbladと提携していましたが、OnePlus 13を最後に提携を終了し、自社の「DetailMax Engine」へと舵を切っています。提携は永遠ではなく、各社の戦略変化に応じて動いていく——これも近年の特徴です。

ちなみに、OPPO・OnePlus・Vivo・Realmeはいずれも中国のBBK Electronics傘下にあります。同じグループの中で、Hasselblad・Zeiss・Ricohと別々のブランドと組み、それぞれ独自の「写真の世界観」を打ち出している構図は、戦略として極めて意図的です。

Apple・Samsungが組まない理由

この相関図を眺めて気づくのは、世界トップ2のスマートフォンメーカーであるAppleとSamsungの名前がどこにも出てこないことです。両社は今もなお、老舗カメラブランドと組まずにフラッグシップのカメラを作り続けています。

これは「組めない」のではなく、「組まない」選択です。両社はそれぞれ独自の画像処理システムに莫大な投資を続けており、ハードウェアからソフトウェアまでをエコシステム内で垂直統合できる立場にあります。Appleの「Photonic Engine」、Googleの「Tensor」処理、Samsungの「ProVisual Engine」——いずれも自社のシリコンと一体で設計された画像パイプラインです。

センサー単体で見ると、Appleは長らくSonyからCMOSイメージセンサーを独占的に調達してきましたが、供給遅延などを背景に、Samsungにもセンサー開発を依頼する流れが進んでいます。つまり、ハードウェアの部品調達という意味では、AppleもSamsungも他社の力を借りています。それでも、製品の表側に「Sony Inside」とは決して書かない。これが「組まない」と「部品を買う」の本質的な違いです。

「写真とは何か」の定義権をめぐる戦い

ここで考えたいのは、これらの提携が単なるブランドのライセンス料収入や、マーケティング上の「箔付け」に留まらないということです。Hasselblad・Leica・Zeissがスマートフォン業界に持ち込んでいるのは、技術というより「写真とは何か」という思想です。

Leicaには「Authentic」と「Vibrant」という2つの色プロファイルがあり、Xiaomiユーザーは撮影前にどちらかを選びます。Hasselbladには「Natural Color Solution」というカラーサイエンスがあり、OPPOはこれをモバイル用に再設計しました。さらに「Hasselblad Portrait Mode」では、Hasselbladの名玉XCDレンズシリーズのボケ味を再現することを目指しています。Zeissのレンズコーティング哲学は、Vivoのポートレートに独特の階調をもたらしています。

これらは「機能」というより「美学」です。何を「自然な肌色」と呼ぶか。何を「美しいボケ」と感じるか。何を「正しい光の表現」とするか——。本来であればカメラ会社が100年かけて積み上げてきた写真文化の中で定義されてきた問いに、スマートフォン業界は提携という形で接続しているのです。

対して、Apple・Samsungが提示する写真像は、「多くの人がスマートフォンの画面で見て、SNSにシェアしたときに最も映える絵」を起点に作られているようにも見えます。AIによる空の青さ強調、肌のなめらか化、夜景の積極的な明るさ補正——これらは「正しい」というより「歓迎される」処理です。両者の哲学は、優劣ではなくベクトルが違います。

カメラブランド連合は、この「歓迎される処理」の覇権に対して、別の答えを提示しているのだと言えます。「写真とはこういうものだ」という定義の主導権を、シリコンバレーの計算写真にすべて譲り渡したくない——その意思が、提携という形で結晶化しているように見えます。

Find X9 Ultraが示すもの

Find X9 Ultraが200MPカメラを2基搭載し、10倍光学ズームを「復活」させ、300mm相当のテレコンバーターまで用意したのは、まさにこの陣営の論理に沿っています。AIで補えるものは補えばいい、しかし光が物理的にレンズを通り、センサーに到達する瞬間に存在するものを、最初から多く取りに行く——これはカメラメーカーの発想です。

象徴的なのは、本体側面のシャッターボタンの存在感、Hasselblad XPanモードの65:24アスペクト比、そしてレンズアクセサリーの設計です。スマートフォンが「すべてを内包する万能デバイス」を目指してきた潮流とは逆方向に、専用機の感覚を取り戻そうとしている。Find X9 Ultraは、その姿勢を最も濃く体現した一台と言えるかもしれません。

ただし、私たちはこれを「正解」と決めつけるべきではないと思います。AppleとGoogleが磨いてきた計算写真の世界もまた、写真の歴史の正統な延長です。スマートフォンを取り出して、構えて、考えずにシャッターを押すだけで、誰の手にも美しい写真が残る——この民主化もまた、写真文化が成し遂げてきた偉業の一つです。

問題は、どちらが正しいかではなく、私たちユーザーが「自分にとっての写真」をどう定義するか、です。Find X9 Ultraのような端末がカメラ陣営の哲学を強烈に提示してくれるからこそ、私たちは「自分が撮りたい一枚」がどこから来るのかを、改めて考えることができます。

