Last Updated on 2025-05-08 09:24 by admin
OpenAIは米国食品医薬品局(FDA)と医薬品評価プロセスを迅速化するためのAI活用について協議を進めている。Wiredが2025年5月7日(水)に報じたところによると、高位のOpenAI社員がここ数週間でFDA関係者と複数回会合を持ち、「cderGPT」と呼ばれるプロジェクトについて議論している。
cderGPTは医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research、CDER)向けのAIツールと思われ、同センターは米国の処方箋薬と市販薬の規制を担当している。この協議にはイーロン・マスクの「政府効率化部門」(Department of Government Efficiency、DOGE)の関係者2名も参加している。
FDA長官のMarty Makaryは今週、AIを活用して医薬品承認プロセスを短縮する目標について言及した。一般的に新薬の開発プロセスは10年以上かかり、数十億ドルのコストがかかるが、OpenAIとFDAの協力は、特にそのタイムラインの最終段階を加速することを目指している。
AIは医薬品開発の遅い段階を効率化できる可能性があるが、AIモデルの不一致をどう管理するかという懸念も残されている。現時点では、OpenAIとFDAの間で正式な契約は締結されていない。
from:OpenAI and the FDA Are Holding Talks About Using AI In Drug Evaluation
【編集部解説】
OpenAIとFDAの協議は、医薬品開発の長い道のりを短縮する可能性を秘めています。新薬開発には通常10年以上かかり、数十億ドルのコストがかかることが知られていますが、AIがこのプロセスを効率化できるかもしれません。
特に注目すべきは「cderGPT」と呼ばれるプロジェクトです。これは医薬品評価研究センター(CDER)向けのAIツールと考えられ、処方箋薬と市販薬の規制を担当する部門でのAI活用を目指しています。
FDAは実はすでにAI活用の一歩を踏み出しています。Makary長官が述べたように、FDAはすでに「初のAI支援による科学的審査」を完了しており、これは始まりに過ぎないとのことです。また、FDAは2023年12月に内部使用のための大規模言語モデル開発のためのフェローシップを公募するなど、独自の取り組みも進めています。
この動きは、トランプ政権の政府効率化政策とも連動しています。トランプ大統領は就任初日に「政府効率化部門」(DOGE)を設立する大統領令に署名し、連邦技術とソフトウェアの近代化を目指しています。イーロン・マスクのDOGEからの関係者がOpenAIとFDAの協議に参加していることからも、この連携が見て取れるでしょう。
AIを医薬品評価に活用する際の課題も存在します。PharmaLexのトム氏が指摘するように、FDAは臨床データの審査に加えて、AIアルゴリズム自体も審査する必要があります。そのための専門知識やリソースをFDAがどれだけ早く確保できるかが課題となるでしょう。
また、AIモデルの信頼性確保も重要な課題です。FDAは2025年3月にAIモデルの信頼性評価のための7ステッププロセスを含むガイダンスを発表しており、特に「ステップ4:AIモデルの信頼性を確立するための計画を策定する」段階でFDAとの事前協議が推奨されています。
医薬品開発プロセスの短縮は患者にとって朗報となる可能性がありますが、安全性と有効性のバランスを取ることが重要です。PhRMAの広報担当者が述べるように、「AIはまだ発展途上であり、それを活用するには患者を中心に据えた思慮深いリスクベースのアプローチが必要」なのです。
OpenAIは1月に政府規制に準拠するよう設計された「ChatGPT Gov」を発表しており、政府機関との協力体制を整えつつあります。今回のFDAとの協議もその一環と見ることができるでしょう。
医薬品開発におけるAI活用は、申請の完全性チェックなどの比較的単純なタスクから始まり、徐々により複雑な用途へと発展していく可能性があります。このアプローチは、AIの信頼性を段階的に確立しながら、医薬品開発プロセス全体の効率化を図る賢明な戦略と言えるでしょう。
【用語解説】
OpenAI:
サンフランシスコを拠点とするAI研究開発企業。ChatGPTなどの大規模言語モデルを開発している。
FDA(Food and Drug Administration):
米国食品医薬品局。日本の厚生労働省に似た役割を持ち、医薬品や食品の安全性・有効性を確保する政府機関。
CDER(Center for Drug Evaluation and Research):
FDAの医薬品評価研究センター。処方箋薬と市販薬の規制を担当する部門。
cderGPT:
CDERとGPTを組み合わせた名称で、医薬品評価プロセスにAIを活用するプロジェクト。
DOGE(Department of Government Efficiency):
トランプ大統領が設立した政府効率化省。イーロン・マスクが率いる。
ChatGPT Gov:
政府規制に準拠するよう設計された、OpenAIの自己ホスト型チャットボット。
PhRMA(Pharmaceutical Research and Manufacturers of America):
米国研究製薬工業協会。製薬業界の主要企業が加盟する業界団体。
【参考リンク】
OpenAI公式サイト(外部)
OpenAIの公式サイト。AIの研究と開発に関する情報、製品、ビジョンを提供している。
FDA公式サイト(外部)
米国食品医薬品局の公式サイト。医薬品規制や承認プロセスに関する情報を掲載。
ChatGPT(外部)
OpenAIが提供する対話型AI。無料版と有料版があり、様々な質問に回答できる。
【参考動画】
【編集部後記】
AIが医薬品開発の未来を変えようとしています。皆さんは新薬が市場に出るまでの道のりがどれほど長いか考えたことはありますか?OpenAIとFDAの協力が実を結べば、待ち望まれている治療法がより早く患者さんの手元に届く日が来るかもしれません。AIと医療の融合は、私たちの健康と生活をどう変えていくでしょうか。この変革の波に、あなたはどんな期待や懸念を持ちますか?ぜひSNSで皆さんの考えをシェアしてください。