Last Updated on 2025-01-09 10:53 by admin
Honda、ASIMOの技術を継承したEV向けOS「ASIMO OS」発表 〜2026年発売のHonda 0シリーズに搭載へ〜
2025年1月7日(現地時間)、本田技研工業(Honda)は米国ラスベガスで開催中のCES 2025において、人型ロボット「ASIMO」の技術を活用した電気自動車向けの新しいオペレーティングシステム「ASIMO OS」を発表しました。
このシステムは2026年に発売予定の新型電気自動車「Honda 0シリーズ」に搭載され、最初のモデルとしてSUVとセダンが北米市場から展開されます。ルネサスエレクトロニクスと共同で開発する専用SoCは、2000TOPSのAI性能を20TOPS/Wという高い電力効率で実現します。
システムの特徴は自動運転・運転支援システム(ADAS)と車載インフォテインメントの統合管理で、無線経由(OTA)でのソフトウェアアップデートに対応します。
from:Honda upgrades robot brain into OS for future electric cars
【編集部解説】
ホンダが発表したASIMO OSは、単なる車載システムの名称変更以上の重要な意味を持っています。ASIMOで培った人の意図を理解する技術や外界認識技術が、EVの制御システムへと進化を遂げたのです。
特筆すべきは、このシステムが目指す「超・個人最適化」という概念です。従来の車両制御システムは、あらかじめ設定されたパラメータの範囲内でしか動作しませんでしたが、ASIMO OSは運転者の好みや習慣を学習し、よりパーソナライズされた運転体験を提供します。
技術革新の核心
ルネサスとの共同開発による新型SoCは、2000TOPSという驚異的な演算性能を実現しながら、20TOPS/Wという高い電力効率を達成しています。これは現在の車載プロセッサと比較して大幅な性能向上であり、より高度な自動運転や環境認識を可能にします。
マルチダイチップレット技術の採用により、将来的な機能拡張にも柔軟に対応できる設計となっています。これは、ソフトウェアアップデートによる継続的な機能向上を前提としたSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の実現に不可欠な要素です。
市場への影響
2026年の北米市場を皮切りに展開されるHonda 0シリーズは、日本の自動車メーカーによる本格的なSDVへの挑戦となります。これは、テスラや中国のEVメーカーが主導してきた市場に、新たな競争軸をもたらす可能性があります。
特に注目すべきは、自動運転レベル3の全域展開を目指す姿勢です。現在のレベル3システムは高速道路など限定された環境でしか機能しませんが、Honda 0シリーズでは一般道を含めた全域でのアイズオフ運転の実現を目指しています。
潜在的な課題
ただし、このような高度なソフトウェア依存型の車両には、サイバーセキュリティの観点から新たなリスクも存在します。OTAアップデートによる継続的な機能向上は魅力的ですが、同時にセキュリティ脆弱性への対応も継続的に必要となります。
また、自動運転レベル3の全域展開には、技術面だけでなく法規制の整備も必要です。特に日本市場では、道路交通法の改正など、制度面での対応が求められる可能性があります。
まとめ
ASIMO OSの導入は、単なる自動車のデジタル化を超えて、モビリティそのものの在り方を変える可能性を秘めています。特に、ユーザー一人一人の好みや使用パターンに適応するシステムは、「所有する」から「使いこなす」への価値観の変化を加速させるかもしれません。
【編集部追記】
性能指標の説明
TOPS (Tera Operations Per Second)
- 1 TOPSは1秒間に1兆回の演算処理を実行できる能力を表します
- 2000 TOPSは1秒間に2000兆回の演算が可能という意味です
- これは主にAIや機械学習の処理能力を示す指標として使用されます
TOPS/W (TOPS per Watt)
- 消費電力1ワットあたりの演算性能を示す指標です
- 20TOPS/Wは、1ワットの電力で20兆回の演算が可能という意味です
- この数値が高いほど、省電力で効率的な処理が可能です
一般的な例えで説明すると
スマートフォンで例えると、2000TOPSという性能は、数百台のスマートフォンを同時に使用するような演算能力に相当します。また、20TOPS/Wという効率は、この高い演算能力を省電力で実現できることを意味し、バッテリーの消費を抑えながら高度な処理が可能になります。