9月27日の夜、JR東日本の駅でクレジットカードが使えなくなりました。券売機には「現金のみ」の貼り紙が出ていました。それでも改札は、いつもどおりSuicaで通り抜けられました。同じ夜の同じ駅で、止まった手続きと動き続けたサービスは、どこで分かれていたのでしょうか。
2026年9月27日(日)夜、JR東日本の駅で、クレジットカードできっぷを買えなくなる障害が起きた。高円寺駅では19時ごろの時点で、指定席券売機に「システム障害によりクレジットカードがご利用になれません」との掲示が貼られ、現金のみの取り扱いとなっていた。駅の構内放送は、東京駅など他の駅でも同様の状態だと案内していた。一方、Suicaでの乗車と改札機でのオートチャージは通常どおり動き、券売機ではSuicaのチャージ残額できっぷを買えた。
新宿駅では20時ごろ、駅員が「だんだん復旧してきた」と説明し、20時15分ごろにはカードできっぷを購入できた。9月28日14時半までに確認したJR東日本の公式サイトなどでは、この障害に関する発表は出ていない。
高円寺駅、19時の券売機
9月27日(日)の19時ごろ、筆者は高円寺駅で、指定席券売機からきっぷを買おうとしていました。券売機には、すでに「ただいまシステム障害によりクレジットカードがご利用になれません。現金のみのお取り扱いとなっております。」という貼り紙がありました。

クレジットカード専用の機械には「取り扱い中止」、ほかの券売機には「現金のみ」の表示が出ていました。筆者が手元のカードで試しても、決済はできませんでした。駅員によると、カードの種類に関係なく使えない状態でした。
構内放送では、東京駅など他の駅でも同じ状態だと案内していました。駅員の説明では、復旧の見込みはまだ分からないとのことでした。
筆者は、カードが使えるかを確かめるために新宿駅へ移動しました。新宿駅のみどりの窓口は照明を落とし、受付を止めていました。20時ごろには駅員から「だんだん復旧してきた」との説明があり、20時15分ごろ、ようやくカードできっぷを買えました。
同じ夜には、別の駅で撮影された手書きの案内もSNSに投稿されています。案内には、カードでのきっぷの発売・変更・払いもどしに加え、えきねっとで予約したきっぷの受け取りもできないと書かれていました。
止まった手続き、動き続けたサービス
今回の障害で目を引くのは、むしろ止まらなかったものです。
改札では、Suicaを使ってふだんどおり乗車できました。筆者のSuicaはビューカードと紐づけたカード型で、改札機を通ったときに3,000円のオートチャージが表示され、残高も増えていました。券売機でも、Suicaのチャージ残額でならきっぷを買えました。一方で、券売機のクレジットカード決済は止まっていました。同じ夜の同じ駅で、使えない手続きと使えるサービスがはっきり分かれていました。障害がどのシステムで起きたのかは、まだ分かっていません。
JRのきっぷの予約と発売を担う仕組みの一つに、鉄道情報システムが運用する旅客販売総合システム「MARS(マルス)」があります。2020年2月10日には、早朝から朝にかけて、全国のJRの駅でカードできっぷを買えなくなりました。報道によると、原因はカード決済に関わるシステムの不具合とみられています。このときは、えきねっとのカード決済や、予約したきっぷの受け取りにも影響が出ました。
今回も、券売機でのカード決済と、えきねっとで予約したきっぷの受け取りが止まりました。影響が出た手続きは、2020年の障害と重なります。原因が同じかどうかは、JR東日本の説明を待つ必要があります。
2026年7月16日の朝にも障害がありましたが、このときの原因は国際ブランドのネットワーク側でした。モバイルSuicaのカード決済や、カード会社の一部加盟店での決済にも影響が出ています。どこで止まったかによって、利用者から見える「使えないもの」の範囲は変わります。
前日に公表された京王の件とは
京王グループは、前日の9月26日にランサムウェア攻撃の被害を公表しました。京王バスも同じ日、定期券の発売窓口でカードが使えないと告知していました。ただ、確認した公表資料には、今回のJR東日本の障害とこの件の関連を示す情報はありません。時期が近いという理由だけで、両者を関連づけることはできません。
京王グループの件を含め、9月に鉄道事業者3社が公表したサイバー被害は、「【解説】東京メトロ・京王・あいの風とやま鉄道でサイバー被害|運行に影響なし」で整理しています。
障害の夜に、利用者ができたこと
今回、Suicaに残高があれば、乗ること自体には困りませんでした。困ったのは、新幹線や特急の指定席など、きっぷを用意する必要がある場面です。
