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楽天モバイルとFujitsu子会社1Finity、商用Open RAN mMIMO展開で協業

楽天モバイルとFujitsu子会社1Finity、商用Open RAN mMIMO展開で協業

楽天モバイルが2026年、世界でも数少ないOpen RAN準拠のMassive MIMO無線機を商用ネットワークで大規模展開する。富士通子会社1Finityが設計した32T32R無線機は、異なるベンダーの機器を組み合わせた「真のマルチベンダーOpen RAN」を日本の5Gインフラで実証する試金石となる。


Rakuten Mobileと1Finity(Fujitsuの子会社)は2026年2月3日、1FInityのMassive MIMO Open RAN無線機を大規模展開する協業を発表した。1FInityがQualcomm Dragonwing QRU100プラットフォームを使用して設計した無線機は、Rakuten Mobileの完全仮想化されたクラウドネイティブOpen RANネットワークに展開される。

Rakuten Mobileは3.7GHz帯で動作する1Finity 32T32R mMIMO O-RUを展開し、O-RANオープンフロントホールインターフェースを介してRakuten SymphonyのCUおよびDUと相互運用する。この展開は既存の1Finity 44R21 Open RAN RUを補完する。

1FInityのOpen RAN mMIMO無線機は2026年中にRakuten Mobileの5Gネットワークで商用展開される予定である。

From: 文献リンクRakuten Mobile to Deploy 1Finity Open RAN Massive MIMO Radios at Scale

【編集部解説】

今回の発表で注目すべきは、Open RAN準拠のMassive MIMO無線機が「商用環境で大規模展開される最初の事例の1つ」である点です。Open RANは異なるベンダーの機器を組み合わせられる柔軟性が魅力ですが、Massive MIMOのような高度な技術との組み合わせは技術的ハードルが高く、これまで商用の大規模展開は限られていました。

Massive MIMO(mMIMO)は、32個の送信アンテナと32個の受信アンテナ(32T32R)を使って複数のユーザーに同時に電波を送り分ける技術です。従来の4T4R(4送信・4受信)と比べて、空間多重化により通信容量を飛躍的に増やせます。楽天モバイルは既に5Gネットワークの8割以上でmMIMOを採用しており、今回の1Finity製32A37の導入は、既存の44R21を補完する形でネットワーク容量をさらに強化する狙いがあります。

エネルギー効率の観点も見逃せません。1Finity製の無線機はパッシブ冷却(自然空冷)方式を採用しており、ファンなどの機械的冷却が不要です。これにより消費電力を抑えながら高性能を実現し、通信事業者が直面する「ビットあたりのエネルギー削減」という課題に対応しています。

技術的な側面では、Qualcommの Dragonwing QRU100プラットフォームが鍵を握ります。このプラットフォームは最大64T64Rまでスケール可能で、O-RAN準拠の設計により異なるベンダーのCU(集中ユニット)やDU(分散ユニット)と相互運用できます。楽天モバイルはRakuten Symphonyの CU/DUと組み合わせることで、マルチベンダー環境でのOpen RAN展開を実証しています。

今回の展開は、日本の5GインフラがグローバルなOpen RANエコシステムの実験場として機能していることを示しています。楽天モバイルとNTTドコモは、日本国外で商用のMassive MIMO Open RANネットワークがまだ小規模または試験段階にある中、先行して実用化を進めている数少ない事業者です。2026年内の商用展開が成功すれば、他の通信事業者にとってもOpen RAN採用の判断材料となるでしょう。

一方で、Open RANのMassive MIMO展開には技術的課題も残されています。フロントホールインターフェースの帯域幅やレイテンシの要求が厳しく、NG-LLS(Next Generation Lower-Layer Split)といった新しい仕様の策定が進められてきました。今回の展開が成功すれば、こうした技術的課題が実用レベルでクリアされたことの証明にもなります。

