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Roblox × The Salvation Army「Thrift Score」——世界初のデジタルリサイクルショップが開店

The Salvation Armyは2026年2月19日、Roblox上で世界初のデジタルリサイクルショップ「Thrift Score」を公開した。Z世代とアルファ世代を対象とし、Seaboard CityやDaycare Partyなど複数の人気Robloxゲームに直接統合されている。ショップにはクリエイターやブランドとのコラボアイテム、プレイヤーからの寄付品、The Salvation Armyの実商品のデジタルレプリカが揃う。

RobloxインフルエンサーのPrestonPlayz、BriannaPlayz、RussoPlaysが限定版UGCアイテムを提供している。収益はThe Salvation Armyの更生・回復・地域支援プログラムに充てられる。エクスペリエンスはsalvationarmythriftscore.comから利用可能だ。

From: 文献リンクThe Salvation Army Launches the World’s First Digital Thrift Store on Roblox

【編集部解説】

注目すべきは、今回の「Thrift Score」がThe Salvation Armyの単独プロジェクトではないという点です。独立系広告代理店BarkleyOKRPが企画・主導し、Roblox向けのブランド体験構築を専門とするゲームスタジオThe Gangが開発を担いました。

Robloxのスケールを理解すると、この施策の射程が見えてきます。Backlinkoによると、Robloxのアクティブユーザーは2025年第3四半期では1日あたり1億5,150万人にのぼり、プラットフォーム上のクリエイターコミュニティは2025年上半期だけで5億9,794万ドル以上を稼いでいます。「Thrift Score」が踏み込んだのは、単なる「ゲームの世界」ではなく、Z世代とアルファ世代の主要な経済圏です。

この点について、BarkleyOKRPのSVP(クリエイティブ&AI)ティム・マクラッケン氏は「Z世代はストアフロントやショッピングカートという発想で物事を考えない。彼らは遊びや文化、探索を通じて物事を発見する」と語っています。リサイクルショップを「訪問する場所」ではなく「発見が生まれる体験」として設計し直した視点は、マーケティングとしてだけでなく、バーチャル空間の設計思想としても示唆に富むものです。

特に技術的な観点で興味深いのは、独立した「ゲーム」としてではなく、すでに人気のあるSeaboard CityやDaycare Partyといった既存ゲーム内に直接統合された点です。プレイヤーが新たにゲームを探して移動する手間を省き、「いつもの場所」にショップが現れる設計は、ユーザーの導線を最小化する戦略として理にかなっています。

UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用も見逃せません。The Gangのマックス・プロクター氏は「Robloxの巨大なプレイヤーベースにとって、パーソナライゼーションはエクスペリエンスの核心だ」と述べており、リサイクルショップという業態がその特性と本質的に相性が良いことを指摘しています。現実世界のリサイクルショップが持つ「思いがけない発見の喜び」をデジタル空間で再現するという設計意図は、単なるブランドの宣伝活動を超えた体験設計になっています。

ポジティブな側面として、これはリサイクル・サステナブルファッションという概念をデジタルネイティブ世代に伝える有効な接点になり得ます。「安いから買う」ではなく「目的のある消費」という価値観を、遊びを通じて自然に体験させる設計は、マーケティングと社会的使命の融合として評価できます。

一方、潜在的なリスクとして指摘しておきたい点もあります。「収益がThe Salvation Armyのミッションを支援する」と明記されているものの、Robux(仮想通貨)から実際の慈善活動資金への変換プロセスの透明性は、現時点では公開されていません。バーチャル経済内での「寄付」「収益」の定義が不明確なまま広がると、プレイヤーや保護者の誤解を生むリスクがあります。

長期的な視点では、今回の取り組みは「非営利団体のRoblox進出」という点で先例になるでしょう。Roblox上でのブランド体験は、ナイキのNikeland(2021年)やグッチの出店など、商業ブランドが先行してきた領域です。慈善団体がこの空間に恒久的な存在感を持つことは、バーチャル空間における社会的責任活動(CSR)の新しいモデルとして、他の非営利団体や企業の参考事例になる可能性があります。

【用語解説】

UGC(User Generated Content/ユーザー生成コンテンツ)
プラットフォームの運営側ではなく、一般ユーザーやクリエイターが制作・投稿したコンテンツのこと。Roblox上では、認定クリエイターが制作したデジタルアイテム(衣装・アクセサリーなど)がUGCとして売買・配布される。

Robux(ロバックス)
Roblox内で使用される仮想通貨。アイテムの購入や体験への参加に使われ、クリエイターはRobuxを獲得して現実の通貨に換金できる。「Thrift Score」内のアイテムもRobuxで取引される。

CSR(Corporate Social Responsibility/社会的責任活動)
企業や組織が事業活動を通じて社会・環境・地域に貢献する取り組みの総称だ。今回のケースでは、バーチャル空間内での収益を慈善活動に還元する「デジタルCSR」の新モデルとして位置づけられる。

【参考リンク】

The Salvation Army(救世軍)公式サイト(外部)
米国拠点の国際的なキリスト教慈善団体。貧困・依存症・災害支援などを手がけ、2023年に約2,400万人を支援した。

Thrift Score 公式サイト(外部)
「Thrift Score」キャンペーンの公式案内ページ。Roblox上のデジタルリサイクルショップへのアクセス方法や活動概要を掲載している。

Roblox 公式サイト(外部)
月間アクティブユーザー約3億8,000万人(2024年時点)のオンラインゲームプラットフォーム。ゲームの制作・共有・プレイが可能だ。

BarkleyOKRP 公式サイト(外部)
「Thrift Score」を企画・主導した米国の独立系広告代理店。Certified B Corporationに認定された、米国最大規模の独立系代理店のひとつ。

The Gang 公式Xアカウント(外部)
「Thrift Score」の開発を担ったスウェーデン発のゲームスタジオ。Roblox・Fortnite向けブランド体験構築を専門としている。

【参考記事】

Salvation Army Launches Thrift Score on Roblox — Passionate in Marketing(外部)
BarkleyOKRPのティム・マクラッケン氏とThe GangのCEOマックス・プロクター氏の発言を掲載。

The Salvation Army enters Roblox with digital thrift store — adobo Magazine(外部)
フィリピン発のマーケティング専門誌によるキャンペーン報道。BarkleyOKRPとThe Gangの関与を明示した記事。

Roblox User and Growth Stats You Need to Know — Backlinko(外部)
月間MAU・DAU・クリエイター収益などRobloxの主要統計データを網羅したまとめ記事。

Roblox Statistics 2026: Secrets Behind Its Rise — SQ Magazine(外部)
2026年視点でRobloxの成長データを分析した記事。

The Salvation Army launches the world’s first digital thrift store on Roblox — Charity Retail Association(外部)
英国のチャリティリテール業界団体による報道。

【編集部後記】

「ゲームで遊んでいたら、気づいたら社会貢献していた」——そんな体験が当たり前になる世界が、すぐそこまで来ているのかもしれません。バーチャルと現実の境界が溶けていく中で、「遊ぶ」という行為の意味も静かに変わりつつあります。

Z世代やアルファ世代にとっての「善意」の形が、私たちの想像とは違う姿をしているとしたら——そんなことを、一緒に考えてみませんか。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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