指定席券売機では、現金とクレジットカードのほか、Suicaのチャージ残額でも乗車券や特急券を買えます。今回の障害中も、現金とSuicaの残額での支払いは使えました。筆者はカードで払える駅を探して新宿駅まで移動し、そのぶん時間を取られました。カードが止まったときは、現金かSuicaの残額が、その場で使える支払い手段になります。
改札は流れ続けていた
きっぷのカード決済が止まっているあいだも、改札は流れ続けていました。何が止まり、何が動いたのか。JR東日本からの説明が出れば、その境目がどこにあったのかも見えてくるはずです。
【関連記事】
【解説】東京メトロ・京王・あいの風とやま鉄道でサイバー被害|運行に影響なし
9月に鉄道事業者3社が公表したサイバー被害を、各社が発表文で引いた「被害の境界」の確かさの違いから読み解いた、解説記事。
【編集部後記】
高円寺駅の貼り紙には「現金のみのお取り扱い」とありました。けれど障害のさなかでも、券売機はSuicaのチャージ残額できっぷを売っていました。止まっていたのはクレジットカードで、Suicaの残額ではありませんでした。
貼り紙を読んで、財布の現金を数え直した人もいたかもしれません。障害を知らせる一枚の紙に、「使えないもの」と並べて「まだ使えるもの」が書かれていたら、あの夜の券売機の前の風景は変わっていたのでしょうか。
【用語解説】
指定席券売機
JR東日本の駅にある紫色の券売機。新幹線や特急の指定席券、乗車券の購入、えきねっとで予約したきっぷの受け取り、払いもどしなどができる。支払いは現金とクレジットカードのほか、Suicaのチャージ残額にも対応している。
オートチャージ
Suicaの残額が設定した金額を下回ると、自動改札機を通るときに、登録したビューカードから自動で入金される仕組み。
国際ブランド
Visa、Mastercard、JCBなど、世界規模でクレジットカードの決済網を提供する事業者。カードを発行する会社とは別の立場で、加盟店とカード会社のあいだの決済を支えている。
加盟店
クレジットカードでの支払いを受け付ける店舗や事業者。カード会社と契約を結び、決済の処理はカード会社や決済ネットワークを通じて行われる。
ランサムウェア
感染した機器やサーバーのデータを暗号化して使えなくし、復旧と引き換えに金銭を要求する不正プログラム。
【参考リンク】
指定席券売機ご利用案内(JR東日本)(外部)
指定席券売機でできることの公式案内。きっぷの購入や払いもどし、えきねっとで予約したきっぷの受け取りの方法を説明している。
Suicaのチャージで乗車券や特急券を購入できますか。(JR東日本)(外部)
指定席券売機と多機能券売機で、Suicaのチャージ残額を使って乗車券や特急券を買えることを示す、JR東日本の公式FAQ。
駅の情報(高円寺駅)(JR東日本)(外部)
高円寺駅の設備を示すJR東日本の公式ページ。指定席券売機の有無、改札窓口の営業時間、えきねっとの受け取り可否を確認できる。
旅客販売総合システム「MARS(マルス)」(鉄道情報システム)(外部)
JRのきっぷの予約と販売を担う旅客販売総合システムの概要。1日150万枚以上の発券と、全国の駅端末との接続を紹介している。
ランサムウェア攻撃によるシステム障害に関するお知らせとお詫び(京王電鉄)(外部)
京王電鉄が9月26日に公表した。グループのサーバーへの攻撃を確認し、鉄道の運行に支障はなく、漏えいは確認できていないとした。
【参考記事】
JRでシステム障害 みどりの窓口や券売機でクレカ使えず 現在は復旧済み(ITmedia NEWS)(外部)
2020年2月10日の障害を伝えた。早朝4時ごろから8時42分まで、全国のJRの駅でカード決済ができず、えきねっとにも影響が出た。
JRのシステム障害復旧 駅券売機、一時カード使えず(日本経済新聞)(外部)
2020年の障害で、券売機の総合システムMARSのカード決済処理に不具合が生じたとみられると報じた。スマートEXは影響がなかった。
クレジットカード、一時使えず 国際ブランドの通信障害か(日本経済新聞)(外部)
2026年7月16日朝、国際ブランドのネットワーク障害で、一部加盟店のカード決済が約4時間止まったと報じた。モバイルSuicaにも影響。
朝のクレカ障害、復旧か 「国際ブランドネットワーク」でトラブル【更新】(ITmedia NEWS)(外部)
7月16日の障害の続報。三井住友カードが原因を国際ブランドネットワーク障害と公表し、モバイルSuicaのカード決済も解消したと伝えた。
京王グループにランサム攻撃、京王ストアの決済やホテル予約などに影響……鉄道は影響なし(ITmedia NEWS)(外部)
京王グループへのランサムウェア攻撃で、京王ストアの決済やホテルの予約、京王バスの定期券窓口でのカード利用に影響が出たと伝えた。


