Find X9 Ultraは2026年夏の日本発売が予告されています(2026年4月14日、オウガ・ジャパン発表会にて)。グローバル展開は欧州の一部市場が先行する見込みです。

【用語解説】

Hasselblad(ハッセルブラッド)
1941年にカメラ製造を開始したスウェーデンのブランド。1969年のアポロ11号月面着陸でも使用されたことで知られ、中判カメラの代名詞的存在。現在は中国DJI傘下。OPPOとは2022年から提携し、カラーサイエンスや撮影UIに技術・美学を提供している。

ペリスコープ望遠カメラ
潜望鏡(ペリスコープ)と同じ原理で光路を直角に折り曲げることで、スマートフォンの薄い筐体に長焦点レンズを収める構造。倍率を上げるほど光学系が長くなるため、従来の直進型では本体が厚くなる問題があった。光路の折り曲げにはプリズムまたはミラーを使う。

Sony LYTIA 901
ソニーが開発したスマートフォン向けCMOSイメージセンサー。1/1.12インチという大型センサーサイズと、独自の積層構造「2層トランジスタ画素技術」により、ノイズ低減と高感度性能を両立する。Find X9 Ultraのメインカメラに採用。

Hasselblad Natural Color Solution(ナチュラル・カラー・ソリューション)
Hasselbladが中判カメラの開発を通じて構築した色再現のフレームワーク。人間の肌色・空・自然物をどう表現するかの哲学をデータ化したもの。OPPOはこれをモバイル向けに再設計し、Find Xシリーズに適用している。

Hasselblad XPanモード
Hasselbladが1998年にXPan(日本ではFujifilm TX-1として販売)という65:24の横長パノラマフィルムカメラを発売したことに由来する撮影モード。Find X9 Ultraでは同比率の超横長フレームで撮影できる。

計算写真(コンピューテーショナル・フォトグラフィー)
光学系の物理的な制約を、AIや機械学習などのソフトウェアで補完・拡張する撮影技術の総称。多枚合成によるHDR処理、ナイトモードでの低照度撮影、ポートレートモードの背景ボケ再現などが代表例。AppleやGoogleが特に力を入れている領域。

BBK Electronics(歩歩高電子)
中国広東省東莞市に本社を置くコングロマリット。OPPO・OnePlus・Vivo・Realmeの4つのスマートフォンブランドを傘下に持つ。各ブランドは独立した経営体制を取りながら、部品調達などで一部協調関係にある。

分光センサー(マルチスペクトルセンサー)
可視光だけでなく、複数の波長帯の光を同時に検出するセンサー。スマートフォンカメラでは主にホワイトバランスの精度向上に活用され、蛍光灯・LED・日光など光源の種類を正確に識別することで、色かぶりを抑えた自然な発色を実現する。

【参考リンク】

OPPO Find X9 Ultra — 製品ページ(グローバル)(外部)
Find X9 Ultraの公式スペック・カラー・購入情報。グローバル版の詳細はこちらから。

Hasselblad 公式サイト(外部)
1941年にカメラ製造を開始した中判カメラブランド。OPPOとの提携で開発したカラーサイエンスや撮影哲学の背景を知るために。

Xiaomi 14 Ultra(Leica提携の比較参照点)(外部)
Leica提携フラッグシップの一例。OPPOのHasselblad路線との比較において参照点となる一台。

【参考記事】

Xiaomi and Leica team up to take on Huawei’s former flagship partner(外部)— The Register
Huawei×Leica提携終了とXiaomi移行の経緯。米国制裁がカメラ業界の提携地図を塗り替えた背景を報じる。

OPPO and Hasselblad Extend Partnership to Develop Next-Generation Mobile Imaging System(外部)— OPPO Newsroom
OPPO×Hasselblad提携の延長と、Hasselblad Master Camera Systemの詳細を公式発表したプレスリリース。

Apple turns to Samsung for new iPhone 16 camera sensors(外部)— AppleInsider
Appleのセンサー調達戦略の変化を報じる記事。「カメラブランドと組まない」戦略の背景を理解する参照点。

Xiaomi renews Leica partnership ahead of Xiaomi 17 global event(外部)— HuaweiCentral
2026年2月に更新されたXiaomi×Leica提携。カメラブランド提携が継続的な戦略として機能していることを示す。 

【編集部後記】

スマートフォンのカメラが「上手い写真」を自動的に作ってくれるようになった頃から、私たちは少しずつ、シャッターを切る前に何かを考えることをやめていったかもしれません。Find X9 Ultraのような端末が問いかけているのは、結局そこだと思います。光をどう切り取るかを自分で考えたい人間と、最良の一枚を手軽に持ち帰りたい人間——どちらが正しいわけでもなく、どちらの欲求も本物です。私たちが次に手にするカメラが、どちら側に立っているのかを意識してみるだけで、写真を撮る時間の意味が少し変わるかもしれません。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。