Last Updated on 2025-04-08 10:39 by admin
Nvidiaは2025年3月のGTCカンファレンスで、GB200 NVL72システムを発表した。このシステムは単一ラックで1エクサフロップス(1秒間に100京回の浮動小数点演算)を実現する世界初のサーバーシステムである。36個のGrace CPUと72個のBlackwell GPUを搭載し、9つのNVLinkスイッチトレイで接続されている。
このシステムは、2022年に設置された世界初のエクサフロップスコンピューター「Frontier」(74ラック構成)と比較して、わずか3年で約73倍の性能密度向上を達成した。
Nvidiaは次世代の「Vera Rubin」Ultraアーキテクチャに基づくシステムが、今後1〜2年でAI最適化作業で14〜15エクサフロップスに達すると予測している。
一方で、中国のDeepSeekが開発したR1推論モデルは、同等のモデルよりも大幅に少ない計算リソースで動作することが示されている。
OpenAIは2025年4月初旬、400億ドルの新規資金調達を発表し、AIリサーチの拡大とインフラ構築を計画している。
from:From MIPS to exaflops in mere decades: Compute power is exploding, and it will transform AI
【編集部解説】
コンピューティングパワーの急速な進化は、AIの可能性を大きく広げると同時に、新たな課題も浮き彫りにしています。
Nvidiaの最新システムが実現した単一ラックでのエクサフロップス性能は、AIの処理能力を飛躍的に向上させる可能性があります。これにより、より複雑なAIモデルの開発や、自律型エージェント、大規模シミュレーションなど、これまで計算リソース不足で実現できなかった技術が現実のものとなるかもしれません。
一方で、この急速な発展は電力インフラへの負荷や環境への影響など、新たな課題も生み出しています。RANDの調査によれば、AIデータセンターの電力需要は2027年までに68GWに達すると予測されており、これはカリフォルニア州の2022年の総電力容量に迫る規模です。
また、DeepSeekのR1モデルのように、より効率的なAIモデルの開発も進んでおり、必ずしも計算リソースの増大だけがAIの進化につながるわけではないことも示唆されています。
これらの技術革新は、AIの応用範囲を大きく広げる可能性がある一方で、責任ある利用や適切な規制の必要性も高まっています。今後、技術の進化と社会的な課題のバランスをどう取っていくかが重要な論点となるでしょう。
【用語解説】
エクサフロップス(EFLOPS):
1秒間に100京回の浮動小数点演算を実行できる能力。一般的なパソコンが1秒間に数百億〜数兆回の計算をするのに対し、エクサフロップスは桁違いの処理能力だ。
Blackwell GPU:
Nvidiaの最新世代のAI向けGPUアーキテクチャで、前世代のHopperと比較して推論性能で最大30倍、エネルギー効率で25倍の向上を実現している。2080億個のトランジスタを搭載し、TSMCの4nmプロセスで製造される。
GB200 NVL72システム:
Nvidiaの最新AIサーバーシステム。36個のGrace CPUと72個のBlackwell GPUを搭載し、単一ラックで1エクサフロップスの処理能力を実現する世界初のシステム。重量約1.36トン、消費電力120kWという巨大なシステムだ。
NVLink:
NVIDIA独自のGPU間接続インターフェース。PCIeより高帯域で、GPU同士の高速通信を可能にする。
Vera Rubinアーキテクチャ:
NVIDIAの次期GPUアーキテクチャ(推定名)。Blackwellの次世代とされる。
エクサスケールコンピューティング:
1EFLOPS以上の計算能力を持つスーパーコンピュータ技術全般。
AIインフラストラクチャ(AI Infrastructure):
AIを開発・運用するための計算資源・電力・冷却・ストレージの総合設計。
【参考リンク】
NVIDIA 公式サイト(外部)
GPUの開発・製造で世界をリードする企業。AIブームの中核技術を提供している。
オークリッジ国立研究所(外部)
米国エネルギー省が運営する研究所で、世界最高性能のスーパーコンピュータを運用。
【編集部後記】
皆さん、コンピューティングパワーの急速な進化が私たちの未来をどう変えていくのか、想像してみましょう。エクサフロップス級の計算能力が身近になる時代、AIはどのような可能性を秘めているでしょうか?また、技術の進歩に伴う課題にどう向き合うべきでしょうか?ぜひSNSで皆さんの考えをシェアしてください。一緒に、テクノロジーと社会の未来について考えていきましょう。