【用語解説】

Massive MIMO(mMIMO)
Multiple-Input Multiple-Outputの大規模版。多数のアンテナ素子(例:32T32R=32送信・32受信)を使い、複数のユーザーに同時並行で電波を送り分ける技術。空間多重化とビームフォーミングにより、従来の4T4R(4送信・4受信)と比べて通信容量を飛躍的に増やせる。

Open RAN
Radio Access Networkをオープン化し、異なるベンダーの機器を組み合わせて構築できるようにする仕組み。従来の通信インフラは特定ベンダーに依存していたが、Open RANでは標準化されたインターフェースにより相互運用性が確保される。

O-RU / CU / DU
Open RANにおける基地局の機能分割単位。O-RU(Radio Unit)は無線送受信を担当、DU(Distributed Unit)は信号処理を行う分散ユニット、CU(Centralized Unit)は上位レイヤーのプロトコル処理を行う集中ユニット。これらがO-RANオープンフロントホールインターフェースで接続される。

3.7GHz帯
5Gで使用される周波数帯域の一つ。Sub-6GHz(6GHz以下)に分類され、日本では主要な5G周波数として割り当てられている。ミリ波よりも広範囲をカバーでき、建物への浸透性も比較的高い。

パッシブ冷却
ファンやポンプなどの機械的な冷却装置を使わず、自然対流や放熱板による自然空冷で機器を冷却する方式。消費電力の削減と長期的な信頼性向上につながる。

クラウドネイティブ
最初からクラウド環境での動作を前提に設計されたシステムアーキテクチャ。仮想化技術やコンテナ技術を活用し、柔軟なスケーリングと効率的なリソース管理を実現する。

ビットあたりのエネルギー
1ビットのデータを伝送するために必要なエネルギー量。通信容量が増えてもエネルギー消費を抑えることで、この数値を下げることが通信事業者の重要課題となっている。

【参考リンク】

Rakuten Mobile(楽天モバイル)(外部)
楽天グループが運営する第4の携帯電話事業者。完全仮想化クラウドネイティブOpen RANネットワークを日本で展開

1Finity(外部)
Fujitsuの子会社として2024年設立。Open RAN準拠の無線機器開発・製造を手がける通信インフラ企業

Qualcomm Technologies(外部)
米国の半導体・通信技術企業。Dragonwing QRU100など5G基地局向けチップセットを提供

Rakuten Symphony(外部)
楽天グループのクラウド・通信ソリューション企業。Open RAN対応のCU/DUなどネットワーク機器を提供

O-RAN ALLIANCE(外部)
Open RANの標準化を推進する業界団体。世界中の通信事業者、ベンダー、研究機関が参加し仕様を策定

【参考記事】

Rakuten Mobile to deploy 1Finity O-RAN radios at scale – RCR Wireless(外部)
楽天モバイルの発表について、Open RAN準拠Massive MIMOの商用大規模展開が業界のマイルストーンであることを指摘

New O-RAN interface may address massive MIMO challenges – Analysys Mason(外部)
Open RANにおけるMassive MIMO展開の技術的課題を分析。フロントホールインターフェースとNG-LLS仕様について解説

Qualcomm QRU100 5G RAN Platform Product Brief(外部)
QualcommのDragonwing QRU100プラットフォームの技術仕様。最大64T64Rまでスケール可能でO-RAN準拠

【編集部後記】

Open RANという言葉は耳にしても、それが実際の5Gネットワークでどう機能しているかはなかなか見えづらいものです。今回の楽天モバイルの取り組みは、異なるベンダーの機器を組み合わせた「本当に使えるOpen RAN」が日本で動き始めている証拠かもしれません。

私たちが日々使っているスマートフォンの裏側で、通信インフラはどんな進化を遂げているのでしょうか。そして、エネルギー効率と性能を両立させる技術は、これからの持続可能な社会にどう貢献していくのか。みなさんはどう感じられますか?

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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